物損事故から人身事故へ切り替えた方がいい6つの理由

公開日:2021年02月16日

交通事故

監修記事
この記事は佐藤 學(元裁判官、元公証人、元法科大学院教授)が監修いたしました。

物損事故と人身事故の違い

そもそも交通事故の「物損事故」(物損事故という言い方が一般的ですが、警察関係の扱いは「物件事故」といいます。以下の説明もこの趣旨になります)と「人身事故」とはどのようなもので、何が違うのでしょうか。

物損事故とは、車、店舗、商品、塀、電柱などの「物」が損傷しただけの交通事故のことです。「人が死傷していない」ことが前提です。
人身事故とは人が死傷(怪我や死亡)した交通事故のことです。車が壊れている場合でも、同時に人が死傷していたら人身事故になります。
つまり、人身事故と物損事故の違いは基本的に「交通事故によって人が怪我・死亡しているか/していないか」という点だけです。

物損事故での届出は人身事故より不利な面が多い

見分け方は非常にシンプルですが、実際に事故が起きた場合、物損事故と人身事故では取り扱われ方に雲泥の差があります。賠償金の額や事故後の調査(実況見分など)の有無、保険の適用範囲、加害者への処罰の有無など、物損事故は多くの面で人身事故に比べ、被害者にとって不利です。
本当は怪我をして人身事故なのに物損事故として届け出ると、被害者にさまざまな不利益が及ぶ可能性があります。

人身事故なのに物損事故として届け出てしまう理由

実際には怪我をして人身事故なのに、事故現場で物損事故として届け出てしまう人は意外と多いものです。なぜ物損事故にしてしまうのか、よくある理由を紹介することとします。

加害者から頼まれる

1つは、加害者から「頼むから物損扱いにしてください」と言われるパターンです。人身事故の場合、交通事故の原因となった違反行為の基礎点数に、交通事故の付加点数が加算され、運転免許の効力の停止や取消しになる可能性もありますし、刑事罰、すなわち罰金や懲役・禁錮が科せられたりします。そのため、加害者にとっては物損事故にした方が有利なのです。

加害者は「過失割合は私が全部悪いことにして良いので、物損にしましょう」などと言ってくることもあります。そのような場合、被害者としても「それならそれでも良いか」などと思ってしまい、本当は軽傷を負っているのに、物損事故として届け出てしまったりしてしまうのです。

その場では怪我をしていないと思ってしまう

交通事故に遭ったとき、実はむち打ち症などになっていても、被害者に怪我の自覚がないケースが多くあります。そういった場合、現場では「物損事故だ」と思って物損事故の届出をしてしまいます。しかし特に目立った外傷がなくても、数日後にむち打ち症の症状が出てきて「どうすれば良いのか?」と思い悩んでしまうことにもなりかねないのです。

物損事故として届け出たら治療費や慰謝料はどうなるのか?

加害者から頼まれたり、怪我に気づかなかったりして物損事故として届け出たとしても、後に予想外に重傷を負っていると判明するケースがあります。怪我が治り切らずに重大な後遺症が残ってしまう可能性もあるのです。そのような場合、物損事故扱いのままでは治療費や慰謝料を支払ってもらえないのでしょうか?

実際には当初に物損事故として届け出ていても、保険会社に「人身事故証明書入手不能理由書」という書類を提出すれば、人身事故の保険金を出してもらうことは可能です。治療費も慰謝料も支払われますし、自賠責保険も適用されます。

しかし物損事故のままにしておくと、さまざまな不利益が及びます。以下で物損事故から人身事故へと切り替えた方が良い理由を紹介していきます。

物損事故から人身事故へ切り替えるべき理由

切り替えをするには人身事故証明書入手不能理由書の提出が必要となる

交通事故が発生すると「交通事故証明書」が発行されますが、交通事故証明書には、「照合記録簿の種別」欄に、「人身事故」あるいは「物件事故」を表記することになっています。

交通事故証明書は、事故の特定や、事故に遭った車両の運転者、被害者、人身事故・物件事故の別なども、普通はこれで特定できます。

人身事故の交通事故証明書が発行されたら、どこに提出しても人身事故であることの証明ができます。例えば、保険会社に人身事故の交通事故証明書を提出すると、すぐに人身事故であることが分かるので、対人賠償責任保険や自賠責保険が適用されて、治療費や慰謝料などの人身事故の賠償金をスムーズに支払ってもらえます。

物損事故(交通事故証明書の「照合記録簿の種別」欄の表記は「物件事故」)のままにしておくと、保険会社に対して「実際には人身事故である」と説明するために「人身事故証明書入手不能理由書」を提出しなければなりません。この手続きを怠って怪我のことも言わずに放置していると、最終的に物損事故の低額な賠償金しか受け取れないリスクも発生します。

実況見分調書が作成される

人身事故が発生すると、警察官が事故現場の実況見分を行い、その結果をまとめた「実況見分調書」が作成されます。実況見分調書は、交通事故直後(あるいは後日)に警察官が事故現場の状況や事故状況の認識などをまとめ、図面や写真が添付された書類なので、非常に信用性が高いと考えられています。

実況見分調書は、もともと加害者の刑事事件で証拠として用いるために作成されるものですが、被害者と加害者の民事の示談においても重要な参考資料となります。被害者と加害者との間で「過失割合」についての争いがある場合、実況見分調書を見ると詳細な事故状況が分かり、正しい過失割合を判定しやすくなります。しかし、捜査機関にある実況見分調書を自由に閲覧できるわけではなく、その入手には検討を要する問題があります。

物損事故扱いのままでは、警察官は、実況見分調書を作成せず、簡単な図面(物件事故報告書)しか作成しませんが、これでは両当事者の過失割合を正しく判定するのに不足します。物損事故から人身事故に切り替えると、その時点で改めて実況見分が実施されるので、早期に人身事故に切り替えた方が良いのです。

ただし、時間が経過すると当事者の記憶もあいまいになりますし、当時の資料などもなくなるので、正確な記録を残すことが難しくなります。正しく事故の記録をとどめてもらうためには、早期に人身事故へ切り替える必要があります。

自賠責保険の適用もスムーズ

物損事故には、基本的に自賠責保険が適用されないので最低限の自賠責による保障も受けられません。保険会社に「実は人身事故です」という「人身事故証明書入手理由書」を提出すれば保険金の支給自体は行われますが、何もしないで黙っていたら保障を受けられない可能性も出てきます。

人身事故への切り替えをしたら、当然のように自賠責保険が適用されて保険金を支払ってもらえます。

物損事故のままでも、結局過失割合の問題が発生する

本当は怪我をしているのに物損事故として届け出る被害者は、加害者から「過失割合については私が100%悪いことにする、あなたに全額の損害賠償金を払います」などと言われ、これを信じて応じているケースが多くあります。しかしこの言葉を信じて物損扱いにしても、過失割合が100:0になるとは限りません。実際に保険会社が関与した場合、事故の状況を見て適切な過失割合を当てはめようとするからです。

過失割合は加害者の意向のみによって決まるわけではないので、結局は被害者にも一定の過失割合が割り当てられてしまい、賠償金が減額される可能性があります。しかもこの場合、実況見分調書が作成されていないので、事故状況を正確に証明する手段がない事態にもなりかねません。

そうであれば人身事故として届出をしてきちんと実況見分を行ってもらい、適正な過失割合を当てはめてもらう方が被害者にとって利益になります。

自動車の保有者へ責任追及しやすい

人身事故の場合には「自賠法」という法律が適用されて自動車の保有者に交通事故の責任が及びます。これを「運行供用者責任」と言います。(自賠法11条参照)運転者に資力がなかったり保険に入っていなかったりしても、保有者が保険に入っていたら保有者に賠償金を支払ってもらえるのです。

物損事故の場合、こうした規定はありません。運転者と保有者が異なる場合、人身事故に切り替えをすると請求先が増えて得になる可能性があります。

加害者が適切に処分される

交通事故の被害者は、時折「加害者の態度を許せない」と感じるケースがあります。全く反省がなかったり事故状況について平気で嘘をついたり一切謝罪の連絡をしてこなかったりした場合です。物損事故にしてしまうと、加害者には刑罰が科せられないので、加害者が事故を軽く考えて不誠実さが助長される傾向にあります。

人身事故の場合には、加害者に刑罰が科せられるので、加害者本人も少しでも罪を軽くするため、被害者に謝罪の意思を伝えるとともに、早期の示談を希望したりするものです。被害者としても、加害者が適切に刑事処分を受けた方がスッキリすることもあるでしょう。加害者に刑罰を与えるには、人身事故への切り替えが必要です。

物損事故から人身事故へ切り替える方法

もしも事故現場で物損事故として届け出てしまった場合、後から人身事故に切り替えができるのでしょうか?その方法などについて見ていきましょう。

物損事故から人身事故へ切り替えができる

交通事故が発生したとき、人身事故なのに物損事故として届け出てしまう人が多いので、警察でも事故後一定期間内であれば人身事故への切り替え申請を認めています。切り替えをするには1週間~10日以内くらいに行うことが必要です。あまり時間が経つと「今更言ってきても人身事故だったかどうか分からない」と判断されて、切り替え申請を受け付けてもらえません。

物損事故から人身事故へ切り替える手順

物損事故から人身事故へ切り替えるには、以下の手順で進めましょう。

①病院に行って診断書を作成してもらう

まずは病院に行き、医師による診察を受けて「診断書」を作成してもらいましょう。一般的な交通事故のケースでは「整形外科」を受診します。例えば交通事故でよくあるむち打ち症や骨折、打撲や捻挫などの場合には整形外科です。

ただし、頭部を損傷した場合には「脳神経外科」や「神経内科」などを受診すべきケースもありますし、目や耳、鼻など各部位によっても受診する科が異なります。分からなければ、まずは近くのクリニックや総合病院を受診して検査を受け、間違っていたら適切な診療科に回してもらいましょう。

②警察に持参して切り替えの申請書を提出する

診断書を入手したら、すぐに警察に持参して切り替えの申請書とともに提出しましょう。交通事故からまだあまり時間が経過していなければ、切り替えが受け付けられて人身事故への切り替えが認められます。

他方、事故から日数が経過している場合「この怪我と交通事故の因果関係が定かではない」として、申請が却下されてしまう可能性があります。

③実況見分が行われる

物損事故から人身事故に切り替えた場合、まだ実況見分が行われていない状態なので、被害者と加害者立会いのもとに実況見分が行われます。この実況見分の結果作成される「実況見分調書」は、示談交渉や裁判では重要な証拠として扱われます。捜査機関にある実況見分調書の入手方法には、加害者が、捜査中の場合、不起訴の場合、起訴され裁判係属中の場合、事件確定後の場合で、違いがあります。実況見分調書がある場合には、示談交渉であれ裁判であれ、交通事故の過失割合決定の際に非常に重要な資料となりますから、正確に作成してもらう必要があります。

被害者としても必ず実況見分に立ち会い、当時の状況をよく思い出して詳細に警察官に説明をしましょう。また加害者がどのようなことを述べているかも聞いておくべきです。後に異なることを言い出す加害者もいます。
被害者が立ち会えば、加害者の言い分だけで調書が作成され、被害者に不利な内容になるのを防ぐことができますし、事実に沿った内容が正確に記載されているかを確認することも可能になります。

上記のような手続きを経たうえ、後日、警察から資料が提供されるため、自動車安全運転センターから「交通事故証明書」(「照合記録簿の種別」欄に、「人身事故」と表記されたもの)の交付を受けることができます。

④警察で受け付けてもらえなかった場合の対処方法

以上のように警察で人身事故への切り替えが認められたら、人身事故の「交通事故証明書」が発行されるようになるので、保険金の請求などもスムーズです。しかし事故から時間が経ちすぎていて警察で切り替えを受け付けてもらえないケースもあります。その場合には、先に少し紹介しましたが「人身事故証明書入手不能理由書」を保険会社に提出しましょう。

人身事故証明書入手不能理由書とは、「人身事故証明書を提出できない理由を説明するための書類」です。保険会社に申請すれば書式を送ってもらえます。人身事故なのに物損事故として届け出てしまった理由などを書く欄があるので、記入して提出すれば人身事故扱いにしてもらえます。

この書類さえ提出すれば、警察では「物損事故」扱いでも保険会社では「人身事故」扱いになり、治療費や慰謝料、休業損害などの賠償金もきちんと支払ってもらえます。手間を惜しまずに手続きをしましょう。

けがをしていたら必ず人身事故として届け出ること

交通事故に遭ったときに重要なのは、現場で怪我をしている可能性があるなら必ず人身事故として届け出ることです。加害者から「免許が取り消されると生活できなくなる」などと頼まれても、応じるべきではありません。またその場で痛みなどを感じていなくても、追突事故などで首を大きくねじった場合などには「むち打ち症」になっている可能性があります。異常がありそうなら警察に「人身事故」と報告した方が良いでしょう。

当初から人身事故として届出をしていれば、その場で実況見分が行われて記憶が鮮明なうちに記録を残してもらえますし、後日警察署に行って切り替え申請をしたり別の日に実況見分に立ち会ったりする手間もかけずに済みます。

わからないことがあれば弁護士に相談

交通事故に遭ったとき、物損事故か人身事故か、保険や切り替え申請などと言われても、自分ではどう対応すればよいのか分からないケースもあります。また体調が悪かったり忙しかったりしていろいろ調べる手間をかけられない人もいることでしょう。そういった場合には、一度交通事故に詳しい弁護士に相談してみることをおすすめします。

弁護士であれば、あなたの状況を見て最適な対処方法を判断してくれます。早急に病院に行くよう言ってくれたりどこの病院を受診すべきか教えてくれたり、どこの警察に行けばいいかアドバイスしてくれたりします。保険会社との交渉を依頼すれば、人身事故であるのに人身事故扱いになっていない場合には、代わりに保険会社に連絡を入れて人身事故証明書入手不能理由書を取り寄せ、作成して提出してもらうことも可能です。

ひとりで悩んでいても時間が経つばかりで解決できないので、早めに弁護士に相談しましょう。

交通事故の相談をするなら、交通事故に積極的に取り組んでいて親身になってくれる弁護士を選びたいものです。各法律事務所のサイトを見て、よく話を聞いてくれそうな弁護士を選んで問い合わせをしてみましょう。

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この記事は佐藤 學(元裁判官、元公証人、元法科大学院教授)が監修いたしました。
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