交通事故の示談とは?交渉の流れと注意点について解説

交通事故被害に遭った際、その損害賠償は相手との示談交渉で決めていきます。この示談交渉を弁護士に依頼することには、さまざまなメリットがあります。
弁護士・裁判基準で計算してくれるので賠償金の金額が上がりますし、過失割合が減るので請求金額を減らされずに済みます。
精神的にも楽になって、治療に専念できます。弁護士費用を支払っても十分に利益があるので、示談交渉するときには交通事故問題に強い弁護士に依頼しましょう。

交通事故の示談とは

示談交渉とは、相手に対して損害賠償請求をするための話し合いのことを指します。

交通事故に遭うと、被害者には多くの損害が発生します。
車が毀れたら修理費用や買い換え費用がかかりますし、怪我をしたら入院通院の治療費や入院雑費、看護費用や通院交通費などもかかり、入通院慰謝料も発生します。
後遺障害が残れば後遺障害慰謝料や逸失利益も発生しますし、死亡したら死亡慰謝料や逸失利益が発生します。

交通事故の示談とは「損害賠償請求をするための話し合い」

このような損害を相手に賠償請求する方法として、通常は相手との話し合いで決定します。
損害賠償金の話し合いをすることを、示談と言います。

そして、「示談交渉」というと、一般的には交通事故の損害賠償請求をするときに、相手方の保険会社と話しあうことを指すのが通常です。

示談金、損害賠償金、慰謝料の違い

お金

次に、示談金や損害賠償金、慰謝料の違いについても確認しておきましょう。これらについては、一般的にごちゃごちゃに理解されていることが多いです。示談金は損害賠償金ではないと言われたり、示談金=慰謝料であるなどと言われたりすることもあります。しかし、そのような一般的な理解は、たいてい間違っています。

示談金=賠償金

まず、示談金は損害賠償金です。示談は話合いによって損害賠償を行う方法です。そして、話合いによってまとまった賠償金のことを示談金と言います。そこで、示談金は損害賠償金になるのです。

損害賠償金は、必ずしも示談金ではありません

たとえば、調停や裁判によって賠償金を決定することも多いですが、このような手続きによって賠償金額を定めた場合には、示談金とは言わないからです。示談金とは、示談によって決定された賠償金のことであり、賠償金=示談金とまでは言いにくいです。ただ、示談によって賠償金を決定したときには、示談金=賠償金です。

慰謝料<賠償金、示談金

次に、示談金と慰謝料の関係を見てみましょう。一般的に、示談金=慰謝料であると理解されていることがあります。しかし、これは間違っています。交通事故によって発生する損害には、いろいろなものがあります。

先ほども例に挙げたように、物損被害部分もありますし、治療費や通院交通費などの実費や休業損害、逸失利益などもあります。このような損害は、慰謝料ではありません。これにたいし、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3つは慰謝料です。

交通事故の損害には慰謝料とそれ以外のものがある

このように、交通事故が起こった場合の損害には、慰謝料とそれ以外のものがあります。そして、示談をするときには、慰謝料もそれ以外の損害も、すべてまとめて交渉して決定します。

よって、示談金には、慰謝料もそれ以外の損害賠償部分も含まれているのです。つまり、示談金は慰謝料よりも広い概念です。慰謝料は、示談金の一部に過ぎません。そのような意味では、慰謝料<示談金と言えます。示談によって損害賠償を決定するときには、慰謝料<損害賠償金(賠償金)です。

たとえば、示談金を増額しようというとき、慰謝料を増額することばかりが言われますが、実はそれ以外の逸失利益の方が金額が大きくなることなどもあります。以上のように、慰謝料と示談金と賠償金については、正しく理解していると交通事故の問題が把握しやすくなるので、これを機会に押さえておくと良いでしょう。

自動車事故の発生から示談までの流れ

それでは、自動車事故が発生してから示談まで、どのような流れになるのでしょうか?
人身事故で負傷し、後遺障害が残った場合の事故発生から示談までのおおまかな流れを一覧にすると以下のようになります。

  1. 交通事故の初期対応を行う
  2. 病院を受診し、治療を進める
  3. 完治または症状固定の診断を受け、通院終了
  4. 後遺障害等級認定の申請~認定を受ける
  5. 示談交渉の開始
  6. 示談成立・示談書の作成

自動車事故が発生した場合、

  • 被害者を救護する
  • 警察を呼び実況見分を行う
  • 相手と連絡先を交わす

など、まず交通事故の初期対応を行います。

物損事故の場合

物損事故なら、その後、車の修理費用など見積もり依頼を出して、損害内容が決定したら、その時点で示談ができます。

ごく軽い事故で、大きな怪我もない場合は比較的早く示談交渉を開始することもあります。

人身事故の場合

人身事故の場合、まず病院への入通院を開始します。怪我の治療が終了するまでは示談を開始しません。

症状固定して怪我の治療が終わったら、相手の保険会社と示談交渉を開始します。

このとき、相手が任意保険に加入していなかった場合、相手本人と示談交渉することになります。示談交渉で話し合う中で、損害の内容と金額を決めていきます。

最終的に、損害の内容と金額についてお互いが合意出来ると、その内容で示談が成立、示談の合意内容に基づく示談書が作成されます。

示談書が作成された後は、10日~2週間程度で相手の保険会社から示談金が振り込まれます。
保険会社の約款では、保険金の支払いは「保険金の請求から30日以内」とされているのが一般的ですが、実際には30日を待たずに、早めで振り込まれるのが通常です。

示談交渉の注意点

以下では、相手と示談交渉を進めるときの注意点をご紹介します。

示談交渉を開始するタイミング

交通事故では、示談交渉をいつ開始するかがよく問題になります。示談交渉を開始するタイミングは、交通事故の種類によって大きく異なります。それは、交通事故の種類によって、損害の内容が確定する時期が異なるからです。交通事故には、物損事故人身傷害事故人身死亡事故の3種類があるので、以下でそれぞれについて見てみましょう。

物損事故

物損事故とは、けが人が発生しない交通事故のことです。自動車が壊れた場合であっても、人が怪我をしたり死亡したりすると人身事故になります。物損事故の場合には、示談交渉は比較的すぐに開始出来ます。それは、物損事故の被害内容は確定することが簡単だからです。

物損事故の場合の損害は、自動車の修理費用や買い換え費用、破れた衣服の代金、壊れた自転車の費用、ガードレールや壁、電柱や店舗などの修理費用などであり、比較的すぐに見積もりをとって計算できます。そこで、これらの計算が終わったらすぐに全額を確定できます。損害内容が確定したら、すぐに示談交渉を開始して、話合いが成立したら示談金の支払いを受けられます。

人身傷害事故

次に、人身傷害事故のケースを見てみましょう。人身傷害事故とは、人身事故の中でも被害者が怪我をした事案です。これは、被害者が死亡しなかったという意味合いであり、人身傷害事故の傷害内容は、事故によってかなり大きな差があります。

たとえば、ちょっと腕を強く打って全治1週間でも一応人身事故ですし、重度の後遺障害が残って寝たきりになっても、やはり人身傷害事故です。人身傷害事故での示談交渉開始のタイミングは、交通事故の示談交渉においてよく問題になります。

それは、交通事故後通院が長引くケースです。この場合、治療を終えるまで示談交渉を開始出来ないのかが問題となります。交通事故で怪我をした場合、1ヶ月や3ヶ月などで怪我の治療が終わるケースもありますが、そうではなく1年や2年がかかることもあります。怪我の治療が終わるまで、示談交渉を開始することはできないのでしょうか?

怪我の治療が終了するまで示談交渉は開始出来ません

人身傷害事故の損害内容は、怪我の治療が終了するまで確定しないからです。このように、怪我の治療が終了する時点のことを、怪我の完治または症状固定時と言います。完治とは、怪我が完全に治ったことであり、症状固定とは、怪我の状態がそれ以上治療しても良くならない状態のことです。

症状固定の時に残っている症状が「後遺障害」

後遺障害との関係で言うと、症状固定時に残っている症状が後遺障害になる、ということになります。そして、人身傷害事故の損害については、たとえば治療費や通院交通費、入院雑費などの病院関係の費用は完治または症状固定時までの分が支払われます。

また入通院慰謝料は、入通院日数によって金額が変わりますが、その計算の基礎となる入通院日数はやはり完治または症状固定時までです。

また、後遺障害は、症状固定時に残っている症状なので、症状固定しないと後遺障害の内容を確定することができません。後遺障害の内容が確定しないと、後遺障害慰謝料や逸失利益の計算もできないので、やはり損害賠償金額の計算ができないのです。

以上のように、人身傷害事故では、怪我の治療が終了して完治するか症状固定するかしないと、損害賠償金を全く確定することができません。そこで、人身傷害事故の示談交渉開始時は、怪我の治療が終わったタイミングとなります。

怪我の治療が終わり、相手との示談交渉が開始したら、その後相手と話し合いを継続します。お互いに合意ができたら、その内容で示談書が作成されて、相手から速やかに示談金の支払いを受けることができます。

人身死亡事故

次に、人身死亡事故のケースを見てみましょう。人身死亡事故とは、被害者が死亡した交通事故のことです。事故後しばらく生きて治療をしていたけれども、結局死亡してしまったケースも人身死亡事故となります。人身死亡事故の場合には、比較的損害内容を決定しやすいです。

死亡事故で相手に請求できる賠償金は、基本的には死亡慰謝料と逸失利益と葬儀費用です。ただ、死亡前に生きていた期間があり、治療をしていたケースなどでは、その治療費や入通院慰謝料、休業損害なども請求できます。

死亡事故の場合は、49日の法要が終わったくらいのタイミングで、示談交渉へ

死亡事故の場合、死亡前に治療していた期間にもよりますが、だいたい葬儀が済んでその計算が終わったら、すべての損害内容が明らかになります。そこで、だいたい49日の法要が終わったくらいのタイミングで、示談交渉を開始します。

死亡事件の場合に示談交渉をするのは、被害者の遺族

死亡してしまうと、被害者自身が示談交渉することができないのは当然ですが、損害賠償請求権は相続の対象になるので、被害者の死亡と同時に損害賠償請求権が遺族に相続されるからです。たとえば、被害者に妻と子どもがいたら、妻と子どもが相手の保険会社と示談交渉をしますし、子どもがいない場合には、妻と親が示談交渉をします。

子どもも親もいなかったら、兄弟姉妹が相続人となるので、妻と兄弟姉妹が相手の保険会社と示談交渉をします。

遺族と保険会社との間で示談の内容について協議が整ったら、示談書を作成します。損害賠償金が支払われたら、基本的には遺族が法定相続分に応じて分配することになりますが、話合いによって取得割合を変更することも可能です。

相手に保険会社がついていないケース

困る

お互いに素人で、どのように示談を進めて良いかわからない

交通事故の示談交渉で注意しなければならないケースがあります。それは、相手に保険会社がついていないケースです。相手が任意保険会社に加入していたら、相手の保険会社が示談交渉を代行するので、相手本人とやり取りする必要はありません。

交通事故の相手が任意保険未加入

しかし、相手が任意保険に加入していない場合には、相手の保険会社が示談交渉をしてくれないので、相手と直接示談交渉をしないといけません。すると、被害者も加害者もお互いが素人で、どのようにして話を進めたら良いのかがわからず、示談交渉がスムーズに進まなくなることが多いです。

そもそも交通事故でどのような損害の項目があるのかがわかりませんし、それぞれの損害について、どのように計算すべきかもわかりません。慰謝料1つとっても、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3種類がありますし、その計算方法も、自賠責基準、任意保険基準、弁護士・裁判基準の3種類があって非常に複雑です。お互いの過失割合もどのようにして決定したら良いかわからないので、トラブルになってしまうおそれが高くなります。

相手が対応してくれないことも!

また、相手が本人の場合、きちんと示談交渉に対応してくれる人ばかりとは限りません。もともと任意保険にも加入していないくらいですから、交通事故を軽く考えている人である可能性が高いです。そうなると、示談交渉を持ちかけても無視されてしまうおそれもあり、示談交渉をすすめるのも難しくなります。

相手が無資力の場合には、支払いを受けられない!

さらに、相手が無保険の場合、相手の資力の問題もあります。交通事故が起こったら、事案によっては数千万円や1億円を超える損害が発生することもあります。相手に保険会社がついていたら、限度額までは間違いなく賠償金の支払を受けることができますが、相手が個人の場合、そういうわけにはいきません。

5000万円の損害が発生したとしても、「払えない」と言われることが多いでしょうし、裁判をして取り立てようとしても、自己破産されてしまったらそれ以上取り立ての方法がなくなります。

示談書を無視されることも!

相手が無保険の場合には、示談書を作成しても必ずしも支払いを受けられるわけではないことにも注意が必要です。

相手に保険会社がついていたら、示談書を作成したら、速やかに示談金が支払われます。1週間程度で振り込まれることも多く、1ヶ月以上かかることは少ないです。
これに対し、相手が無保険の場合には、約束しても払われない可能性があります。1ヶ月後に支払うと言っていても約束を果たさずに逃げてしまうおそれがありますし、分割払いの約束にした場合には、途中で支払われなくなるリスクも高いです。
支払っている途中で自己破産をされて、残りを回収できなくなるおそれもあります。

このように、相手が任意保険に加入していない場合には、たくさんの問題点やリスクがあるので、覚えておきましょう。

示談書作成の際の注意点

次に、示談書を作成する際の注意点をご紹介します。示談が成立したら、示談書を作成します。示談書では、交通事故の表示と損害賠償金の表示が重要です。

交通事故の内容が正しく表示されているか

まず、交通事故の内容が正確に表示されているかどうかをチェックしましょう。
事故の表示が間違っていたら、その交通事故についての問題が解決されたことにならないからです。
事故発生日や事故が起こった場所、事故の当事者(被害者と加害者)、車のナンバーなど、きちんと確かめましょう。
交通事故証明書の内容と照らし合わせながらチェックすると良いです。

損害賠償金の金額も重要

きちんと事前に話しあったとおりになっているかどうか、確認しましょう。

何度もやり取りがあったケースなどでは、以前話に出ていた低い金額がそのまま書かれていることもありますし、根本的に間違った数字が書かれていることもあります。

賠償金の金額が間違っている示談書に署名押印してしまったら、その内容が有効になってしまうおそれもあるので、十分注意しましょう。
金額の根拠がわからない場合には、相手の保険会社に問合せをして、完全に納得してから署名押印しましょう。

また、振込先の口座は、間違いのないように記入しましょう。
相手に保険会社がついている場合、示談ができたら確実に支払をしてもらえますが、振込先の口座を間違って記載すると、いつまで経っても支払いを受けることができません。
後で気づいてトラブルになるおそれもあるので、十分注意しましょう。

支払期日についても確認が必要

示談書返送後何日以内に振り込まれるのか、また何月何日までに振り込まれるのかなどを確認して、当日までにきちんと入金があるのかチェックする必要があるからです。

これらの内容を確認して、問題がなければ署名押印して相手に示談書を返送しましょう。

治療中に相手が示談交渉したいと言ってきたら?

治療費

保険会社が、「治療は終わり」と言ってくる

示談交渉でよく起こるトラブルとして、相手の保険会社が、被害者の治療中に示談交渉をしたいと言ってくるパターンがあります。このようなとき、保険会社は「そろそろ治療は終わり」と言ってきたり「これ以上の治療は必要ないから治療費はこれ以上支払えない」などと言って治療費支払いを打ち切ってきたりします。

すると、被害者は困ってしまって、仕方ないか、と思って治療を辞めて示談交渉してしまうことがあります。しかし、このような対処方法は間違いです。

治療を打ち切ると、賠償金の請求ができなくなる!

先にも説明したように、交通事故の人身傷害事故の場合には、怪我の治療が完了するまで損害内容が明らかになりません。治療は症状固定まで継続する必要があります。症状固定前に示談をしてしまったら、示談した時点までの治療費しか支払われませんし、その時点までの入通院慰謝料しか計算されないので、慰謝料も安くなってしまいます。

しかも、症状固定しないと後遺障害の内容が明らかにならないので、症状固定前に示談してしまうと、後遺障害の等級認定も受けられず、後遺障害慰謝料や逸失利益も請求出来なくなるおそれが高くなります。このように、治療が終わる前に示談をしてしまうと、必要な治療費の支払いも受けられなくなる上、慰謝料などの賠償金の金額が大幅に減ってしまうので、注意が必要です。

中途半端に治療を辞めるのはNG

相手が「そろそろ治療は終わり」などと言って示談交渉を進めようとしてくるのは、相手が支払う金額を少なくしたいためです。症状固定前に示談をすると、相手は治療費も安く済みますし、慰謝料などの支払いも少なくなるので負担が非常に軽くなります。

このような相手の都合に合わせる必要はないので、治療中に相手が示談交渉をしたいと言ってきても、受け入れずに最後まで通院を継続することが大切です。完治または症状固定したかどうかについては、担当医に判断してもらいましょう。

治療費を打ち切られたら健康保険を使って通院しよう!

なお、こちらが示談交渉に応じず治療を継続しようとすると、相手は治療費の支払いを打ち切ってくることがあります。このような場合、10割負担になってしまうと非常に負担が重くなりますので、健康保険に切り替えて通院を継続しましょう。交通事故の通院でも、健康保険を使うことはできるからです。病院によっては健康保険の利用によい顔をしないところもありますが、その場合には、交渉をするか、病院を変えると良いでしょう。

相手が示談金を提示してきた場合の対処方法

次に、相手が示談金を提示してきた場合の対処方法をご紹介します。示談交渉を進めていると、相手から示談金の提示を受けるタイミングがあります。このとき、提案を受け入れて良いか、迷うことが多いです。実際、相手が提案してくる示談金の金額は、かなり低いことがよくあります。

交通事故の賠償金には、自賠責基準と任意保険基準、弁護士・裁判基準の3種類があり、弁護士・裁判基準が最も高額になります。ところが、任意保険会社は、低額な自賠責保険基準か任意保険基準によって賠償金を計算するため、相手から提示される示談金の金額が相場より低くなるのです。

示談金の提示があったら、弁護士に相談を

そこで、相手から示談金の提示があったら、すぐに受け入れるのではなく弁護士に相談しましょう。弁護士であれば、弁護士・裁判基準による示談金の相場がわかるので、事案に応じた適切な賠償金の金額を提示してくれます。その金額と相手の提示してきた金額に差があるなら、相手の提案を受け入れずにこちらから再提案すべきです。このように対処すると、示談交渉で不当に低い金額を受け入れることになって不利益を受けることを防止出来ます。

保険会社との示談交渉は自分でできる?

それでは、相手の保険会社との示談交渉を被害者自身が自分ですすめることは出来るのでしょうか?この点、できるかできないかという話をするなら、被害者が自分で示談交渉をすること自体はできます。ただ、その場合、いくつものリスクがあります。

適切な示談金の相場がわからない

まず、被害者は適切な示談金の相場がわかりません。そこで、相手の保険会社から不当に低い示談金の提示があっても、その問題に気づかずに示談してしまう可能性があります。
そうなると、本来請求できるはずの示談金を請求できなくなり、被害者は大きな不利益を受けます。

手間がかかり、スムーズにすすめられない

また、被害者が自分で示談交渉をすると、手間がかかる上にスムーズに手続きが進みません。示談交渉を進めるためにはいろいろと知識も必要ですし、集めないといけない書類などもあります。相手との対応も必要ですし、こちらで案を検討することなどもあるでしょう。このような1つ1つの手続きは、被害者にとって大きな手間になりますし、慣れない手続きなのでスムーズにすすめることができないのです。

ストレスがかかって治療に専念できない

さらに、示談交渉は、被害者にとって大きなストレス原因になります。交通事故の被害者は、ただでさえ事故前とは生活が一変してストレスを抱えていることが多いですが、ここに相手との示談交渉というストレス原因が加わると、限界を超えてしまうこともあります。交通事故後、うつ病にかかってしまう人なども多いので、注意が必要です。

以上のように、示談交渉を自分ですること自体は可能ですが、実際にはリスクが高いので、あまりおすすめではありません。ある一定以上の程度の事故ならば、弁護士に依頼した方が良いでしょう。

交通事故の示談交渉を弁護士に依頼するメリット

弁護士

それでは、交通事故の示談交渉を弁護士に依頼すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?

示談金が大幅にアップする

まず、弁護士に依頼すると、示談金の金額が大幅に上がることが多いです。被害者が自分で示談交渉をするとき、相手の保険会社は、低額な自賠責基準や任意保険基準によって賠償金を計算します。これに対し、弁護士が示談交渉をするときには、当然に高額な弁護士・裁判基準によって賠償金を計算します。弁護士・裁判基準で計算をすると、慰謝料が2倍、3倍になることも珍しくありません。

過失割合が適正になる

また、弁護士が示談交渉をするときには、過失割合が適正になります。せっかく高額な慰謝料が認められても、過失割合が大きくなると、過失相殺によって受け取れる賠償金の金額が大きく下がってしまいます。被害者が自分で相手と示談交渉をしていると、相手の保険会社は被害者の無知につけ込んで、不当に大きな過失割合を割り当ててくるので、示談金の金額が減らされてしまうのです。

ここで、弁護士に示談交渉を依頼すると、適切な過失割合の認定基準を使って計算してくれるので、被害者の過失割合が小さくなって示談金がアップします。

示談がスムーズかつ有利に進む

さらに、弁護士に示談交渉を依頼すると、手続きがスムーズですし、示談を有利に進めることが出来ます。弁護士は示談交渉になれているので、相手とのやり取りをスムーズに進めることが出来て示談にかかる期間も短縮できますし、被害者自身は何の対応もしなくて良くなるので、大きく手間が省けます。さらに、弁護士はプロとしての力量があるので、示談を有利にすすめることができて、結果的に被害者にとって良い内容の示談が成立する可能性が高くなります。

弁護士に示談交渉を任せると、被害者は面倒な示談交渉から解放されてストレスがなくなりますし、その分治療に専念することもできて、治療効果も上がりやすくなります。以上のように、示談交渉は弁護士に依頼するとメリットが非常に大きいので、交通事故に遭ったら、まずは弁護士に対応を依頼すべきです。

弁護士に示談交渉を依頼すべきタイミングは?

弁護士に示談交渉を依頼するタイミングは、早ければ早いほど良いです。交通事故に遭ったら、事故当初の対応も重要ですし、その後の治療方法や通院先なども、後日の後遺障害認定などに影響してくるからです。初動を間違えると、後に思わぬ不利益を被ることもあります。そこで、交通事故に遭ったら、できるだけ早く弁護士に相談しましょう。

また、相手から示談金の提示があったときには、必ず弁護士に相談すべきです。被害者が自分で示談交渉していると、相手は低額な任意保険基準で示談金を計算しているので、金額が安くなっているからです。弁護士に相談して示談交渉を依頼したら、示談金の金額が2倍や3倍になることもあります。

交通事故の示談交渉、問題解決までにかかる期間はどのくらい?

物損事故のケース

それでは、交通事故の示談交渉や問題の解決までにかかる期間はどのくらいなのか、見てみましょう。まず、示談交渉を開始出来るまでのタイミングは、事故の種類によって異なります。物損事故のケースなら、すぐに示談交渉を開始出来るので、交通事故後2~3ヶ月で示談が成立することが多いです。

死亡事故のケース

死亡事故のケースでも、49日が終わったら速やかに示談交渉を開始出来るので、早めにお互いに合意ができた場合には、事故後半年以内に示談が成立します。

人身傷害事故のケース

これらに対し、人身傷害事故の場合には、怪我の治療が終了してからでないと示談交渉が開始出来ないので、事故後示談交渉を開始するまでの期間がかなりかかってしまうことがありますたとえば、事故後の治療に2年かかったら、2年後ようやく示談を開始出来ることになります。

示談交渉開始後示談が成立するまでの期間

示談交渉を開始した後、示談が成立するまでの期間は、事案によって異なります。争点がほとんどない事案なら1ヶ月もせずに示談が成立することもありますが、争点が多い事案では半年経っても示談が成立しないこともあります。ただ、概して言うと、3~4か月くらいで示談が成立することが多いでしょう。

調停にかかる期間

示談ではお互いが合意出来ない場合には、調停やADR、訴訟の手続きを利用する必要があります。調停とは、簡易裁判所で行う調停手続きのことであり、裁判所の調停委員会が間に入って相手との話合いを仲介してくれます。調停委員会から解決案を提示してもらえることも多く、このような方法でお互いが合意出来たら、調停が成立して、問題が解決されます。調停が成立したら、調停調書が作成されて、その後速やかに相手から示談金が振り込まれます。

調停は、月に1回くらいのペースで開かれることが多く、かかる期間はだいたい3~5ヶ月くらいでしょう。調停の場合には、当事者に結論を強制することがないので、お互いが納得しない限り調停は成立せず、事件が解決できないままになります。

ADRにかかる期間

ADRとは、裁判外の紛争解決手続きです。交通事故のADRにはいくつか種類がありますが、交通事故紛争処理センターのものと、日弁連の交通事故相談センターのものが有名で、解決実績も高いです。ADRを利用すると、ADRの担当弁護士が間に入って相手の保険会社との調整をしてくれます。このことを和解あっせんと言います。

和解のあっせん

和解のあっせんによってはお互いに合意ができない場合には、センターに審査をしてもらうことによって、解決方法を決めてもらうことができます。ただ、この審査決定には完全な拘束力はなく、被害者は受け入れずに裁判に訴えることができます。ADRも、必ずしも終局的な解決方法になるとは限らないので、覚えておきましょう。ADRで問題が解決するまでの期間も、だいたい3ヶ月程度です。

訴訟にかかる期間

訴訟とは、裁判所で行う損害賠償請求訴訟のことです。相手に対して、裁判を起こすと言うことです。裁判では、被害者と加害者が、お互いの主張を展開して証拠を提出します。これらの内容を見て、法的に正しいと考えられる方を採用して、裁判所が解決方法を決定します。

裁判では、だいたい月に1回くらい期日が開催されて、最終的に被害者や関係者の尋問が行われて、結審します。その後1~2ヶ月くらいで判決が下されます。裁判にかかる期間は、6ヶ月~10ヶ月くらいが標準的です。

裁判で有利になりたい場合には、法的に適切な方法で主張と立証をしなければならないので、素人の被害者が自分で取り組むには無理があります。訴訟を有利に進めて相手から賠償金の支払いを受けるためには、弁護士に対応を依頼することが必須です。

裁判所の決定に対しては、別の機関で審査してもらうことができないので、裁判をすると終局的に問題を解決することが可能です。

裁判途中に「裁判上の和解」で終結させるケースも

交通事故による民事裁判の場合、裁判の途中でも話し合いによる合意を行い「裁判上の和解」で問題を終結させるケースも少なくありません。

判決を待たずに和解するため、敗訴するリスクや、解決まで長期化することを回避できます。
一方、被害者・加害者双方が譲歩することになるため、訴訟で主張した請求額 満額は認められることはありません。

また、訴訟中に和解で解決する場合、裁判で決着をつける場合と異なり、弁護士費用を相手に請求することはできません。
弁護士費用を加害者側に負担させたい場合は、示談交渉の段階で弁護士費用の金額を考慮し、高めの損害賠償金額で和解を図ることになります。

示談交渉が難航した場合、お金はどうする?

交通事故の被害者になった場合、何かとお金が必要になることが多いです。そもそも以前のように働けなくなって収入が減少してしまうことも多いですが、それにもかかわらず治療費や雑費などの支払いが増えて支出が上がることも普通にあります。しかし、示談金が支払われるのは示談が成立してからになるので、被害者がお金に困っていても、早めに一部だけ受け取る、ということは基本的にできません。

自賠責の仮渡金を受け取る

このようなとき、相手の自賠責保険から仮渡金を受けとることができます。仮渡金とは、示談交渉の成立前に、相手の自賠責保険から損害賠償金の一部を受けとることができるものです。事故の程度に応じて受けとることができる金額が異なります。

死亡事故のケース

死亡者1人について、290万円

傷害事故のケース
40万円 脊柱の骨折で脊髄損傷が起こった場合
上腕や前腕の骨折で合併症がある場合
大腿や下腿の骨折の場合
内臓破裂により、腹膜炎が発生した場合
14日以上の入院が必要で、30日以上の治療が必要になる場合
20万円 脊柱の骨折の場合
上腕や前腕の骨折の場合
内臓破裂の場合
入院が必要で、30日以上の治療が必要になる場合
14日以上の入院が必要になる場合
5万円 11日以上の治療が必要な場合

このように、仮渡金を受けとった場合、後に相手に請求出来る賠償金の金額からは差し引かれますが、当面お金が必要なケースなどでは助かります。

仮渡金を受けとりたい場合には、相手の自賠責保険に対し、被害者請求をする必要があります。まずは、相手の自賠責保険に連絡をして、被害者請求用の用紙を取り寄せて、必要事項を記入し、身分証明書や印鑑登録証明書などの必要書類を揃えて提出しましょう。問題がなければ、指定した振込先に、仮渡金の入金が支払われます。

政府保障事業

また、相手が任意保険に加入していないことがあります。この場合、被害者は相手の自賠責保険から最低限の保険金の支払いを受けることができます。自賠責保険は強制加入の保険なので、通常は事故の相手が自賠責保険に加入しています。ところが、中には自賠責保険にも加入していない人がいます。

ひき逃げされて相手が不明の場合には、相手の自賠責保険に請求することができません

このような場合には、被害者はまったく1円も支払いを受けられないまま、泣き寝入りをしないといけないことになってしまいます。

そこで、国は、政府保障事業という救済制度をもうけています。政府保障事業とは、相手が自賠責保険に加入していなかったり相手の自賠責保険に請求出来ない事情があったりする場合に、最低限自賠責保険と同等の補償を受けることができる制度です。

政府保障事業を利用したい場合には、近くの損害保険会社に行って、窓口で申請をする形になります。その後調査が行われて、その結果に応じて補償金を受けとることができます。

政府保障事業で受けとることができるお金は、自賠責基準の金額になりますし、限度額も自賠責と同じです。そして、政府保障事業によって被害者に支払われたお金は、後に加害者に対して求償されることになります。被害者にとって、相手が自賠責保険にも加入していない場合に利用できる重要な救済制度なので、是非とも押さえておきましょう。

交通事故の示談交渉に強い弁護士を選ぶには?

お金

交通事故で示談故障を有利に進めたい場合には、交通事故の示談交渉に強い弁護士を選ぶことが重要です。弁護士にもいろいろな取り扱い分野があるため、すべての弁護士が交通事故問題を得意としているわけではないからです。たとえば、今までの交通事故事件の解決実績や依頼者の声、ホームページの内容などを参考にして、交通事故問題が得意そうな弁護士を探して相談すると良いでしょう。

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示談交渉でお悩みなら弁護士に相談を

当サイトを見ても疑問が解決しない、状況が異なるので判断が難しいと感じたら弁護士に相談することをおすすめします。
初回相談無料の弁護士も数多く掲載しておりますし、どの弁護士もいきなり料金が発生するということはありません。まずはお気軽にご相談ください。

交通事故の示談交渉を依頼する場合の弁護士費用については、下記のページも参考にしてください。

まとめ

交通事故の示談交渉は弁護士に相談を

以上のように、交通事故に遭ったら、示談交渉を弁護士に依頼する必要性が高いです。間違った対応をしないためにも、交通事故後の早い段階から弁護士によるアドバイスを受けておくべきです。そこで、交通事故に遭ったら、できるだけ早めに弁護士に相談をしましょう。

法律事務所の無料相談、弁護士費用特約も活用できる

弁護士に相談すると法律相談料がかかりますが、最近では多くの法律事務所が無料相談を受け付けています
このように交通事故の無料相談を実施している事務所は、交通事故問題に力を入れていることも多いので、料金もかからず頼りになるので、一石二鳥です。また、弁護士費用特約をつけている場合や家族が弁護士費用特約付きの自動車保険に加入している場合には、費用負担なしに交通事故問題を弁護士に依頼することもできます。弁護士費用特約を利用する場合でも、自分で気に入った弁護士を選ぶことができます。

今、交通事故の示談交渉でお悩みの方は、できるだけ早めに交通事故問題に強い弁護士を探して、無料相談などの申込をすることをおすすめします。

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交通事故の示談交渉は弁護士に相談を

当サイトを見ても疑問が解決しない、状況が異なるので判断が難しいと感じたら弁護士に相談することをおすすめします。
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また、公式Youtubeチャンネルではここまで解説した交通事故の示談交渉の流れと注意点について、図解を交えてわかりやすく解説した動画を公開しておりますので、あわせてご参照ください。

交通事故に強い【おすすめ】の弁護士に相談

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