「過失割合」など、交通事故損害賠償の参考となる本がある

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交通事故の損害賠償請求については、本来ならば当事者同士が話し合い、お互いに納得する金額で示談成立を迎えるべきもの。しかしお金で解決するものという観点から、その基準となるものがないと、なかなか示談は進まない。その参考とされる3冊の本を紹介します。

「過失割合」を決める「別冊判例タイムズ」と、損害賠償額の基準となる「赤い本」「青本」とは?

交通事故の示談交渉は、本来ならば事故の当事者同士が納得いくまで話し合い、お互いに妥当だと思われる金額や支払い方法で示談の内容を決め、成立させるべきものです。

しかし、治療費などの実費を除き、慰謝料や逸失利益を決める際には、被害者が負った傷の大きさはお金に換算することはできませんし、事故によって失われてしまった将来得るべき所得についても、算出方法については個人個人で違うものになり、それで損害賠償金を支払う立場の加害者や保険会社を納得させるにはかなりの時間を要することでしょう。

難しい交渉を円滑に進めるため、参考とされる本がある

「過失割合」を決める時も同様に、どちらが悪いのか、何が原因で事故が起きたのかを、まったく同じ事故はないと言われる、事故の状況だけを判断材料にして決めるのは困難が予想されます。

長期間にわたって示談交渉が続いてしまうことは、被害者と加害者にとってお互いに不利益であり、払う側と受け取る側と立場は逆でも、早期に決着をつけたいという意向は同じでしょう。

そこで、交通事故の損害賠償においては支払いの基準となるものさしを示した本があり、「過失割合」については、この状況なら「〇〇対〇〇」という判例を示した本があります。

本項では、これら交通事故の損害賠償における参考図書とも言える本を紹介します。

「過失割合」決定の基準となる「別冊判例タイムズ」

交通事故の「過失割合」とは、その交通事故を起こした当事者間の責任の割合で、80:20、90:10といった数値で表されます。ほとんどの場合にはこの過失の比率が高い方が加害者と呼ばれ、被害者が負うべき責任の比率を相殺した金額で、損害賠償が行われるのが通例です。

加害者と被害者にどの位の割合で事故の責任があるかという問題は、示談交渉において重要な事柄ですが、被害者となってしまった場合は、この比率を一方的に伝えられるのみ、というのが現状です。

「過失割合」を決めるのは保険会社

この「過失割合」を決めるのは、交通事故直後に現場の実況見分を行い、当事者に事情を聞き供述調書を作成する警察ではなくて、当事者が加入している保険会社です。

保険会社は、実況見分調書や供述調書を元に作成される交通事故証明書をもとに「過失割合」を決めますから、警察が間接的に関与をしていると言えないこともありませんが、警察には民事不介入という大原則がありますので、割合の決定には一切かかわっていません。

あくまでも「過失割合」を決定しているのは、保険会社なのです。しかし保険会社が勝手に「過失割合」を決めているわけではなく、基準としているとされる本があります。

それは、「別冊判例タイムズ」です。

「過失割合」の基準を示す本「別冊判例タイムズ」

保険会社が「過失割合」を算定するための基準としている本は、判例タイムズ社が発行している「別冊判例タイムズ 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」です。

判例タイムズ社とは、実務家向けの法律専門書を出している出版社で、「判例タイムズ」は創刊が1948年と長い歴史を持つ月刊誌で、判例実務誌として交通事故に限らずさまざまな判例が掲載されています。

そして「別冊判例タイムズ」は、不定期に「後見の実務」「大阪地方裁判所における競売不動産評価運用基準」といったテーマごとに発行されているものです。

交通事故に関するものとして上記の「民事交通訴訟における過失相殺の認定基準」が発行されていて、最新版は別冊判例タイムズ38号[全訂5版]という、2014年7月4日に出版されたものが最新版となっています(2016年11月現在)

保険会社も「過失割合」決定の参考としている本

「別冊判例タイムズ 民事交通訴訟における過失相殺の認定基準」には、裁判での判例をもとに交通事故の様々なパターンを例に示し、事故当事者の「過失割合」それぞれのケースについて類型化して示しています。

この本は、保険会社の示談交渉担当が示談の際に「過失割合」を示す基準として用いられています。

もちろん、判例を元に「過失割合」が示されているわけですから、加害者側との示談交渉で「過失割合」で折り合いがつかず交渉が長期化し、調停や裁判になってしまった場合にも、示される「過失割合」は本書に掲載されるものが基準となると考えられます。

但し、掲載されているのは判例で、事故パターンは類型化されたものですから、まったく同じ事故が掲載されているわけではありません。

そして、運転者も自動車も状況も違うわけですから、状況が似ている判例を探して「過失割合」を決めるということになるでしょう。

「別冊判例タイムズ」を読むべきか?

交渉相手の保険会社担当員が伝えてきた「過失割合」が妥当かどうか、自分で調べるために、一度は目を通しておいた方がいいかもしれません。但し、本としては高価ですし、記載されている内容は実務家向けであるため、一般の方に積極的に購入をお薦めできるものではありません。

図書館に置いてある場合もありますが、所蔵している館は少ないようです。購入して自分で勉強したいという方は、普通に書店に注文をするか、オンライン書店でも購入することが可能です。

損害賠償額算定の基準となる「青本」と「赤い本」

交通事故の損害賠償に関わる本は、上記の「別冊判例タイムズ」の他に、通称「青本」と呼ばれる「交通事故損害額算定基準」と、通称「赤い本」と呼ばれる「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」という2冊の有名な本がありますので、ここで一緒に紹介します。

両方とも、交通事故の損害賠償に関わる専門家必携の本となっています。

損害賠償金額の基準を記している「青本」

「青本」の正式名称は「交通事故損害額算定基準-実務運用と解説-」で、隔年で改訂版が発行されています。編集・発行者は公益財団法人 日弁連交通事故相談センターで、2016年11月現在の最新版は、2016年2月に発行された25訂版です。

本書には、交通事故による損害額の算定基準が細かく解説されており、全国の参考となる裁判例も掲載されています。弁護士(裁判)基準の損害賠償額を調べるためには最も適した本とも言えます。

また、最新版の25訂版には高次脳機能障害の特集も掲載されています。

「青本」は一般書店では販売していませんので、東京都千代田区にある日弁連交通事故相談センター(弁護士会館14階の本部窓口)で直接購入するか、同本部へFAXで注文することで入手が可能です。

損害賠償金額の算定方法を解説する「赤い本」

「赤い本」の正式名称は「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」で、毎年2月に改訂版が発行されています。編集・発行所は公益財団法人 日弁連交通事故相談センター東京支部で、最新版は2016年版(第45版)です。

本書は、東京地裁の実務に基づいた賠償額の基準が示されており、判例も多く掲載されています。

2016年版は上巻と下巻に分かれており、上巻は基準編、下巻は講演録編(最近の東京地裁民事交通訴訟の実情、など)となっています。

「赤い本」は一般書店では販売していませんので、東京都千代田区にある日弁連交通事故相談センター東京支部(弁護士会館3階の窓口)で直接購入するか、FAXで注文することで入手が可能です。

自分で勉強するための参考に。でも実際の交渉は弁護士に相談を

これらの本を参照することで、弁護士(裁判)基準の損害賠償額の計算方法がわかります。

保険会社が示談交渉で提示してきた損害賠償額が妥当なのかどうか、調べる際に有用な本になります。

しかし、弁護士必携の本とも謳われているほどの内容なので、一般人にはどう活用して良いのか分からない部分もあります。

あくまでも勉強や参考程度にとどめておき、示談交渉で不明な点があれば、弁護士などの専門家に相談するのがベストです。

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