自動車対自動車【3】~交差点、追突以外の自動車事故における過失割合~

交差点

過失割合はどのように決定される?

さまざまなケースについて、過去の判例を元にした「過失割合」が定められている

交通事故は、さまざまな場所で、多くのシチュエーションで発生します。

「平成26年中の交通事故の発生状況」(警察庁交通局)によると、最も交通事故が起こりやすい場所は交差点内で事故件数の39.5%、交差点付近では14.2%が発生しています。一方、単路では一般単路で38.0%、カーブ・屈折で3.0%、トンネルでは0.3%、橋では0.8%となっています。

自動車同士の交通事故をシチュエーション別で見ると、追突が36.2%と最も多く、出会い頭衝突が24.5%、右折時衝突が8.1%、左折時衝突が4.5%、追い越し・追い抜き時衝突が1.6%、すれ違い時衝突が1.0%と続きます。

自動車対自動車【1】および【2】でも説明した通り、自動車同士の事故が最も起こりやすい場所は交差点で、シチュエーションは追突となっていますが、その他にも多くの形で事故が発生していることが分かります。

多くの類型が示されている「過失割合」

交通事故における当事者の責任の重さを示し、損害賠償交渉に大きな影響を与える「過失割合」は、判例タイムズなどに掲載されている過去の判例を元に、保険会社が決めるものですが、これら多くの発生場所やシチュエーションにおいて類型化が行われています。

また、事故の類型だけではなく、事故当事者の状況による修正要素も定められていて、まさに形通りにはいかないもので、保険会社が提示する「過失割合」が納得いかないと示談交渉が紛糾し長期化する原因ともなります。

それでは、具体的な例を挙げてみて、実際にどのような要素が加味され「過失割合」が決められているのか見てみましょう。

信号機のない交差点における事故の「過失割合」は?

交差点で起きる交通事故の場合、信号機があればそれを無視して走行した自動車の方が、道路交通法に違反しているため、圧倒的に「過失割合」が高くなるのは明白です。

信号のない交差点ではどうでしょう?

例えば信号機のない交差点で、左折しようとした自動車Aが、直進してきた自動車Bと衝突した場合について考えてみましょう。

道路交通法第36条によると、交通整理の行われていない交差点においては左側優先とされています。

しかし道路幅が同じ交差点で、なおかつ見通しの悪い交差点であれば、お互いに徐行または左右の状況を確認する必要がありますので、どちらも相手に譲らず起きた事故での「過失割合」は(A)50:50(B)になります。

一方で、この道路幅が同じで、見通しの良い交差点では、左側優先を守らなかった自動車Bに10%、なおかつ減速もしていなければさらに10%加算されることになります。

優先道路の概念も加味される

そして、信号機のない交差点で、一方の道路がより広い道路(広路)で、一方がより狭い道路(狭路)の場合は、広路の方が優先道路となります。

上記の事故と同じく、信号機のない交差点で、狭路から交差点に進入し左折しようとした自動車Aが、広路を直進してきた自動車Bと衝突した場合では、広路の方が優先道路となりますから、自動車Bの方が優先されなければならない状況です。

この場合は「過失割合」は(A)70:30(B)となり、広路を走っていた自動車の方の過失責任が低くなります。

しかし、左折してくる自動車Aを視認しながら、直進する自動車Bが減速しなかった場合は、自動車Bに10%が加算されます。

道路交通法第42条に規定されているように、優先道路を走行している場合は徐行の義務はありませんが、同第36条には、交差点に入ろうとし通行する時には「できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない」と定められているためです。

以上のように、「過失割合」はさまざまな要素によって変動します。

対向車との衝突事故の場合の「過失割合」は?

対向車と衝突事故が起こった場合、センターラインがある道路では、明らかにセンターラインをオーバーしていた自動車の過失責任が高いことは明らかです。

自動車Aが直進していて、自動車Bがセンターラインを越えて走行してきたために衝突した場合、原則として「過失割合」は(A)0:100(B)となります。

前を走っている自動車を追い越そうとしてセンターラインを越えることがありますが、見通しの悪い状態で追い越しをかけるのは道路交通法違反の非常に危険な行為であるため、一方的にセンターラインを越えた自動車の責任とされるのが当然と考えられます。

しかしこのケースでも、直進していた自動車Aの過失割合が必ず0になるわけではありません。

回避行動の有無も重要となる

交通事故を起こさないための減速や回避行動を全く行わなかった場合、対向車の動向をよく注意していなかったとされ、前方不注意で過失責任が問われる場合があります。

直進する自動車Aが著しい過失を犯していた場合は10%、重過失を犯していた場合は20%が加算されてしまうのです。

またセンターラインを越えてきた車両が、サイレンを鳴らした救急車やパトカーなどの緊急車両だった場合には、まったく逆の判断が行われています。

緊急車両は道路交通法第39条で必要であればセンターラインを越えても良いと定められており、同第40条では一般車両は進路を譲らなければならないことが規定されています。

この場合の「過失割合」は、(一般車両)100:0(緊急車両)とした判例があります。

路外と道路を出入りする時に起きた事故の「過失割合」は?

自動車は道路を走るだけではなく、自宅の駐車場はもちろんのこと、通勤先やレストラン、あるいはショッピングセンターなど目的地の駐車場へ出入りすることがあります。

そのような路外に車を進入させる時、または路外から道路へ車を乗り入れるタイミングで事故が起きることもよくあります。

この場合の「過失割合」はどうなるのでしょうか?

道路外へ入出する側の過失が大きい

このようなケースの「過失割合」は、道路から路外へ、もしくは路外から道路へ進入しようとする自動車の方の過失責任が重くなります。

自動車Aが直進して走行していて、対向して走行してきた自動車Bが道路から右折して路外に出ようとして起こった事故の「過失割合」は、原則的に(自動車A)10:90(自動車B)となります。

一方、自動車Aが直進して走行していて、自動車Bが路外から道路に進入する時に起きた事故では、原則的に(自動車A)20:80(自動車B)となります。

路外から道路に出る場合、一般的には右折して出る方が、左折して出るよりも技術的に難しいのですが、「過失割合」は右折でも左折でも割合は変わりません。

但し他の事故と同様に、以上の「過失割合」は基本的なもので、双方の過失が修正要素として加減されます。

道路から左折して路外に出る場合は対向車と衝突することはありませんので、この場合は特に「過失割合」は設定されていません。

追突事故の場合は追突事故の「過失割合」が適用されます。

「過失割合」は判例を元にした基準

「過失割合」は、あくまでも過去の判例を基準とし、保険会社が決めるもの

交通事故の当事者となってしまった場合、保険会社が提示した「過失割合」が正当かどうか確かめようとすると、自身の事故によく似たケースの判例を当てはめてみて確認することになりますが、実際の事故と場所や状況が完全に一致しているわけではありません。

運転者の技量も違えば、天候や道路状況がまったく同じ事故はあり得ないのです。

交通事故に巻き込まれてしまい、保険会社の示す「過失割合」に納得がいかない場合には、弁護士などの交通事故の専門家に相談し、本当に妥当な割合なのかどうかを確認することをお薦めします

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