交通事故に巻き込まれた場合の有給休暇や残業代の請求はできる?

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交通事故で仕事に影響があった場合は適切な補償を受けることができます

会社員や公務員はもちろん、アルバイトや主婦の方でも休業損害が認められる場合はあります。
まずは「交通事故に強い弁護士を探す」よりお気軽にお問い合わせください。

休業損害とは

休業損害とは、被害者が交通事故による受傷のために休業し、あるいは十分な稼働ができなかったために、治癒ないし症状固定までの間に、得ることができたはずの収入ないし利益を得られなかったことによる損害です。

事故で怪我をすると、入院や通院が必要になります。入院すると、その間当然仕事ができなくなりますし、通院でも、その日1日や半日仕事ができなくなることが多いのです。また、受傷状況がひどい場合には、病院に行かなくても自宅療養が必要になります。そのような場合、その日は会社に行ったり、店を開けて働くことができず、本来得られたはずの収入を得られなくなるので、休業損害として賠償請求できます。

休業損害を請求できるのは、基本的に交通事故前に働いていた有職者です。会社員や公務員、自営業者やアルバイト、フリーランスなどの人と、主婦などの家事労働者に休業損害が認められます。

有給休暇とは

有職者の中でも、会社員や公務員には「有給休暇」が認められます。アルバイトやパートなどの短時間労働者にも、有給休暇制度が適用されます。有給休暇とは、一定期間以上同じ職場で働いている人に認められる「給与が支払われる休暇」のことです。有給休暇を取得すると、その日は仕事をしなくても普段と同じように給料を支払ってもらえます。

労働者が有給休暇を取得できる条件は、以下の通りです。

  • 1つの職場で6か月以上働いている
  • 仕事日の8割以上出勤している

1年に取得できる日数が決まっており、勤続年数に応じて取得できる日数が増えていく仕組みです。最大日数は、6年6か月以上働いた労働者に与えられる「年間20日」です。

有給休暇を取得するとき、「理由」は問題になりません。レジャー目的でも、単に家でゆっくりするためであっても、どのような目的であれ、有給休暇を取得することが可能です。会社から「何の目的で有給休暇を取得するのか?」と聞かれることもありませんし、理由によって有給休暇を認められない、ということもありません。有給休暇は労働者の権利なので、定められた年間日数までであれば、自由に取得して会社を休むことができます。

参考:有給休暇について押さえておくべきこと

有給休暇と休業損害

有給休暇は取得理由を問われないので、交通事故の怪我の治療のために、有給休暇を利用するのも自由です。

その場合、休んだ分の給料は会社から支払われます。そうなると労働者は休業しても減収が発生しないので「休業損害」が発生しないとも考えられます。有給休暇を取得した場合には、加害者に休業損害を請求できないのでしょうか?

確かに、有給休暇を利用した場合、労働者には給料が支払われるので実際には減収が発生しません。しかし、有給休暇は「労働をしなくても給料をもらえる権利」であり、本来であれば労働者が別の目的に利用することも可能だったはずです。ところが、有給休暇を交通事故の治療のために使用しなければならなかったのであり、失った余暇等のための時間は、財産的価値を有するものと考えられます。そのため、有給休暇を取得した場合には、労働者に財産的損害が発生していると考えることができるのです。

したがって、交通事故の治療のために有給休暇を利用した場合にも、休業損害の請求は可能となります。

有給休暇を取得した場合の休業損害計算方法

怪我の治療のために有給休暇を取得した場合、休業損害はどのようにして計算するのでしょうか?

休業損害の基本的な計算式は、以下の通りです。

  • 1日当たりの基礎収入×休業日数

1日当たりの基礎収入は、「事故前3か月分の給与」を平均して求めるのが通例です。このときの「給与」には、家族手当や住宅手当、時間外手当(残業代)などをすべて含めた金額として、税金や健康保険料などを控除する前の金額を基準とします。このように総支給額を基準とするため、実際の手取り額よりも大きく上がります。

例えば事故前3か月間(90日)の給与額がそれぞれ40万円、45万円、43万円だった労働者が事故に遭い、通院治療のために10日間の有給休暇を費消したと考えましょう。

この場合、1日当たりの基礎収入額は、14,222円となります。そこで10日分の休業損害は142,220円です。他に有給休暇を使わずに仕事を欠勤した日があれば、その分も合わせて休業損害を請求できます。

休業と交通事故との因果関係について

有給休暇の取得と交通事故に因果関係がないと言われる可能性がある

交通事故被害者が有給休暇を費消した場合、基本的には休業損害の算定根拠にしてもらうことができます。しかし場合によっては休業損害を否定されるケースもあります。それは、「有給休暇の取得と交通事故に因果関係がない」と言われる場合です。

問題になりやすいのが、交通事故後長い時間が経過してから有給休暇を取得したケースです。例えば事故後3か月くらい経過して症状も大分落ち着いているのに、突然まとまった有給休暇を取得して、家族旅行に行っていたら、それは事故の受傷を原因とするものとは考えてもらえないでしょう。

有給休暇で休業損害を請求できるケース(因果関係が問題なく認められる場合)と請求しにくいケース(因果関係を否定される可能性がある場合)は、それぞれ以下のような場合です。

因果関係が認められるケース

  • 交通事故受傷直後の有給休暇取得
  • 有給休暇を取得した日に実際に病院に入通院している
  • 医師の診断書があり「自宅療養が必要」と記載されている

因果関係が否定されやすいケース

  • 交通事故から期間が空いている
  • 有給休暇を取得した日に実際に病院に入通院していない
  • 医師から「自宅療養が必要」と判断されていない

有給休暇を取得したことによって休業損害を請求したいのであれば、休んだ日は必ず病院へ行くこと、また自宅療養をするのであれば、医師による指示を受けて診断書をもらっておくようにしましょう。

休業損害と残業代

交通事故で仕事を休んだとき、「残業代を請求できるのか?」と疑問に思われる人も多いのです。事故で休んだら、休んだ日数分の休業損害をもらえるとは言っても、そこには基本給しか含まれていないのではと、不安になるものです。

実際に、多くの労働者は日々残業を行い、残業代込みの金額でようやく生活しているものです。それにもかかわらず残業代が支払われなかったら、支給金額が目減りして生活の維持が苦しくなってしまいます。

残業代とは

残業代とは、一般的に労働基準法が定める「時間外労働手当」のことを意味することが多いです。労働基準法は、「1日8時間、1週間に40時間」の法定労働時間(基準となる労働時間)を定めています。これより多く働いた場合には、労働者は会社に残業代として割増賃金を請求できます。残業代は、時間外労働をしたときにのみ発生するので、雇用契約の「基本給」には入っていません。また残業をした時間に応じて計算されるので、月により変動があります。残業が多かった月には残業代が増えますし、残業が少なかったら金額が減ります。

残業代計算の際には、「割増し率」が適用されます。通常一般で、1日8時間、1週間に40時間の法定労働時間を超えて働いたら、賃金が1.25倍になります。午後10時から翌日午前5時までの「深夜・早朝労働」の場合には割増し率がさらに1.25倍になります。休日出勤した場合には、割増し率として1.35倍が適用されます。

このように事故前に多くの残業をしていた人の場合、残業代を含めるか含めないかで請求できる金額が大幅に変わってきます。

休業損害は残業代を含んでいる

それでは、休業損害を請求するとき、残業代を含めることはできるのでしょうか?

実は休業損害は、もともと残業代を含んだ計算方法となっています。先ほどの説明のように、休業損害は「1日当たりの基礎収入」を基準にして計算します。この「1日当たりの基礎収入」の計算の際には「基本給だけはなく、家族手当や住宅手当、時間外手当などの各種の手当」を含んで計算します。

つまり、1日当たりの基礎収入を計算する際にすでに残業代を含めているので、あえて「残業代」のみを独立して請求する必要はないのです。

交通事故前3か月の平均残業代が、休業損害に含まれてくると考えると良いでしょう。

季節によって変動のある場合

交通事故では事故前3か月の平均残業時間をもとにした残業代を請求できますが、職種によっては「季節ごとに残業時間が変わる」ケースがあります。事故前3か月と事故後の予定残業時間が全く違う、ということもあるでしょう。例えば事故前3か月が閑散期で、事故後に繁忙期に入る予定だった場合などには、事故前3か月を基準にされると本来の残業時間より少なくなり、損をしてしまう可能性があります。

このような場合には、前年度の実績などをもとにして、予定されていた残業時間をもとに残業代請求をする方法が考えられます。前年や前々年の同じ時期の給与明細などを探して相手に提示し、事故前3か月と事故後とで残業時間を変えて計算すべきであることを主張し、交渉を行いましょう。

休業損害の請求方法

休業損害計算の際には有給休暇の分や残業代を含めて計算できますが、休業損害は具体的にどのようにして請求すれば良いのでしょうか?以下で請求の手順を説明します。

休業損害証明書を書いてもらう

会社員や公務員が休業損害を請求するためには勤務先(会社)が作成する「休業損害証明書」と、補完資料として前年分の源泉徴収票が必要です。休業損害証明書とは、勤務先が従業員の勤務日数、欠勤日数や遅刻、早退日などについて記載し、証明するための書類です。保険会社に専用の書式があり、保険会社から勤務先に送ってもらうか、被害者が勤務先に渡して記入を依頼する必要があります。

基本的には勤務先が作成する書類なので、被害者である労働者自身が記入する必要はありません。ただ、大きな会社なら総務などの人が問題なく書いてくれますが、小さな事業所などの場合、雇用者も書き方を把握していないことがあります。そのようなときには、被害者自身が書き方を説明しなければなりません。

休業損害証明書の書き方

簡単に、休業損害証明書の書き方のルールを説明します。

休業損害証明書の書式には、毎月1日から31日までの表があります。該当する日に以下のように書き込みをしましょう。

  • 入通院などによって会社を休んだ日 「○」
  • 会社のもともとの休日 「×」
  • 通院のために遅刻した日 「△」と「遅刻の時間」
  • 通院のために早退した日 「▽」と「早退の時間」

有給休暇については「全休」扱いになるので「〇」とします。

また、パートやアルバイトなどで「所定労働時間」がある人の場合には、その時間数と時間給を記入します。そして、作成日付を書き入れて、勤務先の代表者の氏名を書き入れ、勤務先印を押してもらえば完成します。

相手の保険会社に送付する

勤務先に休業損害証明書を書いてもらったら、加害者の保険会社に送付するか、勤務先から直接送ってもらいます。そうすると、保険会社の方で休業損害を計算して、示談金に含めて連絡をしてくれます。休業損害を含めた相手の示談案に異議がなければ、示談を成立させて、休業損害を含む賠償金を支払ってもらえます。

休業損害を受けとれるタイミング

休業損害は、交通事故後働けない状態になったらすぐに発生するものですが、実際にはいつ受け取ることができるのでしょうか?

賠償金を受け取れるのは、基本的に示談成立時

交通事故の損害賠償金は、基本的に「示談成立時」まで受け取ることができません。示談が成立したときに、治療費も休業損害も慰謝料も逸失利益も通院交通費もまとめて支払われます。示談前に賠償金が支払われるのは、加害者の保険会社が治療費を病院に直接払いする場合(一括対応のケース)や後遺障害等級認定などで被害者請求する場合くらいです。

休業損害を先に受け取る方法

しかし休業損害は、被害者の給料に代わる賠償金で、支払われないと被害者の生活に影響します。そのような性質に鑑みて、保険会社と交渉をすれば、示談が成立する前であっても、毎月休業損害の先払いをしてくれるケースが多いのです。

休業損害を先に受け取りたい場合、まずは保険会社に対して「休業損害を毎月先に支払ってほしい」と言ってみましょう。保険会社が了承すれば、勤務先に休業損害証明書を書いてもらい、保険会社に提出したら月ごとに有給休暇分や残業代を含めた休業損害を支払ってもらえるようになります。

休業損害請求を弁護士に依頼するメリット

交通事故において、休業損害の金額は、時には数百万円を超える場合もあり、軽視できない損害です。被害者が自分で請求することも可能ですが、弁護士に依頼するといろいろなメリットがあるので、ご紹介します。

弁護士基準が適用される

交通事故の示談交渉を弁護士に依頼すると「弁護士基準」が適用されます。弁護士基準とは、弁護士が保険会社と示談交渉をするときに適用される法的な根拠のある基準です。裁判所が賠償金を算定するときの基準も同じです。

任意保険会社が被害者と示談交渉をするときには「任意保険基準」や「自賠責基準」という低額な基準を用いるので、賠償金を全体的に下げられてしまいます。休業損害の場合にも、任意保険基準や自賠責基準では「1日当たりの基礎収入」を少なくされて、減額される可能性があります。

法的に正当な金額の賠償金(任意保険基準や自賠責基準より高額です)を求めるには、弁護士に依頼する必要があります。

正確に休業損害を計算できる

休業損害を計算するときには、基礎収入や休業日数について、間違えないように正確に計算しなければなりません。また保険会社も計算を間違えることがあるので、相手から提示を受けた金額や計算方法に誤りがないかチェックする必要もあります。被害者が自分で対応していると、なかなか正確に把握するのは困難でしょう。

弁護士であれば、正しく計算できることはもちろんのこと、相手の提示してきた金額が誤っていないか、不当に減額されていないかもチェックできますし、問題があったら訂正を求めて適切な休業損害を支払わせることが可能です。

争いが発生したときにも有利に交渉できる

休業損害を請求するとき、被害者側と加害者側とで意見が合致せず争いが発生するケースがあります。そのような場合でも、弁護士がついていたら相手に反論をして、適切な考え方に基づいた休業損害を導き出すことが可能になります。

例えば休業損害については、「休業日数」に争いが発生することが多いのです。つまり加害者の保険会社が「休業の必要がなかったから休業日数には含まない」と主張して、トラブルになります。

当初から弁護士に相談していれば、休業する際には必ず通院するか、医師に診断書を書いてもらうなどして「交通事故によって休業した」ことを証明できるよう対応するので、相手に付け入る隙を与えません。結果的に被害者の主張が通り、休業損害が増額されます。

手続きを任せて仕事に専念できる

交通事故の示談交渉は、非常に煩雑ですし精神的にも負担となります。ただでさえ怪我をして事故前と生活が変わり、大きな負担がかかっている被害者には荷が重いものです。

示談交渉や休業損害の計算などの煩雑な交通事故処理をすべて弁護士に任せてしまえば、被害者は相当楽になりますし、仕事や日常生活に専念できるようになります。

休業損害で迷ったら弁護士に相談しましょう

交通事故に遭って、有給休暇や残業代を含めた休業損害のことで迷ったら、まずは法律の専門家である弁護士を頼りましょう。交通事故に力を入れている専門家を探して、相談の申込みをするところから始めてみてはいかがでしょうか。

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