後遺障害1級の主な症状と慰謝料相場を解説

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後遺障害1級

後遺障害等級の第1級は、主に視力や手足に重篤な障害が残った場合で、要介護のような寝たきり生活にはならなかったものの、やはり普通の社会生活を送るのは困難な後遺症です。

後遺障害1級の労働能力喪失率は100%。健常者であった事故前のように働くことは不可能です。それまで勤めていた職場も、退職を余儀なくされることが通常でしょう。

後遺障害の影響による減収は、逸失利益として加害者に請求することができますが、さらに慰謝料を請求することで取得額を上乗せすることができます。

後遺障害1級のように重大な障害を伴う交通事故では、逸失利益・慰謝料ともに非常に高額となります。
慰謝料請求の手続きを確実かつ効率的に行うには、専門家の力を借りるのが一番です。交通事故に強い弁護士に依頼して、被害の実状に適った十分な慰謝料を手に入れましょう。

後遺障害1級の認定基準~該当する症状は?

後遺障害1級は、次の表のとおり、1号から6号までの6症状を内容とします(自賠法施行令 別表第二 第一級)。

後遺障害1級認定に必要な条件
1号 両眼が失明したもの
2号 咀嚼及び言語の機能を廃したもの
3号 両上肢をひじ関節以上で失ったもの
4号 両上肢の用を全廃したもの
5号 両下肢をひざ関節以上で失ったもの
6号 両下肢の用を全廃したもの

各症状について解説します。

1号)両眼が失明したもの

1号の症状は、両眼を失明することです。

「失明」とは、次のいずれかをいいます。

  • 眼球を摘出した
  • 光の明暗が全く分からない
  • 光の明暗が辛うじて分かる

「光の明暗が辛うじて分かる」の具体的症状

「光の明暗が辛うじて分かる」とは、次のいずれかの状態です。

  • 暗室において目の前で点滅した照明の明暗を区別できる(光覚弁(こうかくべん)。「弁」は「弁える」「区別する」の意味。)
  • 目の前で上下左右に動かされた手のひらの動きの方向が分かる(手動弁(しゅどうべん))

両眼を失明すると、自分ひとりでできる生活動作が激減し、他人の手助けが欠かせない場面が増えてしまいます。

2号)咀嚼および言語の機能を廃したもの

2号は、咀嚼と言語の両方の機能を廃した症状をいいます。

咀嚼機能を廃すると流動食のみに

「咀嚼(そしゃく)の機能を廃した」とは、流動食しか摂取できない状態のことです。

「咀嚼」とは、食べ物を口の中で消化できる状態にまで噛み潰すことをいいます。
こうした機能が失われれば、噛まなくても消化できる流動食しか口にできなくなります。

「咀嚼の機能を廃した」かどうかは、歯の噛み合わせ(上下咬合)、歯並び(排列)、下あごの開閉運動などを基に判断されます。

3種の発音不能で言語機能を廃したことに

「言語の機能を廃した」とは、4種の語音のうち、3種以上の発音ができないことです。
4種の語音とは、次の4つをいいます。

  • 口唇音(ま行・ぱ行・ば行・わ行の音、および「ふ」)
  • 歯絶音(な行・た行・だ行・ら行・さ行・ざ行の音、および「しゅ」「し」「じゅ」)
  • 口蓋音(か行・が行・や行の音、および「ひ」「にゅ」「ぎゅ」「ん」)
  • 喉頭音(は行の音)

咀嚼と言語の両方の機能を廃すると、栄養不良とコミュニケーション困難を招き、身体と心の両面が不調に陥るおそれがあります。

咀嚼と言語いずれかの機能を廃するのは、3級2号の症状です。

3号)両上肢をひじ関節以上で失ったもの

両方の上肢をひじ関節以上で失うのが、3号の症状です。

「上肢をひじ関節以上で失った」とは、次のいずれかの状態をいいます。

肩関節において肩甲骨と上腕骨を離断した

肩甲骨と上腕骨は肩関節でつながっていますが、交通事故の衝撃でこのつながりが切り離され(肩関節離断)、肩から先の上肢が無くなってしまった状態です。

肩関節とひじ関節との間において上肢を切断した

肩関節とひじ関節の間の一点において上腕骨・筋肉・神経が切り離され(上腕切断)、そこから先の部位が無くなった状態をいいます。

ひじ関節において上腕骨と橈骨および尺骨とを離断した

前腕にある橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)は、ひじ関節で上腕骨とつながっています。事故の衝撃でこのつながりが切り離され(ひじ関節離断)、ひじから先が無くなってしまった状態です。

両上肢をひじ関節以上で失うと、手を使う動作が全く行えなくなり、洗面・食事・排泄など生活全般に大きな支障が生じます。

こうした場合、医療機関において義手を作り、装着や動作の訓練を行いますが、多くの動作は望めないのが実状です。

4号)両上肢の用を全廃したもの

4号の症状は、両方の上肢について、その用を全て廃したことです。

具体的には、次の2つの症状が同時に生じることをいいます。

両上肢の3大関節全てが強直した

上肢の3大関節とは、肩・ひじ・手首の関節のことです。

「強直」とは、関節の可動範囲が狭くなり、手技による改善が難しいくらいに固まった状態をいいます。

こうしたことが両上肢に起きるのが第1の症状です。

両手の全ての手指の用を廃した

「手指の用を廃した」とは、次のいずれかの症状をいいます(自賠法施行令別表 備考三)。

  • 手指の末節骨(第1関節から先の骨)の半分以上を失う
  • 中手指節関節(指の付け根の関節)、または近位指節間関節(親指以外の第2関節)もしくは指節間関節(親指の第1関節)に著しい運動障害(可動範囲が障害のない状態の半分以下になること)を残す

このいずれかが両上肢に生じるのが第2の症状です。

これら2症状が同時に起きると、腕や手の動きがかなり制約され、生活上の様々な動作が思うようにいかなくなってしまいます。

上腕神経叢の完全麻痺も上肢の用の全廃とみなされる

肩の内部にある腕の5本の神経が集まった部分(上腕神経叢)が衝撃を受けて神経が損傷すると、上肢が完全に麻痺して全く動かなくなることがあります。
バイクや自転車で転倒して、肩を路面に強く打ち付けた場合などに起きる症状です。

こうした麻痺が両上肢に起きると、両上肢の用を全廃したものとみなされます。

5号)両下肢をひざ関節以上で失ったもの

5号は、両下肢をひざ関節以上で失ったことを症状とします。

「下肢をひざ関節以上で失った」とは、次のいずれかです。

股関節において寛骨と大腿骨とを離断した

股関節においてつながっていた寛骨(骨盤のうち股関節のある部分の骨)と大腿骨が交通事故の衝撃で切り離され(股関節離断)、股関節から先の下肢が無くなってしまった状態で
す。

股関節とひざ関節との間において下肢を切断した

股関節とひざ関節の間のいずれかの箇所で大腿骨とその周囲の筋肉や神経が切り離され(大腿切断)、そこから先の下肢が無くなった状態をいいます。

ひざ関節において大腿骨と脛骨・腓骨とを離断した

ひざ関節においてつながっていた大腿骨と脛骨(けいこつ)・腓骨(ひこつ)とが交通事故の衝撃で切り離され(ひざ関節離断)、ひざから先の下肢が無くなってしまった状態です。

両下肢がこうした状態になると、立上り・立位・歩行などの動作が全くできなくなり、生活範囲が非常に限られたものになります。

医療機関では、失われた下肢の代わりとなる義足を作り、装着や動作の訓練を行いますが、自分の脚のように思うように動かすことは難しいのが実状です。

6号)両下肢の用を全廃したもの

両下肢の用を全て廃するのが、6号の症状です。

具体的には、次のいずれかの症状をいいます。

両下肢の3大関節全てが強直した

両下肢の3大関節(股・ひざ・足首)の全てについて、関節の可動範囲が狭くなり、手技による改善が難しいほどに硬くなった状態です。

両下肢の3大関節強直に加え、両足指全てが強直した

両下肢の3大関節と両足全ての指について、関節可動範囲が狭くなり、手技による改善が難しいほどに硬くなることをいいます。

これらの症状が起きると、両下肢の動きが思うようにいかなくなり、移動に時間がかかったり、転倒して怪我をするおそれが高まるので、注意が必要です。

障害により介護が必要となった場合は、別の等級に

見てきたとおり後遺障害1級はとても重篤な症状ですが、さらに食事・排泄・入浴などの介護が必要になると、「介護を要する後遺障害」という別の後遺障害となります。

「介護を要する後遺障害」は、介護を要する度合いにより1級と2級に分かれます(自賠法施行令別表第一)。

「介護を要する後遺障害」については、次のサイトで分かりやすく解説されていますのでご覧ください。

後遺障害併合1級が認められるケース

等級の認定では、いずれかの等級に該当する症状が2つ以上ある場合、一番重い等級より上の等級が最終的な等級とされることがあります。等級の併合というシステムです(自賠法施行令2条1項3号ロハ二)。

等級の併合により最終的な等級が1級になると、「併合1級」と認定されます。

たとえば、左眼失明と右眼の矯正視力0.03(3級1号)、高次脳機能障害(7級4号)、骨盤骨の著しい変形(12級5号)が重なると、1番重い3級より2級繰り上がり、「併合1級」となります(施行令3号ハ 札幌地裁判決平成11年12月2日の事例)。

後遺障害1級の慰謝料の相場

後遺障害の慰謝料については、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準(裁判基準)という3つの基準があります。

自賠責基準による後遺障害1級の慰謝料相場

強制保険である自動車損害賠償責任保険(自賠責)では、国の基準により、後遺障害1級の慰謝料は1,150万円(2020年3月31日までの事故は1,100万円)とされています。

これが後遺障害の慰謝料についての自賠責基準と呼ばれるものです。
自賠責基準は、賠償実務において、後遺障害による慰謝料額の最低ラインとして扱われています。

参考リンク:国土交通省WEBサイト「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準 第3の2(1)②」※PDFファイル

任意保険基準による後遺障害1級の慰謝料相場

後遺障害の慰謝料基準には、自賠責基準の他に、任意保険を扱う保険会社が個別に定める任意保険基準があります。

任意保険基準による慰謝料は、自賠責基準より少し高く、後述の弁護士基準(裁判基準)よりはるかに低い金額です。
被害者の後遺障害の状態次第では、自賠責基準と同額の金額を提示してくる保険会社もあるとさえいわれています。

これまで任意保険基準は保険会社の内部情報として公にされてきませんでしたが、最近は任意保険基準をWEB上で公開している保険会社もあります。

たとえば、損害保険ジャパン株式会社が定める後遺障害の慰謝料基準は、次の表のとおりです。

後遺障害者等級 父母・配偶者・子のいずれかがいる場合 左記以外
第1級 1,850万円 1,650万円
第2級 1,500万円 1,250万円
第3級 1,300万円 1,000万円
第4級 900万円
第5級 700万円
第6級 600万円
第7級 500万円
第8級 400万円
第9級 300万円
第10級 200万円
第11級 150万円
第12級 100万円
第13級 70万円
第14級 40万円

損害保険ジャパン株式会社WEBサイト「WEB約款」より転載)

1級の慰謝料は1,850万円または1,650万円で、自賠責基準の1,150万円より少し高く、次に紹介する弁護士基準(裁判基準)よりずっと安くなっています。

弁護士基準(裁判基準)による後遺障害1級の慰謝料相場

交通事故の被害者となったとき、弁護士に加害者との慰謝料交渉を依頼すると、弁護士費用はかかりますが、もらえる慰謝料は通常、大幅に増加します。弁護士は弁護士基準(裁判基準)を基に慰謝料交渉を行うからです。

弁護士基準(裁判基準)とは、慰謝料の金額を判示した裁判例を基に算出された慰謝料額の目安のことです。弁護士が示談交渉や裁判において求める慰謝料の基準とすることから、このように呼ばれています。

弁護士基準(裁判基準)は、日弁連交通事故相談センター東京支部が発行する「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称:赤い本)に掲載されています。
この「赤い本」によれば、弁護士基準(裁判基準)による後遺障害1級の慰謝料は2,800万円です。

後遺障害1級の慰謝料相場を3つの基準で比較
自賠責基準 任意保険基準 弁護士基準(裁判基準)
1,150万円 1,850万円 または 1,650万円 2,800万円

弁護士への依頼により慰謝料アップの期待大

弁護士基準は、自賠責基準の倍以上、任意保険基準より1,000万円前後高い金額であることが分かります。

これだけの差があれば、もらった慰謝料の中から弁護士費用を賄うことも十分に可能といえるでしょう。

これまで弁護士への依頼というと敷居の高いイメージがありましたが、最近の弁護士事務所の中には、一般の人に分かりやすく弁護士費用の中身を明示したり、初回相談を無料で行ったりする所もあり、一般の人にとって弁護士への敷居は低くなりつつあります。

また、弁護士基準(裁判基準)による2,800万円という金額はいわゆる相場(通常の目安)であるため、交通事故に強い優秀な弁護士に依頼すれば、この金額以上の慰謝料をもらえる可能性も出てくるでしょう。

後遺障害1級の逸失利益の計算方法

後遺障害1級は症状が重篤で、働くことができなかったり、働くことはできても仕事の内容や時間が非常に限られてしまったりすることで、事故前よりも収入が大きく減ることは明らかです。

こうした収入の激減は、事故に遭わなければ得られたであろう利益(逸失利益)として、加害者に請求することができます。

後遺障害による逸失利益は、平成13年に国が定めた「支払基準」により、次の式で計算することとされています。
“収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数“

ちなみに後遺障害1級の労働能力喪失率は100%です。

参考リンク:国土交通省WEBサイト「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準 第3の1」※PDFファイル

後遺障害1級の逸失利益の労働能力喪失期間

労働能力喪失期間とは、後遺障害1級についていえば、1級になったことにより本来の仕事ができなくなるであろう将来の期間のことです。就労可能年数ともいわれます。

労働能力喪失期間は、支払基準の別表において、後遺障害等級が確定した時の年齢だけを基に決められていて、等級がいくつかは問われていません。

たとえば、等級確定時30歳の人であれば、後遺障害1級であっても14級であっても、労働能力喪失期間(就労可能年数)は37年です。

この点で、逸失利益の額の等級による違いは、労働能力喪失期間よりも労働能力喪失率の影響を大きく受けるといえるでしょう。

参考リンク:国土交通省WEBサイト「就労可能年数とライプニッツ係数表」※PDFファイル

裁判例に見る後遺障害1級の示談金

後遺障害1級の示談金をめぐって被害者と加害者の間で争いとなり、裁判に持ち込まれた場合、裁判所はどのような判断をしているのでしょうか。

ここでは、後遺障害の示談金である逸失利益と慰謝料のうち、事例ごとにマチマチになりやすい慰謝料でなく、いくつかの事例を通してある程度の傾向を掴みやすい逸失利益をめぐる裁判例を見ていきます。

裁判では支払基準によらない逸失利益算定を求めることも可能

判例は、交通事故による逸失利益をめぐる裁判において、裁判所は、国が定めた支払基準に縛られることなく、労働能力の喪失率や喪失期間を認定できるとしています(最高裁判決平成18年3月30日)。

個々の争いにふさわしい具体的な解決をすることが裁判の目的であり、逸失利益の算定についても、支払基準といった一律の基準によるのでなく、各事例の実状に適った算定をすることが、争いの具体的解決という裁判の目的を果たすことになるからです。

裁判において被害者は、支払基準を超える労働能力の喪失率や喪失期間を主張し、それを基に算定された逸失利益を加害者側に求めることができます。

実際に1級の逸失利益が争われた裁判例を見てみましょう。

後遺障害1級に関する裁判例
判決年月日 年齢
性別
症状 労働能力喪失率 労働能力喪失期間    特徴
①広島高裁松江支部
平成24年5月16日
4歳 男 両上肢の用を全廃(4号)
両下肢の用を全廃(6号)
100%(100%) 49年49年) 支払基準どおりの認定。
②大阪地裁
平成26年2月4日
32歳 男 両下肢の用を全廃(6号) 100%(100%) 10年35年) 労働能力喪失期間が支払基準より大幅に短いのは、被害者の精神的・心理的状態が両下肢麻痺の主たる原因となって就労を妨げていると判断したため。
③鳥取地裁米子支部
平成21年7月13日
不明  両上肢の用を全廃(4号) 100%(100%) 不明 医療過誤による後遺障害について、自賠法の後遺障害1級の判断基準を用いた事例。逸失利益を支払基準と同じ労働能力喪失率100%で計算し、慰謝料は弁護士基準(裁判基準)の2,800万円とした。
④千葉地裁
平成28年8月30日
70歳 男 両眼失明(1号) 0%(100%) 0年 被害者が自転車に衝突された事例。被害者が長年糖尿病を患っていたこと、診療医は両眼失明が後遺障害に当たらないと診断したことを理由に、両眼失明は糖尿病性網膜症の悪化によるものであり、後遺障害1級には当たらないと裁判所は判断した。
⑤高松高裁
平成3年3月28日
16歳 女 両下肢の用を全廃(6号) 100%(100%) 49年 支払基準どおりの認定。
⑥大阪地裁
平成4年6月18日
16歳 男 両上肢の用を全廃(4号)
両下肢の用を全廃(6号)
100%(100%) 49年 支払基準どおりの認定。

裁判例①⑤⑥では労働能力の喪失率と喪失期間が、裁判例③では労働能力喪失率が、それぞれ支払基準どおりに認定されています。

裁判例②④は、後遺障害1号の症状が交通事故以外の原因によって生じていると判断した事例です。

6つの裁判例を見る限り、②④のような特殊な事情がない限り、逸失利益については支払基準どおりに認定されるのが後遺障害1級の裁判例の傾向といえるでしょうか。

通常の後遺障害1級の裁判例は少なめ

「介護を要する後遺障害1級」の裁判例に比べ、通常の後遺障害1級の裁判例は少ないようです。

後遺障害1級の症状は外形や検査結果だけで判断できるため被害者と保険会社との間で等級の対立が生じにくいこと、1号から6号までいずれも重篤な症状であることから保険会社も逸失利益を低く主張しずらいことが理由かと思われます。

後遺障害1級で認定される障害等級

後遺障害1級の人は、身体障害者障害程度等級(障害等級)1級にも該当する場合があります。
たとえば、両眼失明(後遺障害1級1号)が障害等級の視覚障害1級に該当する場合などです。

障害等級1級で受けられる給付・支援

障害等級1級に該当すると身体障害者手帳を取得できます。

障害等級1級の身体障害者手帳があると、次のようなサービスを受けることが可能です。

  • 福祉医療費給付金や補装用具(車いす・下肢装具・補聴器など)の交付
  • NHK受信料の減免
  • 所得税・住民税・自動車税の減額
  • 高速道路料金や鉄道・バス・タクシー・航空運賃の割引

これら以外に市区町村独自のサービスもありますので、身体障害者手帳を取得する際に市区町村役場に確認しましょう。

労災の場合、後遺障害1級でいくらもらえる?

後遺障害1級認定のもととなった交通事故が被害者の就業中または通勤途中に起きた場合、自賠責保険の対象になると同時に、業務災害または通勤災害(併せて労働災害)として、労働者災害補償保険(労災保険)の対象にもなります。

後遺障害1級でもらえる労災補償は3種類

国の基準では、後遺障害1級は労災障害1級に相当します。

労災障害1級の補償内容は、次の表のとおりです。

名目 金額
障害補償年金(就業中)
障害年金(通勤途中)
1年間につき、給付基礎日額×313日分
障害特別年金 1年間につき、算定基礎日額×313日分
障害特別支給金 342万円

給付基礎日額とは、事故前3か月間の賃金総額を暦日数で割った1日当たりの賃金額です。

算定基礎日額とは、事故前1年間に支払われた特別給与(ボーナスなど、3か月を超える期間ごとに支払われる賃金)の総額(算定基礎年額)を365日で割った額をいいます。

障害補償年金または障害年金、障害特別年金は、1年分が偶数月に2か月分ずつ支払われるのに対し、障害特別支給金は、全額を1回で支払う一時金払いです。

慰謝料は労災での支払いの対象外

労災補償は、労災を被った人の収入の穴埋めと社会復帰の促進を目指すものであるため、交通事故による精神的ダメージへの賠償である慰謝料は労災保険から支払われません。

慰謝料は、精神的ダメージを与えた加害者側に請求することになります。

労災事故の場合は会社に対する損害賠償請求も視野に

交通事故での労災被害者は、国から労災補償を受ける他に、自分の勤務先会社に対して損害賠償を請求することができます。

勤務先会社への損害賠償請求は、安全配慮義務違反または使用者責任のいずれかを理由に行うことが可能です。

安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求

会社の安全配慮義務違反とは、会社が従業員の生命や身体の安全を保つ義務を怠ることをいいます。

たとえば、会社が社用車の点検整備を怠ったため、その車を運転した従業員が大事故を起こして後遺障害1級の重傷を負った場合です。
重傷を負った従業員は、会社に対して、安全配慮義務違反を理由に損害賠償を請求することができます(民法415条。最高裁判決昭和50年2月25日)。

使用者責任に基づく損害賠償請求

会社の従業員が業務中に他人に与えた損害を賠償する責任が、会社の使用者責任です(民法715条)。

例として、会社の同僚が運転する車に同乗していたところ、運転者の不注意で大事故が起き、同乗者が後遺障害1級の重傷を負った場合を挙げることができます。
会社は、従業員が業務中に他人である同乗従業員に与えた重傷について損害賠償をしなければなりません。

損害賠償は労災補償の分だけ減額される

労災被害者が労災補償を受けた後に勤務先会社に損害賠償を請求した場合、損害賠償額は労災補償額の分だけ減額されます(最高裁判決昭和52年10月25日)。

労災被害者が、労災補償と損害賠償が重なる部分について両方受け取れるとすると、損害の穴埋めを2回受けることになり、もらい過ぎになってしまうからです。

後遺障害1級認定を獲得するための重要なポイント

交通事故の被害者が後遺障害1級の認定を受けるには、事故直後から、医師に症状を正しく申告し、それにふさわしい診療を受け続けることが必要です。

完治するしないに関わらず真面目に治療に取り組み、社会生活に復帰する努力を続ける姿勢を医師に示すことも、後遺障害1級認定のために大切になってきます。

後遺障害診断書は、等級認定において非常に重要

後遺障害の等級認定審査は何種類かの書類に基づいて行われますが、特に重要なのが医師の作成する後遺障害診断書です。

後遺障害の知識と経験豊かな医師を主治医に

等級認定の審査に通り、1級をもらえるだけの診断書となるかどうかは、作成する医師が後遺障害についての知識と経験をどの程度持っているかが決め手になります。

医師を選べるのであれば、こうした知識と経験の豊かな医師に診てもらうようにしましょう。

効果的な診断書作成は医師との良好な関係から

1級の審査に通るだけの診断書を書こうという気持ちを医師に持ってもらうことも重要です。

そのためはまず、医師の指示どおりに真面目に診療に通いましょう。
真面目に通ったにもかかわらず後遺障害が残ってしまったとなれば、医師としても、審査に通る診断書を書いてあげようという気持ちになるはずです。

後遺障害等級の認定率は、約5%という狭き門です。その狭き門を突破する最大の武器は、真面目な診療態度を通じて培った医師との良好な関係といっても過言ではありません。

事故後の生活を考慮した適切な対応・交渉を

後遺障害1級の各症状はいずれも重篤で、生活に大きな支障を生じさせます。
ただ、今すぐ生命を危うくするほどの症状ではありません。被害者は、重い障害とともにこれからの人生を歩むことになります。

後遺障害1級被害者の生活維持には多方面の支援が必要

被害者のこれからの生活には、まず日常動作など身の回りのことについて家族の手助けが欠かせません。
家族の負担が重くなり過ぎないようにするため、市区町村の障害者サービスを利用しなければならない場合も出てくるでしょう。

金銭面では、自賠責保険から逸失利益と慰謝料の支払いを受けることはもちろん、自賠責保険の補償範囲を超える損害については任意保険による補充も必要です。

市区町村から身体障害者手帳を取得すれば、住民税などの減額、交通機関の料金割引などにより経済負担を軽くすることもできます。

支援体制の整備は家族の大きな負担に

後遺障害1級の被害者を抱えた家族は、ともすれば、被害者の日常生活への手助けはもちろん、加害者や保険会社との示談交渉、市区町村役場での手続という多忙極まりない状況に置かれることになるでしょう。

しかも、慣れない示談交渉や市区町村役場での手続は、被害者本人への手助けと相まって、家族を精神的に追い詰めるおそれが十分にあります。

後遺障害1級への支援充実にはまず弁護士への相談を

そこでぜひ検討したいのが、弁護士の活用です。
弁護士に依頼すれば、加害者や保険会社との示談交渉、市区町村役場での手続を被害者本人や家族に代わって行ってもらえます。

特に慰謝料については、弁護士は弁護士基準(裁判基準)に従って示談交渉を行うため、高額となる期待大です。
手にした慰謝料の中から弁護士費用を賄うことも十分可能といえます。

公的手続の専門家として市区町村役場での手続も正確かつ迅速に行うので、速やかな障害者サービスの開始と身体障害者手帳の取得につながるでしょう。

家族がこれらの負担から解放されれば、被害者本人への手助けに専念できることにもなるわけです。

本人と家族のこれからの生活をしっかりと成り立たせていくためには、まず弁護士に相談するのが一番といえます。

まとめ

交通事故によって重度の障害を負った場合、後遺障害1級取得による自賠責からの補償、加害者側からの逸失利益や慰謝料の支払い、身体障害者手帳取得による経済負担の軽減、労災補償の受給、障害者サービスの利用など、重度障害に伴う本人と家族の生活を守る制度が用意されています。

ただ、実際に本人と家族の生活を守るには、使える制度を見つける、制度利用に速やかに着手する、制度上の利益をできるだけ多く手にするといった作業が必要です。
特に逸失利益と慰謝料については、なるべく高額の支払いを受けることが本人と家族の生活維持に欠かせません。

これらの作業を迅速かつ効果的に進めるには、各制度についての知識と実務経験、相手との交渉力が必要となります。
ただ、重度障害を負った本人と家族がこうした知識・経験・能力を持ち合わせることは、ほとんどないといってよいでしょう。

そこで大切なことは、こうした作業を専門家に委ねることです。その専門家こそが弁護士にほかなりません。
弁護士は、交通事故で重度の障害を負った人とその家族を守る手立てを熟知しています。弁護士に委ねれば、本人と家族を守るためのあらゆる手立てを講じてくれるのです。

交通事故で重度の障害を負ったら、交通事故に詳しい弁護士に相談して、後遺障害1級の認定申請など、本人と家族を守るのに必要な手続を代行してもらうことをお勧めします。

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