交通事故に遭ってしまう前は、示談金や慰謝料という言葉はドラマの中の世界で聞くだけで、自分事として考えたことがない人がほとんどでしょう。交通事故を起こしてしまったら被害者に対してお金を支払う必要があり、その名目が示談金や慰謝料で、違いについて考えたことがない方が幸せなのかもしれません。
しかし交通事故、特に人身事故に遭ってしまった場合は、示談交渉の場で使われる示談金、慰謝料、損害賠償金の意味を明確に理解しておかなければ、話し合いの意味も正確に捉えることが難しい場面もあります。
不幸にも交通事故の当事者となってしまった時には、しっかりと計算根拠や方法を知り、示談交渉に臨みましょう。
目次
示談金に相場はあるのか?
交通事故後の損害賠償については、その90%が示談で解決するといわれています。
示談以外の解決方法は調停や裁判ですが、弁護士に依頼する被害者がほとんどだと思われますので、信頼の置ける専門家に任せておけば大丈夫でしょう。
示談金に相場はない!
法律的には和解の交渉となりますが、損害賠償の交渉に裁判所が介入しないケースは示談と呼ばれ、交渉をまとめるべく加害者が被害者に支払う賠償金の総額が示談金と一般的に呼ばれています。
この示談金には相場はありません。しかし、相場がないからといって、交通事故を起こした現場で加害者が「○○万円払うから、それで示談にしよう」と訴え、被害者がそれに応じてしまえば示談は成立した事になってしまいます。
安易な示談には応じない姿勢を貫こう
法律的には口約束で交わされたとしても、示談は成立します。後で車の修理代が予想以上にかかり、むち打ち症のような後遺障害が出たりしても、被害者は加害者に改めて請求はできません。
示談の場合、後遺症の補償など後に発生する損害も請求できるような条件をつけない限り、示談に合意した時点の金額で賠償金は決定してしまいます。安易な示談は、いくら高額だと感じられても受け入れることは得策ではありません。
損害賠償金に含まれるものは?
示談金は一般的に、損害賠償金と慰謝料の総額になります
まず、損害賠償金について説明します。
損害賠償金は、
- 治療費及び関連費用
- 休業損害
- 逸失利益
などに分けられます。
それぞれ細かく計算方法が定められていますので、加害者から提示された金額が妥当なものかどうかを自分で確かめるためにも、きちんと把握しておくことが必要です。
治療費及び関連費用とは
交通事故による怪我を治療するためにかかった入院費、診療費、通院費などを始め、付き添い看護費、義手などの装具を購入した費用、後遺障害のため必要となった自動車や家屋の改造費、弁護士費用まで、死亡事故の場合は葬儀費など、ありとあらゆる費用の請求が可能です。
どこまで認められるかは示談交渉次第ですが、請求にはどんな小さな金額でも領収書やレシートを残しておくことが必要です。
休業損害とは
交通事故により被った怪我により、その治療中に得ることができるはずだった給与や賞与を損害として請求するものです。サラリーマンやパート、アルバイト、また主婦など家事従事者や自営業でも請求可能です。
休業損害は消極損害のひとつで、自賠責基準、任意保険基準、弁護士(裁判)基準の計算方法と、会社員から自営業、主婦などにそれ...
逸失利益とは
交通事故によって死亡したり、重い後遺障害を抱えたりして、将来得られるはずだった収入を、事故前の収入や労働能力喪失率、労働能力損失年数などを加味して計算されるものです。
交通事故の受傷によって後遺症が残ったら、後遺障害認定を受けましょう。後遺障害として認定されると、「後遺障害逸失利益」や「...
これらの損害賠償金の計算には、一般的には馴染みのない係数が用いられることから、弁護士など専門家の助言を得ることで、示談交渉を有利に進められるでしょう。
慰謝料には相場がある?
慰謝料は、被害者が受けた精神的苦痛に対する補償金
個人が受けた精神的苦痛を具体的な金額に換算する場合、人によって感じる苦痛は違うために金額はバラバラになってしまいます。しかし、個人個人が慰謝料を思うがままに請求すると交渉にも時間がかかり、双方にとって困難な交渉になってしまうため、交通事故においては過去の例などを元に慰謝料の基準が定められています。
被害者として法外な慰謝料を請求しても、過去の判例から妥当と思われる慰謝料で決着するしかないのが現状です。
交通事故の慰謝料計算基準には3種類があり、中でももっとも高額なのは弁護士基準です。弁護士費用を払っても大きなおつりがくる...
慰謝料の内訳を知ることで正しい請求を
慰謝料は4つに分けられる
慰謝料は、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料に分けられます。
入通院慰謝料とは
入通院慰謝料は、交通事故によって負った怪我を治療するために入院、または通院した期間に応じて支払われるものです。本来ならば怪我の大きさによって決められるべきですが、被害者それぞれに同じ怪我というものはないため、客観的に計算できるように入院あるいは通院期間によって決められています。
但し、入通院慰謝料は医師の診察を受けないと支払われないので、交通事故直後に痛みがあるのに医者に行かず、マッサージで治そうとしてしまうようなことは避けましょう。
しばらくして通院を始めたとしても、交通事故から期間が空いてしまうと交通事故による受傷だということが証明し難くなりますので、必ず事故後すぐに受診する必要があります。
後遺障害慰謝料とは
後遺障害慰謝料とは、交通事故の傷害による怪我とは別に支払われるもので、症状が交通事故によるものと認められ、症状固定という時点の症状を元に金額が算出されます。
後遺障害は、常時または随時介護を要する後遺障害の第1級、第2級、それ以外の第1級から第14級までの等級が定められ、慰謝料の支払い基準が定められています。
後遺障害慰謝料のポイントは医師による後遺障害診断書と症状固定です。交通事故の傷害や後遺障害に詳しい医師の診察を受け、交渉相手の保険会社の代理人が勧めるままに症状固定を行わず、しっかり症状を見極めてから示談を行うようにしましょう。
死亡慰謝料とは
死亡慰謝料とは、交通事故によって被害者が死亡してしまった場合に支払われる慰謝料です。この場合、交通事故後に入院し死亡までの期間があった場合は、治療期間の入通院慰謝料も別途支払われます。
死亡慰謝料は遺族が受ける精神的苦痛や経済的損失などに対して支払われるもので、被害者の年齢、収入、家庭環境、社会的立場などで決められます。
交通事故の損害賠償請求を行う権利があるのは原則として被害者本人のみだが、被害者が死亡してしまった事故でも、被害者の遺族が...
損害賠償金と慰謝料に存在する3つの基準
損害賠償金と慰謝料の支払いには、自賠責基準、保険基準、弁護士(裁判)基準という3つの異なる基準があり、金額も大きく違ってきます。
これらの3つの基準の根拠を説明しましょう
自賠責基準とは?
自賠責基準とは、原付を含むすべての自動車に加入が義務付けられている自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)により定められた基準で、3つの基準の中で最も低い金額になります。
自賠責保険は加害者の支払い能力に関わらず、国庫負担で最低限の補償を被害者に行うための制度です。金額は低いものの、被害者保護のためには重要なものとなります。
保険基準とは?
加害者が任意保険に加入している場合、被害者はその保険会社から慰謝料を受け取ることができます。その基準は各保険会社により定められていますが、公表は行われていません。
示談交渉において、弁護士が介入する前に加害者側から提示される損害賠償金や慰謝料の額は、この基準を超えることはありません。
弁護士(裁判)基準とは?
裁判所は、交通事故裁判における損害賠償金や慰謝料の基準は公開していませんが、多くの裁判例を元に利用されている基準が弁護士(裁判)基準と呼ばれるものです。
弁護士(裁判)基準は、日弁連交通事故相談センターが発行する書籍「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」(通称:赤い本)に掲載されています。3つの基準のうち最も高額となり、弁護士に依頼することによって示談交渉で加害者に求める損害賠償金や慰謝料の基準にされるものです。
また、損害賠償金や慰謝料の基準は年々変動しますので、最新の情報を確認しておくことも必要です。
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