「民事調停」の「期日」は期日変更申請書を裁判所に提出することで変更が可能となります。正当な理由がなく欠席した場合には過料が定められていますが、実際に科せられた人の話は聞きません。わざと欠席することで「裁判」に早く持ち込みたいという戦術もあるようです。
目次
「民事調停」を欠席すると、原則的には過料が科せられる
「民事調停」自体も不調となる可能性が高くなる
当事者同士による交通事故の示談交渉が決裂した時、次の問題解決手段は「民事調停」(以下、「調停」と記します)となります。
「調停」は交通事故だけではなく、売買、金銭の貸し借り、近隣関係、建物の明け渡しをめぐる争いなどのトラブルを、裁判所において、「裁判」以外の方法で解決を目指すものです。「裁判」と比較すると、申し立てが簡単で、費用も安く抑えられ、手続きは非公開で行われるためプライバシーを守ることもできます。
「民事調停」においては調停委員会が交通事故の当事者双方を裁判所に呼び出し、それぞれの意見を聞いて解決策を調整する。調停案...
「調停」は時間の無駄?
一般人でも気軽に申し立てができる「調停」ですが、「時間の無駄」と言われることもあるようです。
裁判所が指名する調停委員会のメンバーが、交通事故問題の専門性を有していないという問題があること、またはもともと示談でさんざん話し合いをして合意しなかったのだから、第三者が入っても変わらないという見方など、理由はさまざまなようです。
そして、呼出状に応じない相手方もいるため、より強制力の強い「裁判」を志向する向きもあります。
「調停」に関わる問題点を確認してみましょう。
裁判所が指名する調停委員会のメンバーが問題?
交通事故の被害者または加害者から「調停」が申し立てられると、裁判所は調停委員会を立ち上げます。
裁判所は、当該の交通事故に関する調停委員会を立ち上げますが、その事故のためだけに専門の委員が召集されるわけではありません。
裁判官1名と調停委員2名が「調停」を進める
調停委員会とは、簡易裁判所の裁判官1名と、民間から選ばれた2名以上の調停委員によって構成されます。裁判所ホームページによると、調停委員は次の基準で選ばれています。
「調停委員は、調停に一般市民の良識を反映させるため、社会生活上の豊富な知識経験や専門的な知識を持つ人の中から選ばれます。具体的には、原則として40歳以上70歳未満の人で、弁護士、医師、大学教授、公認会計士、不動産鑑定士、建築士などの専門家のほか、地域社会に密着して幅広く活動してきた人など、社会の各分野から選ばれています。」
交通事故に強い調停委員かどうかは分からない点が問題
上の基準は、交通事故の「調停」だけではなく、すべての「民事調停」に適用されます。
裁判所ホームページでは「事件の内容等に応じて、最も適任と思われる調停委員を指定するなどの配慮をしています。」と謳っていますが、必ずしも交通事故の損害賠償問題に詳しい人が任命されるわけではないでしょう。
複雑な事故やこじれた示談交渉については、裁判所の「調停」ではなく、交通事故に特化したADR機関による和解あっ旋を利用した方が良いとされています。
「調停」の呼び出し「期日」が一方的?
交通事故に限らず、「民事調停」の申し立てが受理されれば、裁判所の調停委員会から 「○○月○○日の〇○時に、簡易裁判所に来てください」 という呼出状が、当事者の元に届きます。
この呼出状に記載された日時のことを「期日」と呼びますが、「期日」は調停委員会が一方的に指示してくるもので、申し立て人とは事前の打ち合わせがあったとしても、申し立ての相手方に前もって打診が行われるものではありません。
そのため、どうしても外せない用事のある日がたまたま「調停」の「期日」ということが考えられるわけです。
「調停」の「期日」は変更してもらえるか?
基本的に、「期日」の変更は可能です
「調停」は交通事故当事者同士による話し合いの場となるため、調停委員会も双方の出席を望んでいるのです。
「調停」の「期日」までまだ余裕のあるときには、期日変更申請書を裁判所に提出して、期日の変更を願い出ることが可能です。
期日変更申請書の書式は「裁判所ホームページ」からダウンロードできます。
期日変更申請書には、呼出状に記載された日時などの「調停」の内容と、「期日」変更の理由を書き込むのみです。
「調停期日」変更の理由は認められる?
「調停」の「期日」変更は電話でも申請可能
期日まであと数日といった差し迫った頃に急な用事ができてしまった場合は、裁判所に電話をかけ、「期日」の変更を申し出ることも可能となっています。
期日変更申請書にせよ電話連絡にせよ、「期日」に裁判所に行けない正当な理由だと裁判所が認めれば、「調停」の「期日」は変更されます。
正当な理由として認められなければ欠席扱いとなる
あまりにも安直な理由で「期日」の変更を申し出ると、調停委員会に認められず欠席扱いにされてしまうことがあります。
「調停」の「期日」はなるべく最優先事項として、他の用事をずらしてでも、裁判所に赴くようにすることをお薦めします。
繰り返しになりますが、「調停」は交通事故当事者同士の話し合いです。
「期日」変更の申請に関しては、特に回数制限はありませんが、裁判所が相手の日程も確認したら、その日はこっちが都合悪かった、といった事態もあり得ます。
なるべく双方が出席し話し合いができるように「期日」を調整してくれますが、調停委員会が「期日」の変更に応じてくれるのは、あくまで正当な理由があると認められた場合のみです。
一方、正当な理由がなく欠席した場合は、次のような過料を科せられる場合があります。
「調停」の無断欠席には過料が科せられる?
民事調停法第三章、罰則の章、第34条に「調停」欠席の場合の過料が定められています。
(不出頭に対する制裁)
第34条 裁判所又は調停委員会の呼出しを受けた事件の関係人が正当な事由がなく出頭しないときは、裁判所は、五万円以下の過料に処する。
「調停」を正当な理由なく欠席した者は、50,000円以下の過料が科せられるのです。
しかし、実際に「調停」を欠席したからといって、過料が科せられたという話はほとんど聞きません。
どうしてなのでしょうか?
過料を徴収するために経費がかかるため?
裁判所に確認したわけでもなく、他の理由もいろいろありますが、50,000円の過料を徴収するためにそれ以上の経費が掛かるからだという説が、業界ではまことしやかに語られています。
しかし過料が定められているということは、実際に「調停」を正当な理由なく欠席してしまったら、過料を求められて当然の話になりますので、なるべく出席できるように調整するべきでしょう。
「調停」を欠席する戦術がある?
一方で、「調停」を無断欠席し、本当に過料を請求された人は皆無だと言われているので、わざと呼出状を無視して欠席するという者もいるようです。
以下の方法は、決してお薦めできるものではありませんが、このような戦術もあるということを知っておいてください。
「調停」をわざと欠席して、不調にしてしまえという思惑
「調停」の場で損害賠償交渉に応じる気はなく、最初から裁判を視野に入れている場合、「調停」をわざと欠席し、少しでも早く不調にしてしまおうという戦術を使う者がいるようです。
この場合、無断欠席はせずに「話し合いで解決する気はないので、調停には出席しません」 と、調停委員会に欠席を申告する人もいるのです。
いずれにしても、欠席は話し合いを望まないと判断される
どのような理由であれ「調停」を欠席する人は、話し合いを望んでいないと調停委員会の裁判官や調停委員は解釈します。
通常、「調停」は2~3回の話し合い(2~3カ月程度)の期間を見込んで行われますが、当事者の一方が欠席を続けると、調停委員会はこの期間を待たずに、早々に「調停」を不調として終わらせてしまうことがあります。
お薦めできる方法ではありませんが、相手方が欠席を続ける理由に気付くために、知識として知っておいてください。
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