交通事故の後遺障害で最も多いむち打ち症~頚椎捻挫、外傷性頸部症候群など~

むちうち症

交通事故による負傷で最も多い「むち打ち症」

程度や症状はさまざまで、後遺障害認定におけるトラブルも多い

俗に言う「むち打ち症」は、怪我や病気を示す正式な医学用語ではありません。

正式な傷病名は「頸椎捻挫」や「頸部挫傷」、あるいは「外傷性頸部症候群」など呼ばれるものの総称で、交通事故などの衝撃で首の筋肉や筋、または骨などが損傷することによって起こるさまざまな症状を「むち打ち症」、あるいは単に「むちうち」と呼んでいます。

交通事故で損傷を受ける部位は、頭部と頸部(首)

警察庁交通局がまとめた「平成27年における交通事故の発生状況」によると、交通事故によって起こる損傷は、部位別にみると次のようになっています。

【死亡事故の場合】

自動車乗車中
全損 8.5%
頭部 27.1%
頸部 6.4%
胸部 37.3%
腹部 10.6%
その他 10.1%
二輪車乗車中
全損 86.8%
頭部 842.8%
頸部 86.8%
胸部 827.8%
腹部 86.2%
その他 89.6%
自転車乗用中
全損 83.3%
頭部 860.7%
頸部 85.8%
胸部 811.9%
腹部 82.6%
その他 815.7%
歩行中
全損 7.0%
頭部 53.5%
頸部 3.9%
胸部 17.9%
腹部 4.3%
その他 13.4%

【負傷事故の場合】

自動車乗車中
頭部 2.7%
頸部 81.1%
胸部 3.9%
腰部 5.4%
腕部 2.3%
脚部 2.2%
その他 2.3%
二輪車乗車中
頭部 5.4%
頸部 16.1%
胸部 7.1%
腰部 8.2%
腕部 22.2%
脚部 35.6%
その他 5.5%
自転車乗用中
頭部 11.6%
頸部 11.6%
胸部 5.0%
腰部 9.4%
腕部 19.8%
脚部 36.7%
その他 6.0%
歩行中
頭部 15.1%
頸部 8.3%
胸部 4.1%
腰部 11.7%
腕部 20.9%
脚部 32.8%
その他 7.0%

交通事故では、頸部の損傷が非常に多い

不幸にも交通事故に遭ってしまった場合、自動車に乗っている時に負傷する部位として多いのは、死亡事故の場合は胸部、次に頭部となり、負傷事故の場合は圧倒的に頸部となっています。

死亡事故の場合は、大きな衝撃によって車体が破壊され、ハンドル部分などで圧迫されて胸部が損傷を受けること、また外部からの力で頭部にダメージを負うことが考えられます。

一方で負傷事故、運転者や同乗者が死亡するには至らなかった事故では、頸部の損傷が81.1%と圧倒的に多く、頸部の損傷の総称である「むち打ち症」になってしまう確率が非常に高いことが伺えます。

交通事故で「むち打ち症」はなぜ起こる?

「むち打ち症」は、身体に衝撃を受けた時に首が「むち」のようにしなってしまう事で、頸部の骨や筋肉、筋、神経などが損傷してしまうことで起こります。「むち打ち症」は別に交通事故に限って患うものではないのですが、交通事故が原因となるケースが非常に多く、交通事故による負傷の代名詞のようにも言われています。

後遺症が残りやすい首の怪我

また、同じ交通事故による怪我でも、後遺症になりやすい部分は頸部(首)と言われています。首は重い頭を支えている部分で、何の前触れもなくいきなり加えられた衝撃に対して、身体の中の部位では、最も弱い部分だと言えるのです。また胴体に比べて細い首の中には、脳から信号を全身に伝える重要な神経が詰まっているため、衝撃を受けるとさまざまな症状を引き起こしてしまうのです。

交通事故のように突然身体に大きな衝撃が加わる状況になった場合、身体が前後に揺さぶられてしまい、首へのダメージは相当大きなものになりますし、受けたダメージが神経や骨に損傷を与えた場合、一生治らない深刻な後遺症を引き起こしやすいと言えるでしょう。

「むち打ち症」はすぐに症状が出ない!

「むち打ち症」で怖いのは、損傷しやすい部分ということに加え、交通事故で負う他の怪我と比較して、すぐに症状が出ないことです。交通事故に遭ってしまった直後は、何の自覚症状もなく普通に行動できていたのに、しばらくしてからだんだんと痛みや痺れといった症状が出てくることが多いのが「むち打ち症」の特徴です。

脳へのダメージを負った場合にも、後になって症状が現れるケースもありますが、「むち打ち症」も神経が損傷しているのですから、その症状が現れるのに時間がかかることもあるのです。

「むち打ち症」は、検査で異常が発見されない!?

もうひとつやっかいな点として、「むち打ち症」の場合、神経に障害が出ていて痛みや痺れといった自覚症状があるにもかかわらず、レントゲンやMRIで検査しても異常が発見されないケースがあるということが挙げられます。

そのため、交通事故後の示談交渉における損害賠償請求、後遺障害認定において、他の怪我に比べて「むち打ち症」はトラブルが起こりやすいのです。

トラブルを回避するために、通院を続けることが大事

すぐに症状が出ず、その症状が検査に表れにくい「むち打ち症」の治療において大切なことは、次の3点に集約されます。

①交通事故直後、必ず医師の診断を受けること

交通事故に遭ってしまった場合、どのような負傷の状況であっても、直後に医師の診断を受けることが重要です。

「むち打ち症」はすぐに症状が出ない場合がありますが、医師の診断により症状が発見される、またその場では判明しなくても事故直後に診断を受けたという事実があれば、後日症状が出て同じ医師に診断を受ければ、交通事故による「むち打ち症」であることを証明できる可能性が高いのです。

「むち打ち症」の症状は、頭痛や吐き気といった重いものから、肩こりや背中の痛みといった軽度のものまでさまざまです。

すぐに診断を受けておかなければ、肩こりや背中の痛みといった場合は、交通事故との因果関係が疑われることになってしまうのです。

②症状が改善されないと諦めず、適切な通院を続けること

「むち打ち症」の症状は、日常生活で我慢できないほどではないけれども長期にわたるものがあります。その場合でも、事故前と比べて労働能力が低下したとなれば損害賠償請求の対象となりますので、しっかりと通院を続けることが大切です。

一度通院を止めてしまうと、そこで症状がなくなったと見なされ、損害賠償金の請求ができず、また長期間にわたって症状が残った場合の後遺障害認定も受けられなくなるので、症状がある限りは通院を続けることが大切です。

③整形外科の診断を受け、適切な治療を受けること

交通事故の損害賠償請求には、事故による負傷の診断書が必要です。「むち打ち症」においては、症状が軽いために医師のいる整形外科の診断を受けず、整体やマッサージといった有資格者がいない院で治療を進める人がいますが、これは避けるべきです。

診断書は医師にしか書けず、いざ損賠賠償金の請求といった段階になって、交通事故直後の診断書が作成できないことになってしまうのです。

必ず最初は整形外科の診断を受け、医師と相談しながら治療を続け、必要であれば柔道整復師が行う整骨院や整骨院に通う方がよいでしょう。交通事故による負傷の治療は、有資格者がいない整体やマッサージは適していません。

「むち打ち症」の代表的な症状とは?

「むち打ち症」の代表的な症状は、首筋や肩、そして背中などの痛みです。症状が重くなると、頭痛や耳鳴りもあり、さらにひどくなると目まいや吐き気なども伴い、日常生活に支障が出てくることもあります。

これらの症状は損傷した首の骨や筋肉、筋、神経の度合によってさまざまです。

首へのダメージがより深刻な場合は?

より深刻なダメージを負っていた場合、首から下が麻痺して寝たきりになってしまうこともありますが、一般的にはそこまで重度の症状は、もはや「むち打ち症」とは呼ばれません。本来の傷病名である「頚椎挫傷」など具体的な名称で呼ぶのが一般的でしょう。

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