後遺障害8級の主な症状と慰謝料相場を解説

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後遺障害8級

後遺障害8級の症状は身体の動きを制限するものが多く、仕事や学校など社会生活の面で、交通事故に遭う前の状態に戻ることが難しくなりがちです。加害者との示談交渉では、被害の実状にふさわしい損害賠償を受けられるよう、法律問題についての交渉のプロである弁護士の力を借りることをお勧めします。

後遺障害8級の認定基準~該当する症状は?

国の基準では、後遺障害8級の労働能力喪失率は45%とされています。労働能力が、事故前の健常者であった時の半分ほどになってしまうという意味です。
後遺障害8級は、運動能力が大きく低下する症状が多いため、仕事や学校など社会生活を事故前と同じように過ごすのは難しいと思われます。仕事をしている人からすれば、事故前のように仕事ができないことで減った収入を穴埋めするに十分な賠償を受けたいところでしょう。
後遺障害8級に該当する症状は、以下のとおりです。

後遺障害8級認定に必要な条件
1号 一眼が失明し、又は一眼の視力が〇・〇二以下になったもの
2号 脊柱に運動障害を残すもの
3号 一手のおや指を含み二の手指を失ったもの又はおや指以外の三の手指を失ったもの
4号 一手のおや指を含み三の手指の用を廃したもの又はおや指以外の四の手指の用を廃したもの
5号 一下肢を五センチメートル以上短縮したもの
6号 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
7号 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
8号 一上肢に偽関節を残すもの
9号 一下肢に偽関節を残すもの
10号 一足の足指の全部を失ったもの

このいずれかの症状があれば、後遺障害8級の認定を申請することができます。
各症状を具体的に説明します。

1号)一眼が失明し、又は一眼の視力が〇・〇二以下になったもの

交通事故により、片眼が失明または矯正視力0.02以下になることです。

矯正視力とは、裸眼でなくメガネやコンタクトレンズを着けたときの視力をいいます。
1号は、他方の眼にまったく後遺障害が生じないケースです。
そのため、片眼の失明と他方の眼の後遺障害が同時に起こる1・2・3・5・7級よりも軽い等級となっています。

失明または矯正視力0.02以下になった眼が、右眼か左眼か、効き目(望遠鏡や顕微鏡を覗く時などによく使う方の目)かそうでないかは、1号の認定に影響しません。

2号)脊柱に運動障害を残すもの

交通事故によって、脊柱(せきちゅう)に運動障害が残ることをいいます。

脊柱とは、いわゆる背骨のことです。首から尾てい骨まで、椎骨(ついこつ)という骨が26個つながってできています。

運動障害とは、首・胸・腰の可動範囲が事故前の2分の1以下になること、あるいは頭と首の間の関節が普段動かないはずの方向に曲がってしまうことです。
脊柱は人が運動する際の軸となる部分なので、ここに運動障害が残ると、かなりの労働能力が失われます。

腰椎圧迫骨折は交通事故との因果関係の判断が難しい

脊柱の運動障害としてよく見られる症状が、腰椎圧迫骨折です。

脊柱を形づくる26個の椎骨は、頸椎(7個)・胸椎(12個)・腰椎(5個)・仙骨、尾骨(尾てい骨)の6つの部分に分けられます。このうち腰椎に含まれる椎骨のいくつかが身体の内外からの圧力によってつぶれてしまうのが腰椎圧迫骨折です。

腰椎圧迫骨折は、転倒や尻もちなど、交通事故以外によっても日常容易に起こり得るため、交通事故から時間が経って受診すると、医師としても、骨折が交通事故によるものかどうか分からなくなってしまいます。

特に判断しづらい高齢者のケース

特に高齢者は、骨粗しょう症により骨がもろくなっていることが多く、転倒や尻もちはもちろん、せきやくしゃみなど何気ない動作でも骨折をしてしまいがちです。交通事故の被害者が高齢者だと、医師にとって、事故と腰椎圧迫骨折との因果関係の判断は、若い人以上に難しいものとなってきます。

交通事故に遭った後に強い腰痛が生じたら、早めに整形外科を受診しましょう。そして、腰椎圧迫骨折と診断されたら、交通事故に遭ってから腰痛が生じたことをしっかりと医師に説明し、事故との因果関係ありとの心証を抱いてもらうことが大切です。

3号)一手のおや指を含み二の手指を失ったもの又はおや指以外の三の手指を失ったもの

交通事故により、片手の、親指を含む2本の指を失う、または親指以外の3本の指を失うことです。

「指を失う」とは、親指なら第1関節(指節間関節)から先、その他の指なら第2関節(近位指節間関節)から先を失うことをいいます(自賠法施行令別表 備考二)。

指を失った手が右か左か、利き手かそうでないかは、3号の認定に影響しません。
指を失った状態かどうかは外部から容易に分かるので、医師が診断に困ることはほとんどないといえるでしょう。

4号)一手のおや指を含み三の手指の用を廃したもの又はおや指以外の四の手指の用を廃したもの

交通事故によって、片手の、親指を含む3本の指の用を廃し、または親指以外の4本の指の用を廃したことをいいます。

「手指の用を廃した」とは、次のいずれかです(自賠法施行令別表 備考三)。

  • 第1関節から先の骨(末節骨)の半分以上を失う
  • 指の付け根の関節(中手指節関節)に著しい運動障害を残す
  • 親指なら第1関節(指節間関節)、その他の指なら第2関節(近位指節間関節)に著しい運動障害を残す

「著しい運動障害」とは、関節の可動範囲が、障害のない方(健側)の手指の半分以下になることをいいます。

5号)一下肢を五センチメートル以上短縮したもの

交通事故により、片方の下肢が事故前より5㎝以上短くなることです。

下肢の長さは、前腸骨棘(ぜんちょうこっきょく。股関節近くの骨盤の出っ張った部分)から内くるぶし下端までを測ります。
片方の下肢が短くなると、身体のバランスが取れず歩きにくくなり、労働能力が失われるのが普通です。

片方の下肢が短くなる症状は10級と13級にもあり、短くなる長さは、10級で3㎝以上5㎝未満、13級で1㎝以上3㎝未満とされています。

1下肢の短縮で認定される後遺障害等級
認定等級 短くなった長さ
8級 5cm以上
10級 3cm以上5cm未満
13
1cm以上3cm未満

6号)一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの

交通事故によって、片方の上肢の3大関節(肩・肘・手首)のうち、1つの関節の用を廃することをいいます。2つの関節の用を廃すると、後遺障害6級に該当します。

「関節の用を廃した」とは、関節がまったく動かなくなる、可動範囲が健側の1割以下になる、または人工関節になることです。

関節の用を廃した上肢が右か左か、利き腕かそうでないかは6号の認定に影響しません。

7号)一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの

交通事故により、片方の下肢の3大関節(股・ひざ・足首)のうち、1つの関節が用を廃することです。2つの関節が用を廃すると、後遺障害6級に該当します。

「関節の用を廃した」の意味、および左右・利き脚の別と認定の関係は、6号の場合と同じです。

8号)一上肢に偽関節を残すもの

交通事故によって、片方の上肢に偽関節ができることをいいます。
偽関節とは、折れた骨がくっ付かずにグラグラ動いている状態のことです。くっ付かない部分がまるで関節のような状態になることから、偽の関節、つまり偽関節と呼ばれています。

骨折部分を固定し、適度な負荷をかけて骨がくっ付くのを促す治療がなされますが、「難治骨折」のひとつとされ、治りにくいのが実状です。

硬性補装具(プラスチックや金属でできた患部を固定する用具)によって常に骨折箇所を固定しなければならない場合は、7級9号に該当します。

9号)一下肢に偽関節を残すもの

交通事故により、片方の下肢に偽関節ができることです。

偽関節の意味、および治りにくい症状であることは8号と同じです。硬性補装具による常時固定が必要だと7級10号に該当します。

10号)一足の足指の全部を失ったもの

交通事故によって、片足の5本の指すべてを失うことをいいます。両足の10本の指すべてを失うのは、5級8号の症状です。

足指を失うとは、指の付け根から先すべてを失うことをいいます(自賠法施行令別表 備考四)。

足指は、下肢を動かしたり立位を保つのに大事な役目を果たす部位です。片方の足指5本の付け根から先すべてを失うことは、これらの動作に支障を来たし、労働能力を大きく低下させます。

9級以下の症状が複数の場合、併合8級となるケースも

等級の認定では、いずれかの等級に該当する症状が2つ以上ある場合、一番重い等級より上の等級が最終的な等級とされることがあります。等級の併合というシステムです(自賠法施行令2条1項3号ロハ二)。

たとえば、8級の症状が2つあれば、2級上の6級に認定され、併合6級と呼ばれます(同号ハ)。
8級と9級の症状が1つずつある場合は、8級より1級上の併合7級です(同号二)。

症状が複数でも1つの後遺障害といえる場合は併合にはならない

いずれかの等級に該当する2つ以上の症状があっても、各症状が1つの後遺障害に伴うものであれば、等級の併合は行われません。後遺障害が1つである以上、認められる等級も1つだからです。

たとえば、1つの事故により、右下肢に偽関節が生じ(8級9号)、右下肢の長さが1㎝縮み(13級8号)、右下肢に頑固な痛みが残った(12級13号)場合を考えます。
この場合、通常の併合ルールによれば、偽関節と右下肢短縮で併合7級、そこに右下肢痛が加わり、最終的に併合6級です(自賠法施行令2条1項3号二)。

ただ、右下肢短縮も右下肢痛も偽関節に伴う症状に過ぎず、ここで認められる後遺障害は偽関節だけといえます。等級の併合は行われず、偽関節の8級だけとなるわけです。

後遺障害8級の慰謝料の相場

自賠責基準による後遺障害8級の慰謝料相場 

強制保険である自動車損害賠償責任保険(自賠責)では、国の基準により、後遺障害8級の慰謝料は331万円(2020年3月31日までの事故は324万円)とされています。

後遺障害の慰謝料についての自賠責基準といわれるものです。自賠責基準は、交通事故の賠償実務において、後遺障害による慰謝料額の最低ラインとされています。

参考リンク:国土交通省WEBサイト「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準 第3の2(1)②」※PDFファイル

任意保険基準による後遺障害8級の慰謝料相場

後遺障害の慰謝料基準には、自賠責基準の他に、任意保険を扱う保険会社が個別に定める任意保険基準があります。

任意保険基準による慰謝料は、自賠責基準より少し高く、後述の弁護士基準(裁判基準)よりはるかに低い金額です。

保険会社は任意保険基準による慰謝料額を提示するのが普通ですが、被害者の後遺障害の状態次第では、自賠責基準と同額の金額を提示してくる保険会社もあるといわれています。

これまで任意保険基準は保険会社の内部情報として公にされてきませんでしたが、最近は任意保険基準をWEB上で公開している保険会社もあります。たとえば、損害保険ジャパン株式会社が定める後遺障害の慰謝料基準は、次の表のとおりです。

後遺障害者等級 父母・配偶者・子のいずれかがいる場合 左記以外
第1級 1,850万円 1,650万円
第2級 1,500万円 1,250万円
第3級 1,300万円 1,000万円
第4級 900万円
第5級 700万円
第6級 600万円
第7級 500万円
第8級 400万円
第9級 300万円
第10級 200万円
第11級 150万円
第12級 100万円
第13級 70万円
第14級 40万円

損害保険ジャパン株式会社WEBサイト「WEB約款」より転載)

8級の慰謝料は400万円で、自賠責基準の331万円より少し高く、次に紹介する弁護士基準(裁判基準)よりずっと安いことが分かります。

弁護士基準(裁判基準)による後遺障害8級の慰謝料相場

交通事故の被害者となったとき、弁護士に加害者との慰謝料交渉を依頼すると、弁護士費用はかかりますが、もらえる慰謝料は通常、大幅に増加します。弁護士は弁護士基準(裁判基準)を基に慰謝料交渉を行うからです。

弁護士基準(裁判基準)とは、慰謝料の金額を判示した裁判例を基に算出された慰謝料額の目安のことです。弁護士が示談交渉や裁判において求める慰謝料の基準とすることから、このように呼ばれています。

弁護士基準(裁判基準)は、日弁連交通事故相談センター東京支部が発行する「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称:赤い本)に掲載されていて、この「赤い本」によれば、弁護士基準(裁判基準)による後遺障害8級の慰謝料は830万円です。

後遺障害8級の慰謝料相場を3つの基準で比較
自賠責基準 任意保険基準 弁護士基準(裁判基準)
331万円 400万円 830万円

慰謝料交渉を弁護士に依頼したときとそうでないときとでは、もらえる慰謝料の額が430万円から約500万円の差があることが分かります。
これだけの差があれば、もらった慰謝料の中から弁護士費用を賄うことも十分に可能といえるでしょう。

これまでは弁護士への依頼というと敷居の高いイメージがありましたが、最近の弁護士事務所の中には、一般の人に分かりやすく弁護士費用の中身を明示したり、初回相談を無料で行ったりする所もあり、一般の人にとって弁護士への敷居は低くなりつつあります。

また、弁護士基準(裁判基準)による830万円という金額はいわゆる相場(通常の目安)であるため、交通事故に強い優秀な弁護士に依頼すれば、この金額以上の慰謝料をもらえる可能性も出てくるでしょう。

後遺障害8級の逸失利益の計算方法

後遺障害が残ると働くことが難しくなり、収入が減ってしまいます。こうした収入の減少分は、事故に遭わなければ得られたであろう利益(逸失利益)として、加害者に請求することが可能です。
後遺障害による逸失利益は、平成13年に国が定めた「支払基準」により、次の式で計算することとされています。

“収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数“

参考リンク:国土交通省WEBサイト「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準 第3の1」※PDFファイル

後遺障害8級の逸失利益の労働能力喪失期間

労働能力喪失期間とは、後遺障害の影響により本来の仕事ができなくなるであろう将来の期間のことです。就労可能年数ともいわれます。

労働能力喪失期間は、支払基準の別表において、後遺障害等級が確定した時の年齢だけを基に決められていて、等級がいくつかは問われていません。

参考リンク:国土交通省WEBサイト「就労可能年数とライプニッツ係数表」※PDFファイル

裁判では支払基準によらない逸失利益算定を求めることも可能

判例は、交通事故による逸失利益をめぐる裁判において、裁判所は、国が定めた支払基準に縛られることなく、労働能力の喪失率や喪失期間を認定できるとしています(最高裁判決平成18年3月30日)。

それぞれの争いにふさわしい解決をすることが裁判の目的であり、逸失利益の算定についても、支払基準といった一律の基準によるのでなく、個々のケースの実状に適った算定をするべきだからです。

裁判において被害者は、支払基準を超える労働能力の喪失率や喪失期間を主張し、それを基に算定された逸失利益を加害者側に求めることができます。

実際に8級の逸失利益が争われた裁判例を9つ紹介します。

後遺障害8級の逸失利益に関する裁判例
判決年月日 年齢・性別 障害部位(号) 労働能力喪失率 労働能力喪失期間
①千葉地裁 令和2年6月17日 60歳代 女 脊柱(8級2号) 32%(45%) 不明
②大阪地裁 平成30年11月20日  39歳 男 脊柱(8級2号) 35%(45%) 28年(28年)
③東京地裁 平成29年5月29日  54歳 女 脊柱(8級2号) 14%(45%) 15年(15年)
④名古屋地裁平成29年6月23日 63歳 女 脊柱(8級2号) 45%(45%) 11年(11年)
⑤大阪地裁 平成16年ワ5755号  39歳 男 左膝関節(8級7号) 45%(45%) 28年(28年)
⑥岡山地裁倉敷支部 平成20年ワ160号・平成22年ワ537号 12歳 男 ①左膝関節②左足首関節③一下肢短縮④背・尻・両下肢の外貌醜状(併合8級) 45%(45%) 49年(49年)
⑦東京地裁 平成11年ワ8211号 50歳 女 ①右膝関 節②右足首関節③右下肢の外貌醜状(併合8級) 35%(45%) 17年(17年)
⑧大阪地裁 平成12年ワ14174号 7歳 女 右足指喪失 45%(45%) 49年(49年)
⑨東京地裁 平成23年ワ12752号 24歳 男 ①高次脳機能障害②臭覚障害(併合8級) 45%(45%) 43年(43年)

※( )内は支払基準での数値

①②③⑦では、支払基準と異なる労働能力の喪失率や喪失期間が認定されています。

それにより、逸失利益の額が、支払基準に従って計算した場合に比べて高くなることもあれば、反対に低くなることもあるといえるでしょう。

裁判所は支払基準もふまえてケースバイケースで逸失利益を算定する

前述の判例(最高裁判決平成18年3月30日)によれば、支払基準は、裁判に至らないケースについて、労働能力の喪失率や喪失期間を一律に定めることで、逸失利益を公平かつ迅速に算定し、保険金を速やかに支払うための決まりであるとされています。

裁判所は、逸失利益の算定に際して算定基準に縛られないとしても、自賠法16条の3という条文に明記され、法律上の根拠を持つ算定基準を初めから無視するのでなく、ひとまず仮の基準として用いたうえで、算定結果が妥当なら、それを逸失利益と認定し、反対に妥当でなければ、算定基準によらず、ケースバイケースの判断で逸失利益を算定しているものと思われます。

裁判例④⑤⑥⑧⑨は前者のプロセスにより支払基準に従って逸失利益を算定したもの、その他の裁判例は後者のプロセスにより支払基準に縛られることなく実際の被害を拠り所に逸失利益を算定したものといえるでしょう。

後遺障害8級で障害者手帳はもらえる?

後遺障害8級で障害者手帳の取得は難しい

身体障害者手帳には医療費の助成、所得税・住民税の減額、鉄道やバスといった公共交通機関の運賃割引などいくつかのメリットがあるため、後遺障害8級の認定を受けたら身体障害者手帳ももらいたいところです。

ただ、後遺障害8級で障害者手帳をもらうのは難しいのが実状です。

障害者手帳取得は障害等級6級以上から。8級での取得は困難

後遺障害8級で障害者手帳をもらうのが難しいのは、身体障害者障害程度等級表(障害等級)6級以上に該当しにくいからです。

障害者手帳をもらうには、7等級ある障害等級のうち6級以上に該当することが必要となります。しかし、後遺障害8級ではそれが難しいのです。

視力障害を例にお話しします。
Aさんは交通事故により右眼視力が0.1から0.02になり、左眼視力は事故前の0.1のままです。片眼の視力が0.02以下になったので後遺障害8級1号に該当します。

一方、視覚障害6級の要件は、

  1. 片眼の視力が0.02以下
  2. 他眼の視力が0.6以下
  3. 両眼の視力を足して0.2を超える

の3つです。

Aさんは、要件①②を満たします。しかし、両眼の視力を足した0.12は0.2を超えず要件③を満たさないため、視覚障害6級はもらえないことになるわけです。

後遺障害8級の人が障害等級6級以上に該当することが全くないわけではありません。
厚労省による説明でも、障害等級7級の障害が2つ以上ある場合、または7級の障害と6級の障害とがある場合には、身障者手帳をもらえることにもなっています。

参考リンク:「身体障害者手帳制度の概要」※PDFファイル

ただ、このAさんのように、後遺障害8級に該当しても障害等級6級以上に該当しないため身体障害者手帳をもらえないケースはとても多いのが実状といえるでしょう。

身体障害者障害程度等級表は、厚生労働省のWEBサイトで公開されています。

参考リンク:厚生労働省WEBサイト「身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施工規則別表第5号)」※PDFファイル

労災の場合、後遺障害8級でいくらもらえる?

後遺障害8級認定のもとになった交通事故が被害者の就業中または通勤途中に起きた場合、被害者は、業務災害または通勤災害(合わせて労働災害)として、労働者災害補償保険(労災保険)から労災保険給付金をもらうことができます。

後遺障害8級の認定を受けている人がもらえる労災保険給付金は、次の3つです。

  • 障害補償給付金 給付基礎日額×503日分
  • 障害特別給付金 算定基礎日額×503日分
  • 障害特別支給金 65万円

これらの労災保険給付金は、本人・家族または勤務先事業所が労働基準監督署に支給申請書を提出した後、面談審査などを経て、指定した口座に全額が入金されます(一時金形式)。申請から入金までの期間は、通常3か月程度です。

入金が済むと、厚生労働省から本人宛に、支給の決定とそれに基づく振込をしたことを知らせる支給決定通知が届きます。

給付基礎日額とは、事故前3か月間の賃金総額を暦日数で割った1日当たりの賃金額です。
算定基礎日額とは、事故前1年間に支払われた特別給与(ボーナス、結婚手当など)の総額を365日で割った額をいいます。

障害補償給付金と障害特別給付金が後遺障害で労働能力が低下したことによる減収分を補うものであるのに対し、障害特別支給金は福祉的な観点から被害者の社会復帰を促すためのお金です。

慰謝料は労災での支払いの対象外

労災保険給付金は労災を被った人の収入の穴埋めと社会復帰の促進を目指すものであるため、交通事故による精神的ダメージへの賠償である慰謝料は労災保険から給付されません。慰謝料は、精神的ダメージを与えた加害者側に請求することになります。

後遺障害8級認定を獲得するための重要なポイント

交通事故の被害者が後遺障害の認定を受けるには、事故直後から、医師に症状を正しく申告し、症状にふさわしい治療と検査を受け続けることが必要です。

また、完治するしないに関わらず真面目に治療に取り組み、社会生活に復帰する努力を続ける姿勢を医師に示すことも大切になってきます。

後遺障害診断書は、等級認定において非常に重要

後遺障害の等級認定審査は何種類かの書類に基づいて行われますが、特に重要なのが医師の作成する後遺障害診断書です。

後遺障害の知識と経験豊かな医師を主治医に

等級認定の審査に通り、希望する等級をもらえるだけの診断書となるかどうかは、作成する医師における後遺障害についての知識と経験が決め手となります。もしも医師を選べるのであれば、こうした知識と経験が豊かな医師に診てもらうようにしましょう。

真面目に診療に通って医師との関係を良好に

審査に通るだけの診断書を書こうという気持ちを医師に持たせることも重要です。

それにはまず、医師の指示どおりに真面目に診療に通いましょう。真面目に通ったにもかかわらず後遺障害が残ってしまったとなれば、医師としても、審査に通る診断書を書いてあげようという気持ちになるはずです。

後遺障害が残ることは、本人にとってとても辛いことです。だからといって、医師の診療の仕方に文句を言ったり、指示どおり真面目に診療に通おうとしない患者に対して、後遺障害の審査に通る診断書を書いてあげようと思う医師は、よほど情け深い人でない限り、まずいないと考えてよいでしょう。

後遺障害等級の認定率は、約5%という狭き門です。
しかも認定審査で占める後遺障害診断書の重要性から考えれば、医師との良好な関係を保てるかどうかが認定を左右するといっても過言ではありません。

脊柱の運動障害では理学療法士にいる整形外科を受診しよう

交通事故の後で脊柱の異常を感じたら、理学療法士のいる整形外科を受診することをお勧めします。

理学療法士とは、国家資格に基づくリハビリテーションの専門職です。障害のある人に対して理学療法(運動、電気や温熱、マッサージなど)を行い、機能の回復を図ります。

医師が患者の脊柱に運動障害ありと判断すると、投薬などによる医師の治療と併せて、理学療法士によるリハビリテーションが行われるのが普通です。医師と理学療法士が定期的に話し合いを行い、治療とリハビリテーションの方針を決めていきます。

患者が症状固定すると、医師が後遺障害診断書を書く段階になるわけですが、ここでは、検査結果などはもちろん、理学療法士の意見も貴重な資料となるのです。特に、診断書の記載事項である首・胸・腰の可動範囲や「障害内容の増悪・緩解の見通し」については、理学療法士による評価が大きく影響します。

こうした医師と理学療法士双方の知見が診断書に反映されることで、被害の実状にかなった等級認定につながるといえるでしょう。

整形外科受診前に整骨院などに通うのはNG

交通事故の後で脊柱に異常を感じたとき、まず整骨院などに通い、その後で整形外科を受診することは絶対に止めましょう。

整骨院などである程度の施術が施されてから整形外科を受診すると、患部が事故当時の状態と異なってしまい、整形外科の医師にとって、交通事故と脊柱障害との因果関係が分からなくなってしまうからです。

交通事故で脊柱に異常を感じたら、速やかに整形外科を受診してください。

関節の可動範囲は自賠責保険の基準に則って測定を

交通事故により、片手の親指を含めた3本の指または親指以外の4本の指の可動範囲が健側の指の半分以下になれば8級4号、片側の上肢または下肢の3大関節のうち1つの関節の可動範囲が健側の関節の1割以下になると8級6号または7号に当たります。

自賠責保険が基準とする関節可動範囲の測定方法は、「関節可動域表示ならびに測定法」(1995年 日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会の共同作成)です。

この測定法によらない関節可動範囲の測定は、被害の実態にそぐわない等級認定につながるおそれがあります。実際、この測定法と異なる測定の仕方による数値を診断書に記載する医師がいると指摘されていることも事実です。

医師には「関節可動域表示ならびに測定法」に則った関節可動範囲の測定をお願いすることが重要となります。それには、日頃の医師との関係を良好なものにしておけば、こうしたことをお願いしやすくもなるのです。

後遺障害8級認定の申請を弁護士に依頼すると?

後遺障害8級認定の申請を、被害者だけで行ったときと、弁護士に依頼したときとでは、どんな違いがあるのでしょうか。 

被害者が療養や社会復帰の準備に専念できる

後遺障害等級認定の申請は、普段関わったことのない被害者にとって、何から始めてよいのか分からなかったり、初めて耳にする書類を集めなくてはならなかったりと、とても大きな負担です。

申請を交通事故に詳しい弁護士に依頼すれば、必要な手続をすべて行ってもらえます。被害者は、申請手続の負担から解放され、自分自身の療養や社会復帰の準備に専念することができるのです。

より高額の慰謝料を手にすることができる

幸いに申請が通って後遺障害8級をもらえたとしても、なるべくたくさんもらいたいと考える被害者側が示す慰謝料額を、できるだけ慰謝料を安く抑えたいと思う加害者側がすんなり受け入れることは、まずないでしょう。

逆に、8級の慰謝料額として加害者側の保険会社が示してくる額は、自賠責基準による最低ラインの金額であることが普通です。

慰謝料の請求を弁護士に依頼すれば、「後遺障害8級の慰謝料の相場」の章で説明したとおり、弁護士基準(裁判基準)による慰謝料額を基準に交渉してくれるので、自賠責基準よりはるかに高い慰謝料をもらえることが期待できます。

交通事故の被害者が、弁護士の力を借りるべきもう一つの理由

被害者自身と弁護士の違いは、示談の交渉力にも現れます。

交通事故の被害者が臨む示談交渉の相手は、加害者が加入する保険会社の担当員であるのが普通です。

保険会社で経験を積んだ示談交渉のプロを相手に、交渉に不慣れで、交通事故の賠償額相場さえ知らない被害者が自分に有利な条件を引き出すことは、不可能に近いといってよいでしょう。

そんなとき被害者の力強い味方になってくれるのが、弁護士です。交通事故についての法律知識と実務経験に富んだ専門職として、加害者側の保険会社との示談交渉の場でその才を十分に発揮してくれるでしょう。

それは被害者に有利な条件を引き出すことへとつながっていくのです。

まとめ

見てきたとおり、交通事故の後遺障害等級申請や示談交渉を弁護士に依頼することで、被害者の負担が軽くなると同時に、より高額の慰謝料を手にすることができます。これは弁護士に依頼する大きなメリットです。

弁護士に依頼するタイミングは、交通事故に遭った直後がベストですが、示談交渉で加害者側から提示された金額に納得がいかないと思った時でも遅くはありません。

運悪く交通事故の被害者になってしまったら、後遺障害等級認定や示談を有利に進めるため、弁護士の活用をぜひ考えてみましょう。

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