物損事故から人身事故へ切り替えた方がいい6つの理由

最終更新日:2019年05月09日

交通事故

物損事故と人身事故の違い

そもそも交通事故の「物損事故」と「人身事故」とはどのようなもので、何が違うのでしょうか。

物損事故とは、車などの「物」が損傷しただけの交通事故です。「人が死傷していない」ことが前提です。
人身事故とは人が死傷(怪我や死亡)した交通事故です。車が壊れている場合でも、同時に人が死傷していたら人身事故になります。
つまり、人身事故と物損事故の違いは基本的に「交通事故によって人が怪我・死亡しているか/していないか」という点だけです。

物損事故での届出は人身事故より不利な面が多い

見分け方は非常にシンプルですが、実際に事故が起きた場合、物損事故と人身事故では取り扱われ方に雲泥の差があります。賠償金の額や事故後の調査(実況見分)の有無、保険の適用範囲、加害者への処罰の有無など、物損事故は多くの面で人身事故に比べて不利です。
本当はけがをして人身事故なのに物損事故として届け出ると、被害者にさまざまな不利益が及ぶ可能性があります。

人身事故なのに物損事故として届け出てしまう理由

実際にはけがをして人身事故なのに、事故現場で物損事故として届け出てしまう方は意外と多いものです。なぜ物損事故にしてしまうのか、よくある理由をご紹介します。

加害者から頼まれる

1つは、加害者から「頼むから物損扱いにしてください」と言われるパターンです。人身事故になると運転免許の点数が加算されて免許停止や取消になる可能性もありますし、刑事罰を与えられて罰金が発生したり懲役に行かなければならなくなったりします。そこで加害者にとっては物損事故にした方が有利です。

加害者は「過失割合は私が全部悪いことにして良いので、物損にしましょう」などと言ってくることもあります。すると被害者としても「それなら良いか」と思い、本当は軽傷を負っていても物損事故として届け出てしまいます。

その場ではけがをしていないと思ってしまう

交通事故に遭ったとき、実はむち打ちなどになっていても、被害者にけがの自覚がないケースが多々あります。そういった場合、現場では「物損事故だ」と思って物損の届出をします。しかし特に目立った外傷がなくても、数日後にむちうちの症状が出てきて「どうすれば良いのか?」と悩んでしまいます。

物損事故として届け出たら治療費や慰謝料はどうなるのか?

加害者から頼まれたりけがに気づかなかったりして物損事故として届け出たとしても、後に予想外に重傷を負っていると判明するケースがあります。けがが治り切らずに重大な後遺症が残ってしまう可能性もあるのです。その場合、物損事故扱いのままでは治療費や慰謝料を払ってもらえないのでしょうか?

実際には当初に物損事故として届け出ていても、保険会社に「人身事故証明書入手不能理由書」という書類を提出すれば、人身事故の保険金を出してもらうことは可能です。治療費も慰謝料も支払われますし、自賠責保険も適用されます。

しかし物損事故のままにしておくと、さまざまな不利益が及びます。以下で物損事故から人身事故へと切り替えた方が良い理由をご紹介していきます。

物損事故から人身事故へ切り替えるべき理由

切り替えをすると人身事故証明書が発行される

交通事故が発生すると「事故証明書」が発行されますが、事故証明書には「物損事故の証明書」と「人身事故の証明書」があります。人身事故の証明書が発行されたら、どこに提出しても人身事故であることの証明ができます。たとえば保険会社に人身事故証明書を提出するとすぐに人身事故であることがわかるので、対人賠償責任保険や自賠責保険が適用されて、治療費や慰謝料などの人身事故の賠償金をスムーズに支払ってもらえます。

物損事故のままにしておくと、保険会社に対して「実際には人身事故である」と説明するために「人身事故証明書入手不能届」を提出しなければなりません。この手続きを怠ってけがのことも言わずに放置していると、最終的に物損事故の低額な賠償金しか受け取れないリスクも発生します。

実況見分調書が作成される

人身事故が発生すると、警察が現場にやってきて実況見分が行われ、その結果をまとめた「実況見分調書」が作成されます。実況見分調書は、交通事故直後に警察官が現場の状況をまとめた図面などの書類なので非常に信用性が高いと考えられています。

実況見分調書はもともと加害者の刑事事件で資料として使うために作成されるのですが、被害者と加害者の民事の示談においても重要な参考資料となります。被害者と加害者との間で「過失割合」についての争いが発生した場合、実況見分調書を見ると詳細な事故状況がわかり、正しく過失割合を判定しやすくなるためです。

物損事故扱いのままでは簡単な「物損事故報告書」しか作成されませんが、これでは両当事者の過失割合を正しく判定するのに不足します。物損事故から人身事故に切り替えると、その時点であらためて実況見分が実施するので、早期に人身事故に切り替えた方が良いのです。

ただし時間が経過すると当事者の記憶もあいまいになりますし当時の資料などもなくなるので、正確な記録を残すことが難しくなります。正しく事故の記録をとどめてもらうためには、早期に人身事故へ切り替える必要があります。

自賠責保険の適用もスムーズ

物損事故には、基本的に自賠責保険が適用されないので最低限の自賠責による保障も受けられません。保険会社に「実は人身事故です」という届出をすれば保険金の支給自体は行われますが、何もしないで黙っていたら補償を受けられない可能性も出てきます。

人身事故へと切り替えをしたら、当然のように自賠責保険が適用されて保険金を支払ってもらえます。

物損事故のままでも、結局過失割合の問題が発生する

本当はけがをしているのに物損事故として届け出る被害者は、加害者から「過失割合については私が100%悪いことにする、あなたに全額の損害賠償金を払います」などと言われて信じているケースが多々あります。しかしこの言葉を信じて物損扱いにしても、過失割合が100:0になるとは限りません。実際に保険会社が入ったら、事故の状況を見て適切な過失割合をあてはめようとするからです。

過失割合は加害者の意向のみによって決まるわけではないので、結局は被害者にも一定の過失割合が割り当てられてしまい、賠償金が減額される可能性があります。しかもこの場合、実況見分調書が作成されていないので、事故状況を正確に証明する手段がない事態にもなりかねません。

それであれば人身事故として届出をしてきちんと実況見分を行ってもらい、適正な過失割合を当てはめてもらう方が被害者にとって利益があります。

自動車の所有者へ責任追及しやすい

人身事故の場合には「自賠法」という法律が適用されて自動車の所有者に交通事故の責任が及びます。これを「運行供用者責任」と言います。運転者に資力がなかったり保険に入っていなかったりしても、所有者が保険に入っていたら所有者に賠償金を支払ってもらえるのです。

物損事故の場合、こうした規定はありません。運転者と所有者が異なる場合、人身事故に切り替えをすると請求先が増えて得になる可能性があります。

加害者が適切に処分される

交通事故の被害者は、時折「加害者の態度を許せない」と感じるケースがあります。まったく反省がなかったり事故状況について平気でウソをついたり一切謝罪の連絡をしなかったりするからです。物損事故にしてしまうと、加害者には刑事罰が適用されないので、加害者が事故と軽く考えて不誠実さが助長される傾向にあります。

人身事故の場合には、加害者に刑事罰が適用されるので、加害者本人も少しでも罪を軽くするために謝罪の連絡を行って早期の示談を希望したりするものです。被害者としても、加害者が適切に刑事処分を受けた方がスッキリすることもあるでしょう。加害者に刑事罰を与えるには、人身事故への切り替えが必要です。

物損事故から人身事故へ切り替える方法

もしも事故現場で物損事故として届け出てしまった場合、後から人身事故に切り替えができるのでしょうか?その方法と共にみていきましょう。

物損事故から人身事故へ切り替えができる

交通事故が発生したとき、人身事故なのに物損事故として届け出てしまう方は多いので、警察でも事故後一定期間内であれば人身事故への切り替え申請を認めています。切り替えをするには1週間~10日以内くらいに行うことが必要です。あまり時間が経つと「今更言ってきても人身事故だったかどうかわからない」と判断されて、切り替え申請を受け付けてもらえません。

物損事故から人身事故へ切り替える手順

物損事故から人身事故へ切り替えるには、以下の手順で進めましょう。

①病院に行って診断書を書いてもらう

まずは病院に行き、医師による診察を受けて「診断書」を書いてもらいましょう。一般的な交通事故のケースでは「整形外科」を受診します。たとえば交通事故でよくあるむちうちや骨折、打撲や捻挫などの場合には整形外科です。

ただし、頭部を損傷した場合には「脳神経外科」や「神経内科」などを受診すべきケースもありますし、目や耳、鼻など各部位によっても受診する科が異なります。わからなければ、まずはお近くのクリニックや創業病院を受診して検査を受けて、間違っていたら適切な診療科に回してもらいましょう。

②警察に持参して切り替えの申請書を提出する

診断書を入手したら、すぐに警察に持参して切り替えの申請書と共に提出しましょう。交通事故からまだあまり時間が経過していなければ、切り替えが受け付けられて人身事故への切り替えが認められます。

一方事故から日数が経過している場合「このけがと交通事故の因果関係が定かではない」として、申請が却下されてしまう可能性があります。

③実況見分が行われる

物損事故から人身事故に切り替えた場合、まだ実況見分が行われていない状態なので、被害者と加害者立会のもとに実況見分が行われます。この実況見分の結果作成される「実況見分調書」は、交通事故の過失割合決定の際に非常に重要な資料ですから正確に作成してもらう必要があります。

被害者としても必ず実況見分に立会い、当時の状況をよく思いだして詳細に警察官に説明をしましょう。また加害者がどのようなことを述べているかも聞いておくべきです。後に異なることを言い出す加害者もいます。

④警察で受け付けてもらえなかった場合の対処方法

以上のように警察で人身事故への切り替えが認められたら人身事故証明書が発行されるようになるので、保険金の請求などもスムーズです。しかし事故から時間が経ちすぎていて警察で切り替えを受け付けてもらえないケースもあります。その場合には、先に少し紹介しましたが「人身事故証明書入手不能理由書」を保険会社に提出しましょう。

人身事故証明書入手不能理由書とは、「人身事故証明書を提出できない理由を説明するための書類」です。保険会社に申請すれば書式を送ってもらえます。人身事故なのに物損事故として届け出てしまった理由などを書く欄があるので、記入して提出すれば人身事故扱いにしてもらえます。

この書類さえ提出すれば、警察では「物損事故」扱いでも保険会社では「人身事故」扱いになり、治療費や慰謝料、休業損害などの賠償金もきちんと払ってもらえます。手間を惜しまずに手続きしましょう。

けがをしていたら必ず人身事故として届け出ること

交通事故に遭ったときに重要なのは、現場でけがをしている可能性があるなら必ず人身事故として届け出ることです。加害者から「免許が取り消されると生活できなくなる」などと頼まれても、応じるべきではありません。またその場で痛みなどを感じにくくても、追突事故などで首を大きくねじった場合などには「むちうち」になっている可能性があります。異変がありそうなら警察に「人身事故」と報告した方が良いでしょう。

当初から人身事故として届出をしていれば、その場で実況見分が行われて記憶が鮮明なうちに記録を残してもらえますし、後に警察署に行って切り替え申請をしたり別の日に実況見分に立ち会ったりする手間もかけずに済みます。

わからないことがあれば弁護士に相談

交通事故に遭ったとき、物損事故か人身事故か、保険や切り替え申請などと言われても、自分ではどう対応すればよいのかわからないケースもあります。また体調が悪かったり忙しかったりして色々調べる手間をかけられない方もおられるでしょう。そういった場合には、一度交通事故に詳しい弁護士に相談してみることをお勧めします。

弁護士であれば、あなたの状況をみて最適な対処方法を判断してくれます。早急に病院に行くよう言ってくれたりどこの病院を受診すべきか教えてくれたり、どこの警察に行けばいいかアドバイスしてくれたりします。保険会社との交渉を依頼すれば、代わりに保険会社に連絡を入れて人身事故証明書入手不能届を取り寄せ、作成して提出してもらうことも可能です。

一人で悩んでいても時間が経つばかりで解決できないので、早めに弁護士に相談しましょう。

交通事故の相談をするなら、交通事故に積極的に取り組んでいて親身になってくれる弁護士を選びたいものです。各法律事務所のサイトを見て、よく話を聞いてくれそうな弁護士を選んで問合せをしてみましょう。

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