交通事故による上肢の後遺障害~欠損・機能障害、変形障害、醜状障害~

上肢機能障害

「上肢」の後遺障害は欠損・機能障害、変形障害、醜状障害に分けられる

非常に細かな等級設定が設けられている

交通事故による後遺障害は、その障害がある身体の部位によって区別されています。

本ページで説明する「上肢」とは、一般的な言葉でいえば「腕」と「手指」を指します。

「肩関節」から先の手の部分、具体的には「上腕」「肘関節」「前腕」「手関節」「手指」「指関節」を合わせて「上肢」と呼びます。

「上肢」の後遺障害とは、交通事故によって上肢全体、もしくは上肢の一部が失われたり、正常な動きができなかったり、麻痺が残ってしまうような症状です。

「上肢」の後遺障害等級は、その症状がある部分と症状、程度によって、非常に細かく規定されているのが特徴です。

「上肢」の後遺障害は3種類に大別される

交通事故による「上肢」の後遺障害は、欠損・機能障害、変形障害、醜状障害に大別されます。

欠損・機能障害とは、上肢やその一部が失われてしまったもの、または本来の機能を失う、あるいは制限されてしまうような状態を指します。

変形障害とは、交通事故による負傷により偽関節を残し、運動障害が残ってしまう場合のことです。

また醜状障害とは、交通事故によって裂傷や擦過傷を負い、傷痕が残ってしまったものを指します。

それぞれのケースの特徴や等級について見てみましょう。

(注)本ページを読まれる前に

本ページに記載している症状や治療法は、一般的な知識として覚えておいた方が良いというもので、症状によって自分で判断を行うことや、記載した治療をお薦めするものではありません。必ず医師の診断を受け、適切な診断と治療を受けてください。

「上肢」の欠損・機能障害とは

「上肢」の欠損障害とは、交通事故によって「上肢」をすべて、あるいは一部を切断するなどして失ってしまった状態を指します。

後遺障害の等級は、失われた部分が大きいほど高くなり、「上肢」の欠損障害の場合は、手指の「欠損」に関して、より綿密な規定が行われているのが特徴です。

「上肢」の欠損障害による後遺障害等級

「上肢」の欠損障害による後遺障害等級は、次のように定められています。

「上肢」の欠損障害による後遺障害等級
第1級3号 両上肢をひじ関節以上で失ったもの
第2級3号 両上肢を手関節以上で失ったもの
第4級4号 一上肢をひじ関節以上で失ったもの
第5級4号 一上肢を手関節以上で失つたもの

「上肢」のうち、手指の欠損障害による後遺障害等級

「上肢」のうち、手指の欠損障害による後遺障害等級は、次のように定められています。

「上肢」のうち、手指の欠損障害による後遺障害等級
第3級5号 両手の手指の全部を失ったもの
第6級8号 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指を失ったもの
第7級6号 一手のおや指を含み三の手指を失ったもの又はおや指以外の四の手指を失ったもの
第8級3号 一手のおや指を含み二の手指を失ったもの又はおや指以外の三の手指を失ったもの
第9級12号 一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失ったもの
第11級8号 一手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの
第12級9号 一手のこ指を失ったもの
第13級7号 一手のおや指の指骨の一部を失ったもの
第14級6号 一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの

「上肢」の機能障害とは

機能障害とは、欠損はしていないものの、交通事故によって腕や手指に障害が残ってしまうことを指します。後遺障害等級表においては、以下の3段階の表現によって、障害の等級を振り分けられています。

  • 用を全廃したもの(廃したもの)
  • 著しい障害を残すもの
  • 機能に障害を残すもの

「用を全廃したもの」とは、欠損はしていなくても、関節が強直した状態で、上腕神経叢の完全麻痺なども含まれます。

「上肢」において「用を廃した」と判断される基準は、関節が強直したもの、あるいは関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態(自動運動での関節の可動域が正常な側の可動域角度の10%程度以下)、人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節で可動域が正常な側の可動域角度の50%以下に制限されているもの、とされています。

一方で「上肢」の一部である手指に関しても「用を廃した」という基準がありますが、これは「上肢」とは別の後遺障害等級に該当します。

「著しい障害を残すもの」と「機能に障害を残すもの」は、「上肢」の全部、もしくは一部が動かなかったり、健康な状態に比べて可動域が狭くなってしまったりした状態です。

いずれも交通事故によって関節や神経に障害が残った場合ですが、「著しい障害」と「機能に障害を残すもの」の違いは、各関節がどの程度動くかという点で判断されます。

腕や肘の曲げ伸ばしに関して、健康状態の何%まで動かす事が可能かという基準は、関節や部位ごとに定められています。

これ以上は症状の回復が見込めないという症状固定になった段階で、医師が適正な判断をして等級認定を申請することになります。

「上肢」の機能障害による後遺障害等級

「上肢」の機能障害による後遺障害等級
第1級4号 両上肢の用を全廃したもの
第4級6号 両手の手指の全部の用を廃したもの
第5級6号 一上肢の用を全廃したもの
第6級6号 一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
第8級6号 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
第9級13号 一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの
第10級7号 一手のおや指又はおや指以外の二の手指の用を廃したもの
第10級10号 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
第12級6号 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
第13級6号 一手のこ指の用を廃したもの
第14級7号 一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの

「上肢」の変形障害とは

「上肢」の変形障害とは、交通事故によって骨折などをし、その骨の癒着が上手くいかずに、関節ではない部分が曲がるような偽関節を生じたり、骨が曲がったまま癒合してしまったりした場合を指します。早期に適切な治療を行えば、後遺障害が残るケースは少ないとされますが、骨折の場所や体質によって、このような障害が残ることがあります。

変形障害は、関節の可動域に制限が残るほか、曲がった骨に痛みを伴うこともあるので、再手術などの治療が必要になることも少なくありません。

「上肢」の変形障害による後遺障害等級

「上肢」の変形障害による後遺障害等
第7級9号 一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
第8級8号 一上肢に偽関節を残すもの
第12級8号 長管骨に変形を残すもの

長管骨とは長い円筒状の骨のことで、手足の骨が代表的なものです。

「上肢」の醜状障害とは

交通事故によって裂傷や擦過傷を負った傷痕が残った場合に認められる外貌醜状の後遺障害は、上肢にも規定があります。

「上肢」の傷痕が残った場合に認められる外貌醜状の後遺障害
第14級4号 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの

外貌醜状については、普段露出する部分に傷痕が残った場合しか認められないケースがありますが、仕事上で「上肢」を常に露出し、業務に支障をきたすような傷痕であれば、当然等級認定を求めるべきでしょう。

傷痕の大きさがてのひらの大きさの3倍以上あるような著しい痕であれば、第12級の準用も適用される場合もあるようです。

適正な後遺障害等級認定と補償は弁護士に相談を

上肢の後遺障害に限った話ではありませんが、後遺障害等級の認定は、加害者側との補償交渉を進める上において重要なことです。

適正な補償を受けるには、まず被害者自身が、後遺障害と正しい等級認定に関しての知識を得ることですが、ご自身で勉強し、交渉をするのは困難です。

普段から勉強しておけばよいのですが、交通事故は突然やってきます。

いざ事故に巻き込まれてから慌てて勉強するより、専門知識を持った弁護士に相談した方が、後遺障害等級認定や補償交渉が上手くいく可能性が高いでしょう。

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