交通事故の直後、絶対にその場で示談を行ってはいけない理由とは?

事故直後の示談

交通事故後、当事者同士で損害賠償金の金額や支払い方法について話し合い、合意に至ることを示談と呼ぶ。負傷の程度や車両損害が明確ではない事故直後の現場では、示談に応じるべきではない。口約束や覚書程度でも、示談成立と見なされてしまう可能性も。

交通事故後の示談は被害の全容が明らかになってから!

その場で合意してしまってはいけない!

交通事故は、ある日突然起こってしまいます。

いくら安全運転をしていて運転技術に自信があっても、誰の身にも起こりうることです。

そして交通事故後の処理に関しては、たとえ知識として頭に入っていても、事故直後の混乱した状況で、またお互いに興奮状態にある事故当事者同士で、セオリー通りに進めることは難しいでしょう。

負傷者の救護を優先させることは誰でも理解でき、迅速に行うことは義務でもありますが、いざ示談となると、示談って何?と戸惑ってしまう人は多いのではないでしょうか。

示談という言葉は知っていて、事故現場で行ってはいけないということも理解していたはずなのに、実際に何が示談なのか、何をするべきなのか、何をしてはいけないのかがわからなくなる場合がありますので、ここで整理しておきましょう。

一番大切なことは、事故現場で示談を行ってはいけないということです。

示談とは?

交通事故が起こってしまった場合、当該事故の当事者同士による損害賠償の内容を決めることが示談と呼ばれ、そのための話し合いが示談交渉と呼ばれるものです。

事故の加害者が提示した賠償金などの内容に納得がいかない場合、最終的には裁判にまで持ち込まれる場合もありますが、場合によれば結審まで数年間を要してしまい裁判費用も高額となることから、交通事故の90%以上は示談で解決していると言われています。

たいていの場合、示談は当事者が加入している保険会社の担当者同士で行われますが、示談内容に当事者同士が合意し、その内容を示した示談書が作成され、双方の署名捺印が行われて成立となります。

示談交渉はいつ始まるのか?

示談交渉は事故直後から

本記事のタイトルは「交通事故の直後、その場で示談を行ってはいけない!」ですが、示談の交渉は、交通事故の直後から始まります。

示談を始める準備は、まず、事故相手の身元を確認することから始まります。お互いに免許証などの身分証明書で連絡先を教え合い、今後損害賠償の話し合いを行うことを確認します。

たいていの場合、示談交渉はお互いの保険会社同士で行われますので、どのような保険に加入しているかを確かめておくことも必要でしょう。

しかし気を付けなければいけないことは、この場で金額の交渉を行うなど、示談内容の話は行うべきではないということです。

損害賠償金額を計算するのは、負傷の程度や通院期間、また後遺障害のあるなしを確定させてからが妥当です。

どうして示談を急ぐ加害者がいるのか?

交通事故の現場で示談は行うべきではないのですが、示談を急ぐ当事者はいます。

特に加害者となってしまった場合、警察も呼ばずにその場で示談を済ませてしまおうとする運転者もいるのです。

その理由を知っておけば、事故現場での示談に応じてはいけないことが分かります。

仕事などの理由で、急いでカタを付けたい…

当事者が大怪我をしていて、どう考えても救急車を呼ばなければならないケースは別ですが、お互いの負傷が比較的軽傷、または一方が無傷で、車両の破損も小さかった場合、その場で示談内容を決めて解決しようとする場合があります。

交通事故を起こした限りは、事故処理の手続きに立会わなければいけません。

その日の予定は全てキャンセルになってしまう可能性が極めて高く、自分の会社または取引先に迷惑をかけてしまうことは明白です。

するとその場で示談をして、後腐れなく当事者のみで事故処理を済ませ、その場を立ち去りたいという欲望に駆られてしまうのでしょう。

免許取り消しなどの処分を回避するため…

また、事故の相手が警察を呼ばないで欲しいと嘆願する時は、会社に知られたくないということももちろん、既に過日の交通違反で点数がギリギリで、今回の事故で行政処分を受けたら免許が取り消しになってしまうというケースもあるでしょう。

免許がないと仕事ができない、生活できなくなると頭を下げられれば、ふと情けをかけてしまい、その場で示談を済ませてしまおうと思う被害者もいるでしょう。

しかしどのような理由があっても、事故現場で示談をしてはなりません。

事故現場で示談を行ってはならない理由は?

以上のように、自分にもその後の都合があったり、相手に懇願されたりすると、ついつい警察も呼ばず、事故現場で示談を済ませてしまいたくなるケースもあるのでしょう。

繰り返しますが、それでも現場での示談はしてはなりません!

その理由は、警察への事故通報は当事者の義務であるという堅苦しい理由だけではなく、例え警察が到着した後に行う示談でも、後で起きるトラブルを避けるためです。

事故現場では気付かない負傷がある

まず、交通事故で身体が負ったダメージは、その時は何ともなくても数時間後、あるいは数日後に症状として現れることが珍しくありません。

その隠れた怪我に気付かず、たいしたことはないと事故直後に示談をしてしまった場合、そうした怪我の補償は誰もしてくれません。

症状が悪化し長期の通院が必要となっても十分な治療費は受けられず、仕事を休むことになった場合の逸失利益も補償されません。

そしてこれは自分だけではなく、事故を起こした相手にも起こりうる事です。

後で問題が起きて揉め事にならないよう、きちんとした手順で事故処理を行うべきだという大きな理由はここにあります。

警察を呼びたがらない当事者には悪質な理由がある

どうしても警察を呼びたくない、または示談をその場で行いたいという相手のペースに乗ってはいけません。

警察に事故処理をされたくないという場合は、何かしらの悪質な理由があると判断して良いでしょう。

自分は車に乗って行う仕事をしているので、今度の事故で処分を受けたら免許停止、もしくは免許取り消しになって仕事ができなくなってしまうので、その場の当事者だけの示談で勘弁してくれというケースもあります。

ただ、この話が本当かどうかは、相手の状況を調べないと分かりませんし、初めて会った被害者には知りようもないのです。

事故を起こした相手を100%信じるのは、危険な行為になる可能性があります。

相手のペースに巻き込まれて示談に応じてしまい、その後態度が急変したり、連絡が取れなくなったりする事は珍しくなく、最悪の場合は悪質な当たり屋だったりする事もあります。

交通事故が起こったら必ず警察を呼び、その場限りで例え口約束でも示談には応じない、手書きの念書には絶対にサインなどしない、という姿勢を守ってください。

口約束でも示談成立と認められる場合があり、取り消せない

では、どのような行為が示談と認められてしまうのでしょうか。実は口約束だけでも示談成立とされることもある、ということを覚えておきましょう。

口約束でも成立してしまう示談

交通事故の当事者双方が成人の場合、口約束だけの示談でも法的には有効です。

メモ書き程度の念書でも、双方の合意とサインがあれば示談が成立したと認められます。

近年ではスマートフォンや携帯電話で簡単に会話を録音することが可能で、ドライブレコーダーを搭載している自動車も増えていることから、「言った、言わない」を証明することが容易となり、後に一方に不満があっても、他方は口約束で合意したと主張することもできるでしょう。

交通事故現場では、相手との損害賠償に関わるような話は避け、口約束に乗らず、念書にもサインしない、という姿勢を貫きましょう。

一度合意してしまった示談を取り消すことは非常に難しい

示談が一度成立してしまえば、後に取り消すことは原則的にできません。

しかし、その内容が公序良俗に反している場合や、内容に誤りがある場合、詐欺や脅迫があった場合には無効や取り消しを要求することは可能ですが、これらの内容を証明したり、訴えを起こしたりする必要が生じてきます。

事故現場で示談に応じてしまうことは、絶対に避けてください。

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