後遺障害2級の主な症状と慰謝料相場を解説

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後遺障害2級

後遺障害2級は、眼と両上下肢の状態により、1号から4号に分類されています。

14ある後遺障害等級のうち2番目の等級として重篤な症状を含む一方、検査数値や身体外形といった客観的条件が決め手となるのが特徴です。

後遺障害2級の労働能力喪失率は100%とされ、働くことが全くできない身体状態となるため、家計への影響は深刻といえます。それだけに、十分な補償を手に入れて、生活基盤を安定させたいものです。

後遺障害2級の認定を含む慰謝料請求の手続を確実かつ効率的に行うには、専門家の力を借りるのが一番です。
交通事故に強い弁護士に依頼して、被害の実状に適った十分な慰謝料を手に入れましょう。

後遺障害2級の認定基準~該当する症状は?

後遺障害2級の症状は、次の4つです。

1号 一眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの
2号 両眼の視力が0.02以下になったもの
3号 両上肢を手関節以上で失ったもの
4号 両下肢を足関節以上で失ったもの

このいずれかの症状があれば、後遺障害2級の認定を申請できます。

各症状について解説します。

1号)一眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの

1号の症状は、片方の眼が失明し、他方の眼の視力が0.02以下になることです。

「失明」とは、次のいずれかをいいます。

  • 眼球が事故により直接失われた、または手術して眼球を取り出した
  • 光の明暗が全く分からない
  • 光の明暗が辛うじて分かる

「光の明暗が辛うじて分かる」の具体的症状

「光の明暗が辛うじて分かる」とは、次のいずれかの状態です。

  • 暗室において目の前で点滅した照明の明暗を区別できる。
  • 目の前で上下左右に動かされた手のひらの動きの方向が分かる。

視力0.02以下の片眼だけで物を見分けることはほとんどできないため、相当な強度のメガネやコンタクトレンズがなければ、通常の生活を送ることは難しいでしょう。

片眼失明、他眼視力低下を症状とする他等級

片眼を失明し他眼の視力が下がる症状には、他眼の視力に応じて、次の他等級があります。

  • 他眼の視力が0.06以下なら3級1号
  • 他眼の視力が0.1以下なら5級1号
  • 他眼の視力が0.6以下なら7級1号

視力検査の際、何となく答えたものがたまたま正しかったため「見える」と診断されてしまうと、他眼視力が実際は0.02以下なのに0.06以下などと診断され、2級より下位の等級になってしまいます。

等級が下がれば、逸失利益や慰謝料が減額されるので、注意が必要です。

視力検査で分からない文字などは、何となく答えるのでなく、「分かりません」とはっきり答えるようにしましょう。

2号)両眼の視力が0.02以下になったもの

2号は、両眼の視力がいずれも0.02以下になることを症状とします。

両眼の視力が0.02以下になる原因は、眼の屈折異常(眼球の長さが変わり、角膜と水晶体で屈折した光が網膜上で像を結べなくなって、物がぼやけて見えること)がほとんどです。
屈折異常の場合の視力は、裸眼視力でなく、メガネ・コンタクトレンズ・眼内レンズによる矯正視力を基準とします。

斜視(片方の眼が目標と違う方向に向いてしまうこと)など屈折異常によらない視力低下については、裸眼視力が基準です。

視力の測定は、万国式試視力表を用います。
眼科でよく見かける、ランドルト環という黒い円の切れ目や、アラビア数字・カタカナ・ひらがなを読み取る表のことです。

両眼の視力がいずれも0.02以下になると、裸眼で物を見分けることはほとんどできません。

やはり通常の生活を送るには、かなりな強度のメガネやコンタクトレンズが必要になります。

両眼の視力低下を症状とする他等級

両眼の視力が下がる症状には、その視力に応じて、次の他等級があります。

  • 両眼の視力が0.06以下なら4級1号
  • 両眼の視力が0.1以下なら6級1号
  • 両眼の視力が0.6以下なら9級1号

視力検査の際、何となく答えたものがたまたま正しかったため「見える」と診断されると、両眼視力が実際は0.02以下なのに0.06以下などと診断される可能性があります。

2級より下位の等級となり、逸失利益や慰謝料が減額されてしまう点は、1号の場合と同じです。

視力検査では勘や感覚で答えるのではなく、判別できないものは「分かりません」とはっきり伝えましょう。

3号)両上肢を手関節以上で失ったもの

両上肢を手関節以上で失うのが3号の症状です。

「上肢を手関節以上で失う」とは、次のいずれかをいいます。

  • 肘関節と手関節(手首の関節)の間で上肢が切り離された
  • 手関節において、橈骨(とうこつ。2本ある前腕骨のうち親指側の骨)・尺骨(しゃっこつ。2本ある前腕骨のうち小指側の骨)と手根骨(しゅこんこつ。手のひらの末端にある有頭骨など8つの骨のまとまり)とが切り離された

手の骨

両上肢を手関節以上で失うと、両上肢があたかも棒のようになって、両手を使うことが全くできなくなり、生活に大きな支障を来します。

片上肢を手関節以上で失うと5級4号

片上肢を手関節以上で失うのは5級4号の症状です。

他上肢の手は残るので、2級ほどの不便さはありませんが、重い物を持つなど、両手が必要な場面で支障を来します。

義手により機能と外観をカバー

3号症状では、手の働きや外観を補うため、義手が作られることがあります。

義手には、指の開閉など実際の手と同じ働きをするものと、手があるように装うためだけのものとがあります。

4号)両下肢を足関節以上で失ったもの

4号の症状は、両下肢を足関節(足首の関節)以上で失うことです。

「下肢を足関節以上で失う」とは、次のいずれかをいいます。

  • 膝関節と足関節との間で下肢が切り離された
  • 足関節において、脛骨(けいこつ)・腓骨(ひこつ)と距骨(きょこつ)とが距腿関節で切り離された

足関節

両下肢を足関節以上で失うと、両下肢が足のない棒のような状態になり、立つ・歩くなど生活の基本動作ができなくなります。

片下肢を足関節以上で失うと5級5号

片下肢を足関節以上で失うのは5級5号の症状です。

他下肢には足があるので、不便さは2級ほどではありませんが、両足での踏ん張りが利かない分、立位や歩行のバランスが崩れて転倒しやすくなります。

義足の主目的は移動機能のカバー

4号症状では、義足が作られることがあります。

足は、移動など生活動作に欠かせない部位であるため、実際の足と同じ働きをする義足が作られるのが普通です。

身体の見た目を装うため、実際の足と同じ働きをすると同時に、実際の足に似せて作られる義足もあります。

後遺障害5級の症状が複数ある場合、併合2級となる可能性

後遺障害5級の症状が2つ以上あると、「併合2級」の認定がなされます。「等級の併合」というシステムです。

たとえば、1つの事故で、両眼視力が0.02以下になると同時に、両上肢を手関節以上で失った場合、5級の2号と3号の2症状に該当するため、5級から3級繰り上がった2級が最終等級となり、「併合2級」と認定されます。

併合2級の自賠責保険金と慰謝料額の基準となる等級は、併合後の2級です。
一方、逸失利益の決め手となる労働能力喪失率については、裁判例も、併合後の2級を基準とするもの、併合前の5級を基準とするもの、併合後の2級を基準としつつ事例に応じて減率するものという3つの考え方に分かれています。

後遺障害の認定期間は最短で1カ月、通常2,3カ月が目安

後遺障害を理由に自賠責保険金の支払請求を受けた自賠責損害調査事務所が損害調査を終えるまでの期間の内訳は、次のとおりです(2019年度の統計)。

30日以内 75.90%
31日~60日 12.40%
61日~90日 6.10%
90日超 5.60%

参考リンク:損害保険料率算定機構「自動車保険の概況 2020年度版」37ページ

後遺障害認定は損害調査の一環として行われ、認定結果は損害調査終了時に明らかになることから、上記の各期間は後遺障害認定に要する期間ととらえることができます。

30日以内が8割近いものの、60日以内あるいは90日以内の事例もあることから、長く見積もって、後遺障害の認定には、2~3か月かかるのが通常と心得ておけばよいでしょう。

後遺障害2級の慰謝料の相場

後遺障害の慰謝料の決め方には、

  • 自賠責基準
  • 任意保険基準
  • 弁護士基準(裁判基準)

の3つがあります。

自賠責基準による後遺障害2級の慰謝料相場

自賠責保険から支払われる後遺障害2級の慰謝料額は、998万円(2020年3月31日までの事故は958万円)です。

自賠責保険から支払われる慰謝料額は、後遺障害等級ごとに決められていて、後遺障害慰謝料の自賠責基準と呼ばれています。
賠償実務では、自賠責基準が後遺障害慰謝料の最低額とされています。

参考リンク:国土交通省WEBサイト「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準 第3の2(1)②」※PDFファイル

任意保険基準による後遺障害2級の慰謝料相場

後遺障害慰謝料の基準として、任意保険を扱う保険会社が個別に定める任意保険基準があります。

任意保険基準による慰謝料は、自賠責基準より少し高く、後述の弁護士基準(裁判基準)よりはるかに低い金額です。
後遺障害の状態次第では、自賠責基準と同額を提示する保険会社もあるといわれています。

任意保険基準は保険会社の内部情報として公にされてきませんでしたが、最近では、これをWEB上で公開している保険会社もあり、たとえば損害保険ジャパン株式会社が定める任意保険基準は、次の表のとおりです。

後遺障害者等級 父母・配偶者・子のいずれかがいる場合 左記以外
第1級 1,850万円 1,650万円
第2級 1,500万円 1,250万円
第3級 1,300万円 1,000万円
第4級 900万円
第5級 700万円
第6級 600万円
第7級 500万円
第8級 400万円
第9級 300万円
第10級 200万円
第11級 150万円
第12級 100万円
第13級 70万円
第14級 40万円

損害保険ジャパン株式会社WEBサイト「WEB約款」より転載)

2級の慰謝料は1,500万円または1,250万円で、自賠責基準の998万円より少し高く、次に紹介する弁護士基準(裁判基準)よりずっと安くなっています。

弁護士基準(裁判基準)による後遺障害2級の慰謝料相場

弁護士に加害者側との慰謝料交渉を依頼すると、もらえる慰謝料は大幅に増えます。弁護士は弁護士基準(裁判基準)を基に慰謝料交渉を行うからです。

弁護士基準(裁判基準)とは、慰謝料額を判示した裁判例を基に算出された慰謝料額の目安のことで、弁護士が示談交渉や裁判での慰謝料基準とすることから、このように呼ばれています。

弁護士基準(裁判基準)は、日弁連交通事故相談センター東京支部が発行する「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称「赤い本」)に掲載されています。
この「赤い本」によれば、弁護士基準(裁判基準)による後遺障害2級の慰謝料は2,370万円です。

後遺障害2級の慰謝料相場を3つの基準で比較
自賠責基準 任意保険基準 弁護士基準(裁判基準)
998万円 1,500万円
1,250万円
2,370万円

弁護士基準(裁判基準)を用いると、自賠責基準の2倍以上、任意保険基準より1,000万円前後高い慰謝料となることが分かります。
交通事故による精神的損害の穴埋めはもちろん、弁護士費用も賄える金額です。

弁護士基準(裁判基準)による2,370万円という金額は、弁護士に依頼したときのあくまで相場(通常の目安)ですので、特に交通事故に強い有能な弁護士であれば、この金額以上の慰謝料となる可能性もあるでしょう。

後遺障害2級の逸失利益の計算方法

交通事故により後遺障害が残ると、事故前のように働くことができなくなり、労働収入が減ってしまいます。
こうした減収は、事故に遭わなければ得られたであろう収入、つまり「逸失利益」として、加害者側に請求することが可能です。

後遺障害による逸失利益は、国が定めた「支払基準」により、次の式で計算されます。
“収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数“

後遺障害2級の労働能力喪失率は、100%です。
働くことが全くできなくなり、労働収入がゼロになることを意味します。

参考リンク:国土交通省WEBサイト「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準 第3の1」※PDFファイル

後遺障害2級の逸失利益の労働能力喪失期間

労働能力喪失期間とは、後遺障害が残ったことにより事故前と同じ仕事ができなくなるであろう将来の期間のことです。就労可能年数ともいわれます。

労働能力喪失期間は、支払基準により、後遺障害確定時(症状固定時)の年齢だけを基に決められていて、等級は問われていません。

たとえば、後遺障害確定時30歳の人であれば、後遺障害2級であっても14級であっても、労働能力喪失期間(就労可能年数)は37年です。

逸失利益額は、等級を問わない労働能力喪失期間より、等級ごとに異なる労働能力喪失率の影響を大きく受けるといえるでしょう。

参考リンク:国土交通省WEBサイト「就労可能年数とライプニッツ係数表」※PDFファイル

裁判例に見る後遺障害2級の示談金

後遺障害2級の示談金(逸失利益と慰謝料)について当事者間で争いとなり、裁判になった場合、裁判所はどのような判断をしているのでしょうか。

ここでは、事例ごとにマチマチになりやすい慰謝料でなく、いくつかの事例を通してある程度の傾向を掴みやすい逸失利益をめぐる裁判例を見ていきます。

裁判では支払基準によらない逸失利益算定を求めることも可能

判例によれば、裁判所は、支払基準に縛られることなく、労働能力の喪失率や喪失期間を認定できるとされています(最高裁判決平成18年3月30日)。

判例がそのように考える理由は、次の2点です。

  • 支払基準は、保険会社が保険金を支払う際に従うべき基準であること
  • 裁判の目的は、個々の争いにふさわしい具体的な解決をすることであり、逸失利益の算定についていえば、支払基準という一律の基準によるのでなく、各事例の実状に適った算定をすることが、争いの具体的解決になること

被害者は、裁判において、支払基準を超える労働能力の喪失率や喪失期間を主張し、それを基に算定された逸失利益を加害者側に求めることができます。

実際に2級の逸失利益が争われた裁判例を見てみましょう。

判決年月日 年齢 性別 症状 労働能力喪失率 労働能力喪失期間    特徴
①大阪地裁
平成26年8月27日
37歳 女 右大腿切断(4級5号)
顔面左側部陥没(7級12号)
左膝関節の不安定感(8級7号)
脊柱の変形(11級7号)
脳挫傷痕(12級14号)
右伝音難聴(14級3号)
(併合2級)
100%(100%) 30年(30年) 支払基準どおりの認定。
②東京地裁
平成21年12月24日
36歳 男 高次脳機能障害(3級3号)
右脚関節機能障害(10級10号)
右下腿皮膚欠損による醜状障害(12級14号)
右頭部開頭術後痕(12級14号)
(併合2級)
100%(100%) 31年(31年) 支払基準どおりの認定。
③大阪地裁
平成23年1月26日
58歳 男 高次脳機能障害(3級3号)
複視(10級2号)
味覚の減退(14級9号相当)
(併合2級相当)
100%(100%) 11年(13年) ほぼ支払基準どおりの認定。
④大阪地裁
平成20年4月28日
26歳 男 高次脳機能障害(3級3号)
聴力障害(10級5号)
(併合2級))
100%(100%) 41年(41年) 支払基準どおりの認定。

後遺障害2級の裁判例は併合級をめぐるものがほとんど

ここに挙げた代表的裁判例を見る限り、2級の逸失利益が争われる裁判は、併合2級をめぐるものがほとんどかと思われます。

2級の症状は、身体外形や検査数値といった客観的な形で表れることから、症状の有無や程度を争いにくく、2級だけの症状では裁判に持ち込めないためではないでしょうか。

通常の後遺障害2級の裁判例は少なめ

「介護を要する後遺障害2級」の裁判例に比べ、通常の後遺障害2級の裁判例は少ないようです。

その理由は、次の2つかと思われます。

  • 通常の後遺障害2級の症状は身体外形や検査数値だけで判断できるため、被害者と保険会社との間で等級の対立が生じにくいこと
  • 2級は1号から4号までいずれも重篤な症状であることから、保険会社も逸失利益を低く主張しずらいこと

後遺障害2級の逸失利益については支払基準に沿うのが裁判例の大勢

後遺障害2級の逸失利益については支払基準に沿うのが、裁判例の大勢かと思われます。

保険会社が支払基準より低い労働能力の喪失率や喪失期間を主張するのに対し、裁判所は支払基準が定める喪失率や喪失期間が妥当と考える姿勢が表れているといえるでしょうか。

後遺障害2級で障害者手帳はもらえる?

身体障害者手帳には、医療費の助成、所得税や住民税の減額、鉄道やバスなど公共交通機関の運賃割引など、いくつかのメリットがあるため、後遺障害2級の認定を受けたら身体障害者手帳ももらいたいところです。

身障者手帳の取得には障害等級6級以上が必要

身障者手帳をもらうには、身体障害者障害程度等級表(障害等級)6級以上に該当することが必要とされています。

後遺障害2級に相当する身障者障害等級は、次のとおりです。

後遺障害2級 身障者障害等級
1号 視覚障害1級・2級
2号 視覚障害1級・2級
3号

肢体不自由(上肢)1級

4号 肢体不自由(下肢)2級

参考リンク:厚生労働省WEBサイト「身体障害者障害程度等級表」※PDFファイル

後遺障害2級のいずれの症状も障害等級6級以上に該当する可能性があります。
ただ、該当するかどうかを実際に決めるのは、都道府県知事、指定都市市長または中核市市長です。

身障者手帳の申請先は、最寄りの福祉事務所または市区町村役場です。
詳しい手続については、お住いの市区町村役場にお問い合わせください。

参考リンク:厚生労働省WEBサイト「障害者手帳」

労災の場合、後遺障害2級でもらえる金額は?

就業中または通勤途中の交通事故により後遺障害2級となった場合、労働災害として、労災保険の補償を受けられます。

後遺障害2級は労災障害2級に当たり、補償内容は次のとおりです。

労災障害2級の補償内容
障害補償年金(就業中)
障害年金(通勤途中)
1年間につき、給付基礎日額×277日分
障害特別年金 1年間につき、算定基礎日額×277日分
障害特別支給金 320万円

給付基礎日額とは、事故前3か月間の賃金総額を暦日数で割った1日当たりの賃金額をいいます。

算定基礎日額とは、事故前1年間に支払われたボーナスなど特別給与の総額を365日で割った額です。

障害特別支給金とは、事故後の社会復帰を促すために支給されるお金をいいます。

障害補償年金・障害年金・障害特別年金が1年分を2か月分ずつ偶数月に支払われるのに対し、障害特別支給金は全額が1回で支払われます。

慰謝料は労災での支払いの対象外

労災補償は、労災による減収の穴埋めと社会復帰支援を目的とするため、交通事故による精神的ダメージへの賠償である慰謝料は労災保険から支払われません。

慰謝料は、精神的ダメージを与えた加害者側に請求することになります。

労災事故の場合は会社に対する損害賠償請求も視野に

交通労災の被害者は、労災補償を受ける他に、自分の勤務先会社に対して損害賠償を請求することができます。

会社への損害賠償請求は、安全配慮義務違反または使用者責任のいずれかを理由に行うことが可能です。

安全配慮義務違反とは、会社が従業員の生命や身体の安全を保つ義務を怠ることをいいます(民法415条)。
たとえば、会社が社用車の点検整備を怠ったため、その車を運転した従業員が事故を起こして後遺障害2級の傷害を負った場合、受傷は会社の安全配慮義務違反によるものとされます。

使用者責任とは、従業員が業務中に他人に与えた損害を会社が賠償する責任のことです(民法715条)。
たとえば、会社の同僚が運転する車に同乗中、運転者の不注意で事故が起き、同乗者が後遺障害2級の傷害を負った場合、会社は、運転者の使用者として、同乗従業員が負った傷害について損害賠償をしなければなりません。

損害賠償は労災補償の分だけ減額される

労災被害者が労災補償を受けた後に勤務先会社に損害賠償を請求した場合、損害賠償額は労災補償の分だけ減額されます(最高裁判決昭和52年10月25日)。

損害賠償も満額受け取れるとすると、すでに労災補償された分まで受け取ることになり、二重取りになってしまうからです。

後遺障害2級認定を獲得するための重要なポイント

交通事故に遭い、後遺障害2級の症状が残ったら、逸失利益や慰謝料を自賠責保険から確実にもらうため、ぜひ2級認定を取りたいものです。

後遺障害2級の認定を取るには、次の2点が重要となります。

  • 認定取得につながる診断書を医師に書いてもらう
  • 2級申請は被害者請求で行う

後遺障害診断書は、等級認定において非常に重要

後遺障害の等級認定審査において特に重要なのが、医師の作成する後遺障害診断書です。

後遺障害の知識と経験豊かな医師を主治医に

等級認定の審査に通り、2級をもらえるだけの診断書となるかどうかは、作成する医師の後遺障害についての知識と経験が決め手になります。

医師を選べるのであれば、後遺障害の知識と経験が豊かな医師に診てもらうようにしましょう。

効果的な診断書作成は医師との良好な関係から

2級審査に通るだけの診断書を書こうという気持ちを医師に持ってもらうことも重要です。

それにはまず、医師の指示どおり真面目に診療に通いましょう。
真面目に通ったにもかかわらず後遺障害が残ったとなれば、医師としても、審査に通る診断書を書こうという気持ちになるはずです。

後遺障害等級の認定率は、約5%という狭き門です。
その狭き門を突破する最大の武器は、真面目な診療態度を通じて培った医師との良好な関係といっても過言ではありません。

申請手続きは事前認定よりメリット大の被害者請求で

後遺障害2級の認定申請は、事前認定でなく被害者請求で行いましょう。

後遺障害の認定申請には、加害者側の保険会社が行う方法(事前認定)と、被害者自身が行う方法(被害者請求)とがあります。

両者にはそれぞれ一長一短ありますが、被害者請求の方が高い等級をもらえる可能性が高いといわれています。

事前認定では、被害者自身の手間が省ける反面、保険会社に申請を任せてしまうため、被害者の意向に適った申請手続をしてもらえる保障がありません。
これに対し被害者請求では、被害者自身の手間はかかりますが、書類作成や資料集めに頑張れば、それに見合った等級をもらえる見込みがあるわけです。

まとめ

交通事故により後遺障害2級の症状が残った場合、まず必要なのは2級認定の申請です。

2級認定がもらえたら加害者側と逸失利益や慰謝料の交渉となりますが、示談に至らなければ調停や裁判によって決めることになります。

生活上のメリットの多い身体障害者手帳の申請はもちろん、仕事にまつわる事故なら労災補償の申請も必要です。

これらの手続は事故後の被害回復と生活安定のために不可欠で、確実かつ迅速に行わなければなりません。
特に、後遺障害2級では労働能力が100%失われ、労働収入が途絶えることから、手続の確実性と迅速性が他等級以上に求められます。

ただ、交通事故は一生のうち何度もあることではないので、こうした一連の手続に手慣れた人はほとんどいないといってよいでしょう。

そこで必要なのが、交通事故にまつわる一連の手続を担ってくれる専門職の存在です。その専門職こそ、交通事故に強い弁護士に他なりません。
交通事故で後遺障害2級のような重大な被害を受けた場合は、必ず交通事故に強い弁護士に相談することをおすすめします。

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