「本人訴訟」のメリットは、弁護士費用を節約できることに尽きます。しかし裁判を進めるために専門家への相談料まで出さないという姿勢では、勝てるはずの裁判に勝てなくなる可能性が出てきます。裁判は勝たないと意味がないので、出すべき費用は出す姿勢が大切です。
目次
「本人訴訟」に適した裁判かどうか、十分に見極めることが必要
弁護士に相談してから判断をすること!
交通事故の民事裁判において、「本人訴訟」を選択する理由としては、弁護士が苦手など、弁護士に依頼したくないということと、弁護士費用を節約したいということが挙げられる。しかしそれだけの理由で「本人訴訟」を起こし、被害者自身が自分ひとりで、弁護士を立てた加害者相手に通常の裁判で勝つことは難しいと言わざるを得ません。
弁護士を雇う義務はないが、熟考することが大事
日本の裁判制度では、民事裁判において弁護士強制主義が採用されていないため、交通事故の損害賠償問題に関する裁判において弁護士に依頼しなければならない義務はありません。
弁護士を雇わないということは、裁判に付きものの弁護士費用を節約することができ、勝訴した結果として手元に残る金額がより多くなります。しかしその金額だけにこだわり、軽い考えで「本人訴訟」を行ってしまったら、裁判が長引いた場合にはその計算を上回る費用がかかり、また敗訴してしまったら元も子もありません。
「本人訴訟」を行うには、その裁判が「本人訴訟」に適したものであるか、勝てる見込みが十分にあるか、しっかりと見極めることが必要です。そのためには、「本人訴訟」を進めるにあたり矛盾が生じるかもしれませんが、弁護士などの専門家に相談することも大切なのです。
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「本人訴訟」を行う前に相談を
「本人訴訟」を起こそうかどうしようかと考える際、自分ひとりで結論を出さず、まず一度は専門家に相談することをお薦めします。
交通事故の損害賠償問題の場合、示談交渉が決裂して、ADR(Alternative or Appropriate Dispute Resolution=裁判外紛争解決手続)や裁判所での調停も不調に終わってしまったら、残された問題解決手段は裁判しかなくなります。
示談交渉で損害賠償交渉がまとまらない場合は調停や訴訟に進むことが一般的だが、近年、裁判所が介入しないADR機関を利用する...
その裁判で弁護士を雇って争うか、「本人訴訟」によって自分ひとりで戦うかの判断は、自身が法律のプロでない限り、一度は専門家に相談するべきです。
書籍やインターネットで情報を集めて、自分だけで「本人訴訟」ができるかどうかを判断しようとしても、そこに専門的な知見がないと肝心なポイントを見逃しがちです。
「個人訴訟」でも十分戦えるか、弁護士を雇ったほうがいいのか、その決断はやはり専門知識をもった人からアドバイスを受けて決断した方が良いでしょう。
弁護士の無料相談も利用してみること
法律の専門家に相談する場合、例えば弁護士に相談を持ちかけると相談料が必要となってきます。弁護士の相談料は自由価格となっていますので価格に幅はありますが、30分5,000円くらいの所が多いようです。
弁護士にお金をかけたくないという人は、法テラス(日本司法支援センター)の無料法律相談を利用するのも良いでしょう。
また弁護士事務所でも、初回相談を無料にしているところもあります。交通事故問題に詳しく、無料相談を行っている弁護士事務所を見つけて、自分のケースが「本人訴訟」で戦えるのかどうかを相談してみることをお薦めします。
但し、その先の手続きや裁判の進め方の詳細まで無料で相談というのも虫が良すぎる話ですので、自分の知識に不安があるならば、最初の出費を惜しんで後悔することのないようにした方が良いのではないでしょうか。
かつては基準があったため弁護士費用は一律だったが、自由化によって弁護士が独自に報酬を決め始めた。依頼者にとっては逆に高い...
「本人訴訟」を行う前に確認したいポイント
交通事故問題で、「本人訴訟」で戦えるのか、あるいは弁護士を雇った方が良いのかを判断するポイントは4つあります。
(1)訴える相手(被告)は誰か?
訴える相手(被告)も個人であれば、「本人訴訟」でも勝てる可能性があります。
しかし保険会社を相手に訴訟を起こしたら、必ず相手は弁護士を立ててきますので、自身も弁護士の力を借りた方が勝つ確率は上がるでしょう。
(2)証拠はあるか?
裁判所を納得させるだけの証拠を持っているかどうかという点は非常に重要です。
十分な証拠がなければ証拠集めを行わなければ勝てません
どんな証拠が有効で、どうやって集めたらいいのかも分からないのであれば、「本人訴訟」を諦めて、弁護士を雇った方が良いかもしれません。
(3)裁判はどのくらいの期間が必要か?
この判断は実際に弁護士などの専門家に相談してみないと分からないかもしれません。
示談や調停の様子や結果で相手がどのようなペースで話を進めてくるのかは判断できますし、相手の主張は分かっているので、裁判に持ち込めばすぐに決着がつくのか、あるいは長引きそうなのか、ある程度の判断はできるはずです。
長引きそうならば、さまざまな費用が余分にかかってきますので、弁護士に依頼して早期に決着を着けた方が良いかもしれません。
(4)賠償金額はどのくらいか?
これが最も重要なポイントです。
裁判費用や弁護士費用を勘案し、勝訴した場合に十分なお金が自身に残るかどうか、しっかりと調べる必要があります。
勝訴して損害賠償金を得られたとしても、裁判費用や弁護士費用を支払って最終的に赤字になってしまっては、訴訟をする意味がありません。
弁護士の費用がどれくらい必要になるのかを確かめ、判断するようにしましょう。
相手に求める損害賠償金額が60万円以下の「少額訴訟」の場合は、「本人訴訟」を行った方が良いケースとされています。
どのようなケースでも「本人訴訟」は可能だが…
法律上では、民事裁判であればどのような場合でも「本人訴訟」は可能です。
交通事故の民事裁判が行われる簡易裁判所や地方裁判所だけではなく、高等裁判所でも最高裁判所でも「本人訴訟」を行うことができるのです。しかし、複雑な事情が絡み合っている事故、複数人が巻き込まれた事故、後遺障害が残ってしまうような負傷をした場合には、「本人訴訟」によって正当な判決を受けられるかどうかは難しいとされています。
一方で、近年では損害額が類型化されており、軽い程度の後遺障害であればほとんど争わないで決着をみることも多いことから、「本人訴訟」でも問題ないケースもあると言われています。
専門家に頼りながら「本人訴訟」を進めるのが現実的
弁護士を雇うのか、「本人訴訟」によって自分ひとりで裁判を起こすのか、選択肢をこれらの二者択一で考えない方が良いでしょう。
アドバイスを受けながら「本人訴訟」をするのが最善
訴訟というのは、完全に自分ひとりで戦う「本人訴訟」と、弁護士に手続きを丸投げする代理人訴訟の二者択一ではありません。
専門家に法律的なアドバイスを受けながら、実際の訴訟手続きは本人が行うというパターンでも問題はないのです。
専門家にアドバイスを受けると相談料は発生してしまいますが、代理人として選任するよりはずっと費用は安くなるでしょう。
相談料を節約するために弁護士への相談もせず「本人訴訟」を進め、勝てるはずの裁判で負けてしまうようなことがあれば意味がありませんので、裁判を起こす限りは弁護士などの専門家のアドバイスを受けることが重要となってきます。
費用を計算しながら進めることも可能
また、訴状など裁判にかかる専門書類の作成だけを有料で依頼することは可能ですので、期待できる損害賠償金と費用を計算しながら、専門家に任せられる事は任せるという方法も取ることができます。
現実的な判断としては、専門家に相談しながら「本人訴訟」を行う方法が一番安上がりかもしれませんが、裁判が長引けば弁護士を選任で雇った方が安くつく場合もあります。
このような点も、自分の思い込みだけではなく、交通事故に詳しい弁護士などの専門家に相談してから判断した方が良いでしょう。
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