交通事故後に背中の痛みを感じたら?事故後に多い首(頸部)のケガ

背中の痛み

交通事故後に背中に痛みを感じたら「むち打ち症」の可能性が

程度や症状はさまざまで、後遺障害認定におけるトラブルも多い

「むち打ち症」は、怪我や病気を示す正式な医学用語ではありません。

正式な傷病名は「頸椎捻挫」や「頸部挫傷」、あるいは「外傷性頸部症候群」などとなります。むち打ち症はこうした症状の総称。交通事故などの外部的な衝撃で首の筋肉や筋、または骨などが損傷することによって起こるさまざまな症状を「むち打ち症」、あるいは単に「むちうち」と呼んでいます。

交通事故で損傷を受ける部位は、頭部と頸部(首)

警察庁交通局がまとめた「令和元年中の交通事故の発生状況」によると、交通事故によって起こる損傷は、部位別にみると次のようになっています。

【死亡事故の場合】

自動車乗車中
全損 9.5%
頭部 25.8%
頸部 6.6%
胸部 33.4%
腹部 10.9%
その他 7.5%
二輪車乗車中
全損 8.0%
頭部 38.2%
頸部 5.3%
胸部 30.0%
腹部 6.5%
その他 2.0%
自転車乗用中
全損 4.4%
頭部 53.6%
頸部 8.5%
胸部 14.5%
腹部 2.1%
その他 9.5%
歩行中
全損 10.5%
頭部 50.7%
頸部 4.2%
胸部 19.5%
腹部 3.6%
その他 0.1%

【負傷事故の場合】

自動車乗車中
頭部 2.4%
頸部 80.1%
胸部 3.6%
腰部 6.9%
腕部 2.5%
脚部 2.1%
その他 0.0%
二輪車乗車中
頭部 4.2%
頸部 18.8%
胸部 5.7%
腰部 9.4%
腕部 21.7%
脚部 34.9%
その他 0.0%
自転車乗用中
頭部 10.2%
頸部 11.7%
胸部 4.0%
腰部 9.6%
腕部 25.0%
脚部 30.7%
その他 0.0%
歩行中
頭部 12.9%
頸部 9.4%
胸部 3.2%
腰部 12.2%
腕部 25.0%
脚部 30.7%
その他 0.0%

交通事故では、頸部の損傷が非常に多い

上記のデータをみると、バイクや自転車、歩行中に交通事故に遭って被害者が死亡してしまった場合、負傷する部位としてもっとも多いのは頭部、次に胸部です。こうした状況で交通事故が起こると、車体が破壊されたり転倒したりして頭部を地面などに強打し、頭蓋骨骨折や脳損傷などが起こりやすくなります。またハンドル部分などで圧迫されて胸部が損傷を受けるケースも多く、大きなダメージを負って死亡事故につながってしまうのでしょう。

一方、自動車で交通事故に遭い軽傷となったケースでは、頸部の損傷が80.1%と圧倒的に多く、頸部の損傷の総称である「むち打ち症」になってしまう確率が非常に高い実情が伺えます。

交通事故で「むち打ち症」はなぜ起こる?

「むち打ち症」は、身体に衝撃を受けた時に首が「むち」のようにしなってしまうことが原因で、頸部の骨や筋肉、筋、神経などが損傷して起こります。「むち打ち症」は交通事故に限って患うものではありませんが、交通事故が原因となるケースが非常に多く、交通事故による負傷の「代名詞」のようにも使われる言葉です。

後遺症が残りやすい首の怪我

交通事故による怪我の中でも、頸部(首)の損傷は後遺症(後遺障害)につながりやすいと言われています。首は重い頭を支えており、何の前触れもなくいきなり加えられた衝撃に対して極めて弱い部分だからです。また首は胴体に比べて細いにもかかわらず、脳から信号を全身に伝える重要な神経が詰まっているため、衝撃を受けるとさまざまな症状を引き起こしてしまいます。

交通事故のように突然身体に大きな衝撃が加わると、身体が前後に揺さぶられてしまい、首へのダメージは相当大きなものになります。受けたダメージが神経や骨に損傷を与えたら、一生治らない深刻な後遺症を引き起こす可能性も十分にあるといえるでしょう。

「むち打ち症」はすぐに症状が出ない!

「むち打ち症」で注意しなければならないのは、交通事故で負う他の怪我と比較しても、「すぐに症状が出にくい」点です。交通事故に遭ってしまった直後は、何の自覚症状もなく普通に行動できていたのに、しばらくしてからだんだんと痛みや痺れといった症状が出てくるケースも少なくありません。

脳神経へのダメージを負った場合にも、後になって症状が現れるケースがよくあります。「むち打ち症」も同様に神経が損傷してしまう傷病であり、症状が現れるのに時間がかかるのでしょう。

「むち打ち症」は、検査で異常が発見されない!?

もうひとつやっかいな点として、「むち打ち症」の場合、神経に障害が出ていて痛みや痺れといった自覚症状があるにもかかわらず、レントゲンやMRIで検査しても異常が発見されないケースが相当数存在します。

そのため、交通事故後の示談交渉における損害賠償請求、後遺障害認定においてむち打ち症の証明が困難になりがちです。症状が残っているのに後遺障害認定されないケースも少なくありません。他の怪我に比べて「むち打ち症」はトラブルが起こりやすいといえるでしょう。

トラブルを回避するために、通院を続けることが大事

すぐに症状が出ず、その症状が検査に表れにくい「むち打ち症」の治療において大切なポイントは、次の3点に集約されます。

  1. 交通事故直後、必ず医師の診断を受けること
  2. 症状が改善されないと諦めず、適切な通院を続けること
  3. 整形外科医の診断を受け、適切な治療を受けること

交通事故直後、必ず医師の診断を受けること

交通事故に遭ってしまった場合、どのような負傷の状況であっても、直後に医師の診断を受けることが重要です。

確かに「むち打ち症」はすぐに症状が出ない場合があります。そんなときでも事故直後に医師の診断や検査を受けておけば、後日具体的な症状が出たときに同じ医師に診断を受けて、交通事故による「むち打ち症」であることを証明しやすくなります。

「むち打ち症」の症状は、頭痛や吐き気といった重いものから、肩こりや背中の痛みといった軽度のものまでさまざまです。

すぐに診断を受けておかなければ、肩こりや背中の痛みが出ても交通事故との因果関係を否定され、後遺障害認定を受けたり治療費を払ってもらったりするのは難しくなるでしょう。

症状が改善されないと諦めず、適切な通院を続けること

「むち打ち症」の症状は、日常生活で我慢できないほどではないけれども長期にわたるものが多々あります。その場合でも、事故前と比べて労働能力が低下したら後遺障害認定を受けて損害賠償請求できる可能性があるので、しっかりと通院を続けましょう。

一度通院を止めてしまうと、そこで症状がなくなったと見なされ、損害賠償金の請求ができず、また長期間にわたって症状が残った場合の後遺障害認定も受けられなくなる可能性があります。症状がある限り通院を継続してください。

整形外科医の診断を受け、適切な治療を受けること

交通事故の損害賠償請求には、事故による負傷に関する診断書が必須です。しかし「むち打ち症」になったとき、医師のいる「整形外科(病院)」に行かず、「整体」や「マッサージ」といった有資格者がいない院で症状の改善をはかる人が少なくありません。

これは絶対に避けてください。

診断書は医師にしか書けないからです。整体やマッサージ院にしか行っていない場合、「いざ損賠賠償金の請求」といった段階になって、診断書を作成できません。過去の検査記録も残っていない状態となります。

事故に遭ったら、必ず当初は整形外科医の診断を受け、医師と相談しながら治療を続けてください。その後症状が落ち着いてから、必要に応じて柔道整復師が担当する「整骨院」や「接骨院」等に通いましょう。

なお交通事故による負傷の治療の際、有資格者がいない「整体」やカイロプラクティック、マッサージは適しません。これらには保険も適用されずかかった料金も請求できないので注意してください。

「むち打ち症」の代表的な症状とは?

「むち打ち症」の代表的な症状は、首筋や肩、そして背中などの痛みです。症状が重くなると、頭痛や耳鳴りもあり、さらにひどくなると目まいや吐き気なども伴い、日常生活に支障が出るケースも少なくありません。

具体的な症状は損傷部位や程度によって変わります。

首へのダメージがより深刻な場合は「頸髄損傷(脊髄損傷)」に

交通事故で首や背骨に極めて深刻なダメージを負ってしまうと、腕や足を動かせなくなったり首から下が麻痺して寝たきりになってしまったりするケースもあります。

ここまで重度の症状となると、もはや「むち打ち症」ではありません。「脊髄損傷」「頸髄損傷」などと診断されるでしょう。当然、単なるむち打ち症よりもかなり高額な慰謝料や逸失利益を請求できます。きちんと後遺障害認定を受けて弁護士に示談交渉を依頼し、適正な金額の賠償金を受け取るようにしてください。

監修記事

福谷 陽子(元弁護士、ライター)が監修いたしました。

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