免許取得の必要がなく、誰でも簡単に乗ることができる自転車だが、道路交通法上は車両に分類され、交通事故を起こした場合の損害賠償責任は自動車と同じだ。しかし保険制度が整備されておらず、死亡事故などを起こしてしまった場合は非常に困難な状況に陥ります。
目次
自転車事故の示談交渉は当事者同士が行うケースが多い
弁護士に相談して適正な損害賠償を得よう
免許の取得が不要で、子どもからお年寄りまで気軽に乗ることができる自転車。エコ意識の高まりから自転車通勤が増え、健康意識の高まりから趣味としてツーリングを楽しむ人が増え、自転車に乗る人口は増えてきたのではないでしょうか。
そこで交通事故の増加も心配されるところですが、自転車関連の交通事故件数は減少傾向にあります。道路の整備が進み、車道を自転車が走るということに自動車のドライバーも慣れてきたという要因もあるかもしれません。
自転車に乗っているときに交通事故に遭ったら、相手に賠償金の請求ができます。ただ、自転車事故の場合、自動車事故とも歩行者の...
自転車と歩行者の事故は増加している!
しかし一方で、自転車と歩行者の事故はここ十数年で1.5倍に増加しています。そして自転車の運転者が歩行者と事故を起こし、高額な賠償請求を受ける判決も注目を集めています。
自転車事故に対する責任の重さと、慰謝料などはどれくらい払わなければならないのか、調べてみましょう。
道路交通法上、自転車はどういう乗り物か
道路交通法上では、自転車は車両の一種です。軽車両に該当しますが、法律違反をすれば自動車と同様の責任が問われます。
自転車で事故を起こした場合に問われる責任
自転車で交通事故を起こした場合、業務上過失致死傷害罪、過失運転致死傷罪、危険運転致死傷罪、過失建造物損壊罪などの刑事上の責任を問われます。また民事上でも、被害者に対する損害賠償責任が生じ、自動車を運転していて交通事故を起こした時と同じく、慰謝料などの支払いを行わなくてはなりません。
行政上の責任として、運転免許の取り消しまたは停止や反則金の支払いが科せられますが、運転免許を持っていない人でも自転車に乗ることは可能なため、ケースバイケースの対応となります。
自転車に乗る時のルール
道路交通法では自転車に乗る時のルールが定められていますが、運転免許がないため、普通は勉強する機会がありません。
ここで、自転車に乗る時の主なルールを紹介しましょう。
自転車は車道を走る
歩道と車道の区別のあるところでは、原則として自転車は車道を通行しなければなりません。
車道を走る時は左側を走行
自転車が車道を走る際には、自動車と同じく左側を走行しなければなりません。
歩道を走る場合は、歩行者を優先し車道寄りを走行
車道走行は危険を伴うと判断される場合は歩道の走行が可能ですが、歩道を走行する際には歩行者を優先し、すぐに停止できる速度で走り、歩行者の妨げとなる場合は一時停止を行わなければなりません。
改正道路交通法により、危険行為が定められる
改正道路交通法の施行に伴い、2015年6月から、危険行為を繰り返した自転車の運転者に自転車運転講習の受講が命じられるようになりました。
危険行為とは
信号無視、遮断踏切立入り、指定場所一時不停止、歩道通行時の通行方法違反、制動装置(ブレーキ)不良自転車運転、酒酔い運転、通行禁止違反、歩行者用道路における車両の義務違反(徐行違反)、通行区分違反、路側帯通行時の歩行者の通行妨害、交差点安全進行義務違反等、交差点優先車妨害等、環状交差点安全進行義務違反等、安全運転義務違反です。
自転車運転者がこれらの危険行為を3年以内に2回以上繰り返した場合、都道府県の公安委員会が講習を受けるように命令を出します。
自転車事故の慰謝料など損害賠償は、自動車と同じ!
自転車の事故だから、自動車ほど慰謝料は必要ないだろう、という思い込みは捨ててください!
自転車で交通事故を起こしてしまい、被害者に負傷させたり、死亡させたりしてしまったら、自動車と同じ損害賠償責任を負うことになるのです。
例え子どもでも、多額の損害賠償を命じられた判決がある
自転車で起きた事故の損害賠償の事例として有名になったのは、神戸地方裁判所が2013年7月に男子小学生が起こした死亡事故に対して命じた約9,500万円の賠償命令でした。男子小学生が夜間、歩道と車道の区別のない道路において歩行中の女性と衝突し、被害者は頭蓋骨骨折の大怪我をし、植物状態になってしまった事故です。
当然、男子小学生には支払い能力がありませんので、親が支払わなければならないのですが、子どもが乗った自転車が大きな事故を起こし、自動車事故と同じ水準の損害賠償を科せられたと世間を騒がせました。
この1件だけではなく、自転車と歩行者の事故に対して多額の損害賠償金支払いを命じる判決が相次いだため、自転車の運転者が保険に加入しておくことの大切さを知らしめることになりました。
小学生などの未成年が自転車事故を起こした場合のリスクとは?このページでは、小学生がなどの未成年が実際に自転車事故を起こし...
自転車事故の慰謝料は自動車事故と同じ
自転車事故の慰謝料は自動車事故と同じで、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料があります。
自動車事故の慰謝料を説明したページをご覧になれば分かるように、免許を持っていなくても、子どもでも、多額の慰謝料を請求されるのです。
自転車の運転者は、自賠責保険もなければ任意保険もほぼなし
自転車の交通事故における損害賠償で問題になるのは、誰でも加害者になり得るということに加えて、ほとんどの運転者が保険に加入していないということがあります。
自転車には自賠責保険がない
自転車には被害者を救済する最低限の損害賠償金を支払う自賠責保険がありませんので、すべて加害者の負担となり、損害賠償金が多額になった場合は、被害者が請求しても支払い能力がない場合があるのです。
このようなケースを避けるため、自転車の運転者に保険加入を進める動きがありますが、自転車の走行ルールの徹底、安全意識の向上に加え、まだまだ普及はしていません。
自転車事故の示談交渉は難航する
自動車事故のように保険会社の担当員同士が示談交渉を行うことは極めて少なく、加害者と被害者が直接行う話し合いは、往々にして難航します。
自転車で事故を起こしてしまったら、あるいは被害者となってしまったら、いち早く交通事故に詳しい弁護士に相談し、示談交渉を代行してもらうのが得策でしょう。
過失割合はケースバイケース
自転車同士、あるいは自転車と歩行者の交通事故は、自動車の事故ほど類型化されたパターンが確立されていません。
公益財団法人 日弁連交通事故相談センターが発行する「交通事故損害額算定基準」という書籍や過去の判例が参考になりますが、正式には事故の状況に応じて交渉していき決定するという方法が現実的です。
加害者になってしまった場合でも、被害者となった時にも、弁護士などの専門家に相談し、適切な示談交渉を進められるようにアドバイスをもらいましょう。
自転車保険の加入、安全意識の向上が望まれる
以上のように、かつては被害者としての立場が強かった自転車ですが、近年は高額な賠償を伴う重大な事故が増加してきたことから、加害者としてもクローズアップされることが増えてきました。
そこで、個人で気軽に加入することができる自転車保険が増え、賠償責任補償や示談代行サービス、自身の怪我の補償、ロードサービスなど、内容も充実し選択肢も増えてきています。
また、自動車保険に入っている人ならば、自転車で事故を起こしてしまった場合の補償内容を確認し、自転車に乗る機会があるならばオプションを付けることを考えても良いでしょう。
損害賠償責任を負うことを考えてみよう
兵庫県は2015年に、全国で初めて自転車保険の加入を義務化し、大阪府、滋賀県も追随するなど、今後全国各地に自転車保険に対する意識が高まっていくことが考えられます。神奈川県大和市では、2016年11月から市内の小学生を対象に損害保険付きの自転車免許証の交付を始めます。
自転車の安全運転の意識向上はもちろんですが、日常的に、あるいは健康のためや趣味で自転車に乗る人は、自分が事故を起こした場合に損害賠償責任を果たせるのかどうか、いま一度考えてみて対策を行う時期ではないでしょうか。
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