「民事裁判」の進み方と費用~交通事故の民事裁判②

裁判費用

交通事故の民事裁判には、訴訟を起こす時点で裁判所に支払う手数料や予納郵券の他に、証人の旅費交通費、調書のコピー代などを当事者が予納する必要があります。これらの費用は敗訴した側が最終的には支払うことになるため、裁判には必ず勝たなければなりません。

交通事故の民事裁判を進めるには

各種の費用をあらかじめ裁判所に納付しておかなければならない

交通事故の民事裁判は、地方裁判所、もしくは簡易裁判所に訴状を提出し、訴額(損害賠償の金額)に応じた手数料を納付します。

同時に予納郵券と呼ばれる、裁判所から訴状などを被害者(原告)や加害者(被告)に郵送する郵便料金を納め、本格的に「裁判」の手続きがスタートします。

本項では、訴状を提出してからの「裁判」の流れと、必要な手続きや費用について見ていきます。

民事裁判に必要な費用は誰が負担するのか?

民事裁判に必要な費用は、基本的には裁判で敗訴した方が負担することになっています。これは、民事訴訟法の第四章(訴訟費用)の、第一節(訴訟費用の負担)に以下のように規定されています。

訴訟費用の負担の原則

第61条 訴訟費用は、敗訴の当事者の負担とする。

しかし、訴状を提出する際の手数料や、予納郵券、あるいは以下で説明するさまざまな費用は、判決が下されるまでの間は被害者(原告)、もしくは加害者(被告)が、前もって裁判所に支払っておかなければならないとされています。

そのため、後に勝訴して支払ったお金が返ってくるとしても、交通事故の民事裁判を起こす際には、相当金額の費用がかかるため、資金繰りの準備をしておかなければなりません。

弁護士費用などは含まれないことに注意

但し、上記の訴訟費用には、「裁判」を行うためのすべての費用が含まれているわけではありません。

例えば、弁護士を雇った際に必要となる弁護士費用は含まれず、公共交通機関があるのにタクシーを利用した際の交通費などは認めてもらえないことに注意しておきましょう。

弁護士費用を加害者(被告)に支払わせるため、請求する損害賠償金額に上乗せしておくこともできますが、判決で認められるとは限りません。

それでも弁護士の助けが必要だという理由は?

「裁判」を起こすからには、勝訴しなければ意味がありません。

納得がいかない損害賠償金や慰謝料を提示され「示談」に合意せず、「調停」も不調としてしまい「裁判」を起こすということは、この納得いかない金額の損害賠償金や慰謝料さえ受け取れない可能性を背負うということです。

敗訴してしまえば、一銭も損害賠償金や慰謝料を受け取れなくなることもあるのです。そのため、「裁判」を起こすからには、あらゆる手段を尽くして勝訴を狙わなければなりません。

当然、被告が弁護士を立ててきたならば、原告側も交通事故に強い経験豊富な弁護士に依頼し、一緒に裁判を戦うという選択をする必要が生じてきます。

弁護士費用は敗訴側が支払う訴訟費用として認められませんが、弁護士基準の損害賠償金や慰謝料を得られるという対価があれば、十分に支払う価値があるものです。また、交通事故の民事裁判は、一般的には半年、長ければ2年はかかると言われています。

この長期戦を戦うには、弁護士の助けが必ず必要になってくるでしょう。

訴状を受理した裁判所は、期日を指定

交通事故の民事裁判は、被害者(原告)が訴状を裁判所に提出し受理されると、本格的に「裁判」が始まります。

裁判所は郵送で第1回目の期日(口頭弁論日時)を指定してきます。

裁判所や「裁判」の内容によって差はありますが、訴状の提出日から約1~2カ月後となるケースが多いようです。

加害者(被告)は答弁書を提出する

期日を指定する際に、訴状の写しが送付されてきますので、加害者(被告)側は、訴えた内容について反論する答弁書を提出します。

この際、被告が答弁書の提出もせず、第1回目の期日を無視し出頭もしなかった場合は、裁判所は被害者(原告)の主張を認め、原告勝利の判決が下されます。

月に一度のペースで「裁判」は進められる

第1回目の期日においては、原告と被告の当事者同士がそれぞれの言い分を書面で提出します。その後は、お互いの言い分に対する反論が出尽くすまで、第1回目の期日の後、多くのケースでは月に一度のペースで期日は繰り返されていきます。

弁護士を雇った場合は、弁護士と被告が書面において主張のやり取りを行うため、多くの場合は原告自身が法廷に出席する必要はなくなります。

争点が整理され、証拠提出、証人喚問へ

双方の言い分が出し尽されると、裁判所は争点を整理します。

その争点に対し、それぞれの主張が正しいと証明するための証拠提出が行われます。

そして裁判所は証拠を確認し、必要であれば証人喚問が行われます。

以上の流れを何度も繰り返し、裁判所が判断を決めていくというのが「裁判」の流れです。

民事裁判では、いつでも「和解」が可能

なお、交通事故の民事裁判では、いつでも「和解」が可能となっています。

実際に、公判を重ねて判決が下される前に、原告と被告が話し合い、「和解」を成立させて告訴を取り下げるということがよくあるようです。

裁判所も、民事裁判では「和解」を勧める傾向が強いと言われています。

しかし「和解」に応じるということは、往々にして原告側が譲歩する形となるため、弁護士と十分に相談し、判断をする必要があります。

「裁判」の進行中に必要となる費用は?

交通事故の民事裁判においては、前述の通り敗訴した側が訴訟費用を負担することになっています。

判決が確定するまではどちらが負担するのかが決まらないことになりますから、まずはこれらの費用を発生させる側が、裁判所にあらかじめ必要とされる金額を納めておかなければなりません。

例えば、証人や専門家の鑑定などに関する費用は、呼んだ方がまず負担することになり、原告側が要請した場合は原告が、被告側が呼んだ場合は被告がまず裁判所に納めます。

これらの費用は、必ず発生するものではなく、「裁判」の内容や期日の回数や期間によってケースバイケースとなります。

法律で定められている費用

なお、訴訟を起こす際に裁判所に納付する手数料以外の費用については、民事訴訟費用等に関する法律に定められています。

納付義務

第11条 次に掲げる金額は、費用として、当事者等が納めるものとする。

一 裁判所が証拠調べ、書類の送達その他の民事訴訟等における手続上の行為をするため必要な次章に定める給付その他の給付に相当する金額

予納義務

第12条 前条第一項の費用を要する行為については、他の法律に別段の定めがある場合及び最高裁判所が定める場合を除き、裁判所は、当事者等にその費用の概算額を予納させなければならない。

※以上、民事訴訟費用等に関する法律、第2節手数料以外の費用、より抜粋

要するに、民事裁判において、「裁判」にかかる費用はすべて当事者のいずれかが、裁判所にあらかじめ納付しておかなければならないということです。

具体的に、どのような費用が必要になるか、以下に説明します。

証人などを呼んだ場合の旅費・日当

目撃者などを証人として呼んだ場合、当事者がその旅費や宿泊費、そして日当を負担しなければなりません。

日当は裁判所によって定められていますが、東京地方裁判所の場合は1日当たり8,000円以内と規定され、鑑定人、通訳人、翻訳人については、1日当たり7,600円以内となります。

この場合の交通費は、公共交通機関を利用した場合の金額となり、特段の事情がない限りタクシーなどの利用は認められません。

調書などのコピー代

民事裁判において、証人が法廷で話したことは、書記官が全て記録し、証言証書という書類にまとめられます。

公判が進む中で原告や被告が作る書類には、証人の証言を正確に記載する必要があるため、証言調書のコピーが必要になります。

裁判所内の書類は持ち出し禁止ですので、裁判所内の専門の業者に頼むことになりますが、1枚数十円と高価なため、コピー枚数が増えると思わぬ出費を強いられることがあります。

以上の他、専門家による交通事故の鑑定が必要となった場合、その鑑定費用も必要となります。

これらのような費用を負担するわけですから、「裁判」には必ず勝訴する必要があるのです。

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