後遺障害第10級に指定されている後遺障害が残ってしまうと、労働力は健常者の73%(労働能力喪失率27%)とされ、交通事故に遭う前の職場に復帰することが難しい場合もあります。弁護士の力を借り、適正かつ十分な慰謝料を得るために手続きを進めましょう。
目次
後遺障害第10級認定に該当する後遺障害は?
後遺障害の等級は、後遺障害の症状が最も重いものが第1級で、そこから軽くなるごとに級数の数が増え、最も軽い等級が第14級となります。
本項で説明する後遺障害第10級は、労働能力喪失率は第11級の20%に対し、27%と定められています。労働能力が健常者の73%しかないという重い後遺障害を背負ってしまった状態です。このような重い後遺障害が残ってしまうと、事故前と同じ仕事や作業をする際に、仕事内容によってはかなりの不便を感じ、元の仕事に復帰できないケースも考えられます。
後遺障害第10級の認定条件となる後遺障害の症状
どのような後遺障害が残ってしまった場合に後遺障害第10級に相当するのか、その症状を列挙します。
1号 | 一眼の視力が〇・一以下になったもの |
---|---|
2号 | 正面を見た場合に複視の症状を残すもの |
3号 | 咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの |
4号 | 十四歯以上に対し歯科補綴を加えたもの |
5号 | 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの |
6号 | 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの |
7号 | 一手のおや指又はおや指以外の二の手指の用を廃したもの |
8号 | 一下肢を三センチメートル以上短縮したもの |
9号 | 一足の第一の足指又は他の四の足指を失ったもの |
10号 | 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの |
11号 | 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの |
これらの条件に1つでも当てはまる症状があれば、後遺障害第10級認定を受けることができます。
後遺障害10級と判断される具体的な症状は?
上記の認定条件を、それぞれ具体的に説明します。
1号)一眼の視力が〇・一以下になったもの
交通事故によって視力が低下し、片方の眼の矯正視力が0.1以下になった場合です。矯正視力とは、裸眼ではなくメガネやコンタクトレンズを装着した場合の視力を指します。
後遺障害の視力に関して注意することは、あくまでも交通事故によって視力が低下した時に認められるということです。事故以前から視力が悪かった場合には認定されません。事故前の視力を書類で証明するのは難しいので、定期的に眼科などで視力検査を受けておくと良いでしょう。
2号)正面を見た場合に複視の症状を残すもの
交通事故によって、物が二重に見える複視が後遺障害として残った場合、後遺障害第10級が認定されます。
複視とは、眼筋の一部が麻痺することに起こります。眼球そのものに問題がる乱視でも物が二重に見えますが、複視は眼球の筋肉や神経に障害があって起こるものです。
3号)咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの
交通事故によって顎の骨や筋肉に回復できない損傷を受けたり、脳や神経に障害が残ったりした場合、咀嚼障害や言語障害が発生することがあります。
後遺障害第10級に該当する咀嚼障害は、普通の食材は問題なくても、歯ごたえのある堅いものが食べられない場合です。言語障害については、「口唇音」「歯舌音」「口蓋音」「咽頭音」の4種類の発音方法のうち、1種類の発音方法ができなくなった場合となります。
この咀嚼障害、または言語障害のどちらかが後遺障害として残った場合は第10級。両方が残った場合は第9級6号の「咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの」となります。
4号)十四歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
歯科補綴とは、歯科医師による適切な治療を指します。交通事故により歯が失われたり欠けたりした場合に、差し歯を入れたりブリッジなどで義歯を付けたりした場合が該当します。事故発生後に歯科に通院し適切な治療を受けて、日常生活に不便はなくなっても、後遺障害として認められます。
歯に対する後遺障害は、親知らずの歯を除く永久歯の半分以上となる14歯以上に対し歯科補綴を行った場合の第10級、10歯以上で第11級、7歯以上で12級、5歯以上で13級、3歯以上で14級と、5段階に分かれています。
5号)両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
交通事故によって両耳の聴力が、1m以上の距離で普通の会話が理解できないほどの後遺障害が残った場合です。
具体的には、両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上、または40dB以上かつ最高明瞭度が70%以下の状態を指します。専門医による詳細な検査が必要となります。
6号)一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
交通事故によって片方の耳の聴力が、耳に接していなければ大声も聞こえない状態になると、後遺障害第10級と認定されます。
具体的には、片方の耳の平均純音聴力レベルが80dB以上90dB未満となった状態です。上記の5号と同じく専門医による検査が必要ですが、仕事の内容によれば、事故前と同じ業務に就けない可能性が生じる後遺障害となります。
7号)一手のおや指又はおや指以外の二の手指の用を廃したもの
片方の手の親指、または親指以外の2本の指の用を廃した場合、後遺障害第10級と認定されます。
この場合の「用を廃した」とは、末節骨の2分の1以上を失った場合、親指の撓側外転、または掌側外転の動く範囲のいずれかが2分の1になった状態、などを指します。
8号)一下肢を三センチメートル以上短縮したもの
交通事故の衝撃によって、片方の足が3cm以上短くなった場合です。下肢の短縮については、5cm以上の場合は後遺障害第8級、1cm以上の場合は第13級となります。
片足が短くなると歩行に支障が出て、労働能力損失につながります。また、この基準は足のみで、腕に対する短縮は規定がありません。
9号)一足の第一の足指又は他の四の足指を失ったもの
交通事故によって片方の足の親指、または親指以外の4本の足の指を失った場合は、後遺障害第10級が認定されます。
この場合の「失った」とは、中足指節間関節から先を失った場合です。足の指を切断してしまった足に左右の区別はなく、また足の指の欠損障害については、画像によってはっきりと判別が可能なため、認定を得ること自体は難しくないという特徴があります。
10号)一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
片方の上肢の3大関節(肩・肘・手首)のうち、1つの関節に著しい障害が残った場合に後遺障害第10級が認定されます。
この場合の「著しい障害」とは、事故前と比して可動域が2分の1になった場合を指します。まったく動かない場合や可動域が10%以下になった場合は第8級6号の「一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの」になります。
11号)一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
片方の下肢の3大関節(股関節・膝・足首)のうち、1つの関節に著しい障害が残った場合に後遺障害第10級が認定されます。
この場合の「著しい障害」の基準は、10号の上肢の場合と同じです。
後遺障害第10級認定を獲得するための重要なポイント
すべての等級において、後遺障害の認定を受けるために大切なことは、被害者が正確な申告を行い、事故当初から適切な治療と検査を受け続けていることです。さらに、完治しないまでも真面目に治療に取り組み、社会生活に復帰するべく努力を続ける姿勢が必要です。
急性期を除き、信頼の置ける医師による治療を受けるべき
後遺障害第10級の認定を申請するような後遺障害が残る場合には、事故直後に医師の治療を受けないということはないと思われます。
被害者は病院に行き治療を受けているはずですが、なかなか治癒せずに病院を転々とするなど、医師としっかりとした信頼関係が築けていない時もあるでしょう。
そうした場合には、その後遺障害が交通事故によるものなのか、あるいは他の事故やもともと持っていた症状なのか、医師にとっても判断がつかないことも出てきます。
事故直後、救急車で搬送されるなどして、急性期の治療に関して病院を選ぶことは難しいと思われますが、本格的な治療は、なるべく通いやすくて専門的な治療を施してくれる医師を選ぶことが大切です。
交通事故に遭って辛い後遺症が残ってしまったら、「後遺障害等級認定」を受けて、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益などの補償を...
後遺障害診断書は、等級認定において非常に重要
後遺障害の等級認定は、すべて書類による審査によって判断されます。その際に最も重要になってくるのが後遺障害診断書だと言われています。
どんな医師でも後遺障害診断書は書けますが、より説得力のある、申請する等級をしっかりと意識したものが書けるかどうかは、医師の経験が大切です。
医師との信頼関係も重要で、真面目に治療に通い、それでも治癒せずに後遺障害が残ってしまい等級申請を行うとなれば、医師もなるべく認定が行われるように親身になって書類を作成してくれるでしょう。
後遺障害が残ってしまうとなると、被害者の心情的にはかなり辛いとは思いますが、医師に文句ばかり言い、治療も放棄するような人に、しっかりとした後遺障害診断書を作成してくれることは、よほど人の良い医師しかいません。
被害者と医師、一体となって負傷の治療を行い、それでも後遺障害が残ってしまったら、適正かつ十分な慰謝料を得るべく、等級認定に向けて一緒に取り組めるような関係性をつくっておくことが大切です。
後遺障害第10級認定の申請を弁護士に依頼すると?
後遺障害の等級認定の申請は、交通事故に遭う前には一般人であった被害者にとってかなり難しい作業です。後遺障害第10級ともなると、慰謝料を含む損害賠償金額は高額となり、加害者側も被害者側が出す条件を鵜呑みにすることはないでしょう。
たとえ運よく望み通りの等級が認められたとしても、その等級を基準として加害者が加入する保険会社が示してくる慰謝料を含む損害賠償の金額は、被害者が得るべき金額の最低ラインだということを理解しておきましょう。
自賠責基準による後遺障害第10級の慰謝料は187万円
強制保険である自動車損害賠償責任保険(自賠責)では、後遺障害第10級の慰謝料は187万円と定められています。これは、後遺障害第10級の適正な慰謝料金額を算出する際の最低水準だと考えてください。
また、任意保険基準の場合、保険会社は計算方法を明らかにしていませんが、一般的には自賠責基準より少し高く、下記の弁護士(裁判)基準よりはるかに低い水準です。被害者の後遺障害の状態によれば、自賠責基準と同額の金額を提示してくる保険会社もあると言われています。
弁護士(裁判)基準による、後遺障害第10級の慰謝料は550万円!
弁護士に加害者との示談交渉や等級認定申請の手続きを依頼すると、弁護士費用はかかりますが、得られる損害賠償金や慰謝料は、ほとんどの場合で大幅に増加します。
この弁護士(裁判)基準とは、先例や過去の裁判における判例を基準にして算出されたものです。日弁連交通事故相談センター東京支部が発行する「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称:赤い本)によると、弁護士(裁判)基準による第10級の後遺障害の慰謝料は550万円と記載されています。
これだけの差があれば、弁護士に依頼してもたいていのケースでは十分に費用はまかなえるものです。そしてこの金額はいわゆる相場であるため、交通事故に強い優秀な弁護士の場合は、この水準以上の慰謝料を得ることができる可能性も出てくるでしょう。
交通事故の被害者が、弁護士の力を借りるべきもう一つの理由
交通事故の被害者となってしまった場合、示談交渉の相手は、たいていの場合には加害者が加入する保険会社の示談交渉担当員となります。
保険会社の示談交渉担当員というプロを相手に、一般人の被害者が有利な損害賠償の条件や慰謝料の金額を引き出すことは非常に難しいでしょう。交通事故の示談に関する知識がない被害者にとっては、損害賠償金の相場さえ分からないでしょう。
交通事故に遭った直後に弁護士への依頼を始めるのが最も良いのですが、保険会社の提示する金額に納得がいかないという理由でも構いません。その時点からでも遅くはないので、弁護士の活用を考えてみましょう。
示談や後遺障害の等級申請は、弁護士に依頼するメリット大!
交通事故の後遺障害に対する慰謝料は、前述の通り、自賠責基準、任意保険基準、弁護士(裁判)基準によって大きく変わり、等級が1つ変化すると金額も大きく増減します。弁護士に相談すれば、認定を得るためだけではなく、等級を上げるための申請方法も示してくれることもあります。
第10級の自賠責基準の慰謝料は187万円、弁護士(裁判)基準では550万円ですが、第11級しか認められないと、自賠責基準では135万円、弁護士(裁判)基準でも相場では420万円となります。
第10級に該当する後遺障害の症状は、社会復帰が困難とは言えないまでも、仕事の内容によれば、元の業務に復帰することが難しい場合も考えられます。
交通事故の被害者となり後遺障害が残ってしまった場合、そしてもし等級の認定や慰謝料に不満がある場合は、適正かつ十分な慰謝料を得られるように、弁護士に相談することをお勧めします。
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