「本人訴訟」に適したケースとは?~交通事故の「少額訴訟」

法律

交通事故の損害賠償を求める「少額訴訟」は「本人訴訟」が用いられる典型的なケース。しかし原則的に1度きりの審理で結審するため、十分な証拠集めなどの準備が必要となるため、自分ひとりで判断せずに、弁護士などの専門家にアドバイスをもらうことが必要です。

「少額訴訟」とは、訴額が60万円以下に限定され、審理が1回で決着が着けられるもの

弁護士費用を節約するために「本人訴訟」で臨むケースが多い

裁判には刑事裁判と民事裁判があり、交通事故の損害賠償問題は民事裁判によって争われます。交通事故が起こってしまい、示談交渉がまとまらず、調停も不調に終わってしまった場合の次の問題解決方法は民事裁判となるわけです。

その民事裁判にも、いくつかの種類があります。

損害賠償金の金額によって裁判所が違う

日本の裁判所には、簡易裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、高等裁判所、そして最高裁判所があり、それぞれの役割を持っています。

簡易裁判所では、争う金額が比較的少額の民事事件と、比較的軽い罪の刑事事件が取り扱われます。

地方裁判所は、民事事件と刑事事件の第一審が行われますが、役割は簡易裁判所と分担することになります。この際、訴額(交通事故の場合は主に損害賠償金額)が140万円以下の場合は簡易裁判所、それを超える場合は地方裁判所で第一審が行われます。

ちなみに、家庭裁判所では家事事件、少年事件、人事訴訟事件が取り扱われます。

そして簡易裁判所または地方裁判所で出された判決に不服があれば、控訴または上告を行い、高等裁判所に争いの場が移されることになるのです。さらに高等裁判所での判決に不服があって上告すれば最高裁判所に行くわけですが、交通事故の民事裁判では、最高裁判所に行くケースはほぼないと考えて良いでしょう。

これらの裁判の中に、簡易裁判所で取り扱われる「少額訴訟」というものがあります。

交通事故の裁判において、「本人訴訟」がよく行われる「少額訴訟」ですが、どのようなものか、以下に詳しく説明します。

「少額訴訟」とは?

「少額訴訟」とは、交通事故における損害賠償金の請求金額が60万円以下に限定された裁判です。

少額の訴訟をスムーズに決着を着けるための制度とも言えますが、民事訴訟のうちの特別な手続きで、通常の裁判とは違った独特の進め方で行われます。

訴額は60万円以下に限定される

交通事故においては、相手方に求める損害賠償金が60万円以下に限定されます。軽い物損事故や、人身事故の場合でも、被害者がほんの軽傷で済み、短期間で治療が終了した場合が「少額訴訟」の適用範囲だと考えられます。

自動車が大破した場合、長期間にわたる入院や治療が必要な場合、また後遺障害が残るような交通事故では、損害賠償金額が60万円を簡単に超えてしまいますので、「少額訴訟」には当てはまらないでしょう。

少額であるからこそ、「本人訴訟」を選択する

少額の訴訟では、原告も被告も、弁護士を雇うと赤字になってしまう可能性があります。

良識のある弁護士であれば、「少額訴訟」の代理人を引き受けたりはしないでしょう。そういう理由から、交通事故に限らず「少額訴訟」では、「本人訴訟」を選択することが多いのです。

示談や調停で合意に達することができなければ、交通事故の損害賠償問題は裁判で決着を着けることになります。

損害賠償金額が高額になってくると、被告側も弁護士を雇って対抗してくる可能性が高くなり、原告側が「本人訴訟」では分が悪くなってしまうことを理解しておきましょう。

「少額訴訟」の審理は原則1回のみ

「少額訴訟」の裁判では、ラウンドテーブル法廷の形が取られることが多いのが特徴です。

通常の裁判のように裁判官が一段高い席に座り、原告と被告が相対するような形ではなく、楕円形のテーブルを囲み、裁判官と当事者が同席し、和やかな形で進められていくものとなるのが一般的です。そして「少額訴訟」最大の特徴は、審理が原則的に1回のみとなり、すぐに判決が言い渡されるということです。

過失割合で揉めているなど複雑な問題を含んだ事故の場合は裁判官の判断や、相手方の申し出により通常の裁判に移ることもありますが、たった1回の審理で決着が着けられる短期決戦です。そのため、後述しますが証拠書類や証人は、審理の日にすぐに調べられる、または証言できるものに限られてしまいます。

「少額訴訟」の難しい点は?

自身が原告となって「少額訴訟」を利用しようとした場合、被告も「少額訴訟」の利用に同意してくれなければなりません。

裁判の相手方が「少額訴訟」を拒んだ場合には、通常の裁判となってしまいます。特に、被告側が任意保険に加入している場合は、応じてもらえる可能性は低いでしょう。

そしてより重要なことは、「少額訴訟」の判決に対して不服がある場合は、上級の地方裁判所に控訴することはできないのです。

異議申し立ては可能とされていますが、より決定的な証拠の提出ができないと認めてもらえる可能性はありません。

1回のみの審理に備えて十分な準備を行い、「本人訴訟」を行う際にも、自分ひとりで判断することなく、弁護士などの専門家に相談をして、万全の体制で裁判に臨むようにしましょう。

「少額訴訟」の勝負の決め手は事前の証拠集め!

一般的に通常の裁判は長期にわたるものとして知られていますが、これは好き好んで長引かせているわけではありません。

刑事裁判でも、被告人が最初から罪を認めている場合には、1回の裁判で判決が出る「即決裁判」や、裁判そのものを省略する「略式手続き」という方式もあります。しかし通常の裁判では、証拠の審査を慎重かつ十分に行うために、長期の時間が必要になっているのです。

それに対して民事裁判における「少額訴訟」は、原則的に1日の審理で結審してしまいます。

この短期決戦となる「少額訴訟」で勝訴を得るためには、通常の裁判以上に事前準備が必要になると言っても良いのです。

提出可能な証拠をなるべく多く集めること!

裁判というものは、訴額が大きかろうが小さかろうが、裁判官が原告と被告の双方から出された証拠を審理して判決を出すものです。そのため、裁判に勝つためには、なるべく多くの、かつ有効的な、裁判の場で提出できる証拠が必要となります。

可能であれば裁判官が読んで理解しやすい書類を準備したり、審理の当日に証人が証言してくれるように手配をしたりするのも良いでしょう。

訴状を提出して実際の訴訟手続きが始まってしまってから慌てて証拠集めをしていては、時間的な余裕がなくなってしまう可能性があります。

訴状を提出する前に、揃えられるだけの証拠は揃えてしまうのが肝心です。

示談交渉や調停に臨むにあたり、必要な書類は手元にあるはずですが、裁判においてはより決定的で説得力のある証拠が必要です。

どのような証拠を揃えて臨めば良いのかは、裁判で多くの経験を積み、交通事故の問題に詳しい弁護士などに相談するのも良いでしょう。

「少額訴訟」の裏ワザ

「少額訴訟」の裏ワザとして、実際には60万円を超える損害賠償請求になってしまうものを、複数回に分けて訴訟を起こすことも可能という点があります。

人身損害の補償にしても、物損の補償にしても、60万円という金額はすぐに超えてしまいます。

「少額訴訟」では、一人の原告が年に10回まで、同一の簡易裁判所へ起訴が可能ということになっています。

最終的な損害賠償請求金額が60万円を超えている場合には、2回以上に分けて「少額訴訟」を起こすという方法が使えるのです。

実際の手続きに当たっては、「本人訴訟」で行わないと赤字になる可能性が高い「少額訴訟」ですが、弁護士などの専門家のアドバイスを受ければ、このようなテクニックを教えてもらえることもあるでしょう。

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