後遺障害6級の主な症状と慰謝料相場を解説

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後遺障害6級

後遺障害6級は、障害の部位と状態により、1号から8号に分類されています。
片手指の欠損と脊椎変形の症状は、全等級の中で最も重篤です。

国の基準では6級の労働能力喪失率は67%で、事故前の3割強しか働けないことを意味します。

6級の特徴は、「著しい変形」「著しい運動障害」など、評価を要する症状が含まれることです。
診療医により6級該当の判断に差が出ることは、ある程度避けられません。

交通事故により後遺障害6級の症状が残り、6級の認定取得と慰謝料請求を確実かつ効率的に行うには、専門家の力を借りるのが一番です。
交通事故に強い弁護士に相談して、被害の実状に適った十分な慰謝料を手に入れましょう。

後遺障害6級の認定基準~該当する症状は?

後遺障害6級は、次の表のとおり、1号から8号までの8症状を内容とします。

後遺障害8級認定に必要な条件
1号 両眼の視力が0.1以下になったもの
2号 咀嚼または言語の機能に著しい障害を残すもの
3号 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
4号 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40㎝以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
5号 脊柱に著しい変形または運動障害を残すもの
6号 一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
7号 一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
8号 一手の五の手指または親指を含み四の手指を失ったもの

このいずれかの症状があれば、後遺障害6級の認定を申請することができます。
各症状について解説します。

1号)両眼の視力が0.1以下になったもの

1号の症状は、両眼の視力がいずれも0.1以下になることです。

両眼の視力が0.1以下になる原因は、眼の屈折異常(眼球の長さが変わり、角膜と水晶体で屈折した光が網膜上で像を結べなくなって、物がぼやけて見えること)がほとんどです。
その場合の視力は、裸眼視力でなく、メガネ・コンタクトレンズ・眼内レンズによる矯正視力を基準とします。

斜視(片方の眼が目標と違う方向を向いてしまうこと)など屈折異常によらない視力低下については、裸眼視力が基準です。

視力の測定は、万国式試視力表を用います。
眼科でよく見かける、ランドルト環という黒い円の切れ目や、アラビア数字・カタカナ・ひらがなを読み取る表のことです。

両眼の視力が0.1以下になると、裸眼で物を見分けることはほとんどできず、メガネやコンタクトレンズなど強度の視力矯正器具が必要になります。

片眼だけの視力が0.1以下になれば10級1号

視力が、片眼0.1以下でも他眼が0.1を超えれば、10級1号に当たります。
たとえば、右眼0.1、左眼0.3になった場合です。

他眼視力が0.1を超える分、両眼0.1以下の6級より見えやすい反面、逸失利益や慰謝料といった損害賠償額は6級より少なくなります。

実際は両眼とも0.1以下なのに片眼だけが0.1以下と診断されないよう、視力測定において自信のない項目については「分かりません」とはっきり答えましょう。

2号)咀嚼または言語の機能に著しい障害を残すもの

2号は、咀嚼(そしゃく)または言語の機能に著しい障害が残ることを症状とします。

咀嚼機能に著しい障害が残ると粥程度しか食べられない

「咀嚼の機能に著しい障害を残す」とは、粥または粥程度のもの(おじや、軟らかいうどんなど)以外食べられない状態のことです。

「咀嚼」とは、食べ物を消化できる状態にまで口の中で噛み潰す動作をいいます。
粥などは、こうした動作をほとんどしなくても消化できるため、本人は食べることができるわけです。

ただ、食事が粥などに限られることで、栄養不足となり、体力低下や病気を招くおそれがあります。

言語機能の著しい障害は発音とコミュニケーションの妨げに

「言語機能の著しい障害」の代表的症状は、次の4種の語音のうち2種の発音ができないことです。

  • 口唇音(ま行・ぱ行・ば行・わ行の音、および「ふ」)
  • 歯絶音(な行・た行・だ行・ら行・さ行・ざ行の音、および「しゅ」「し」「じゅ」)
  • 口蓋音(か行・が行・や行の音、および「ひ」「にゅ」「ぎゅ」「ん」)
  • 喉頭音(は行の音)

3種の発音ができても、語音をつなげること(綴音)ができないため、言葉による意思疎通ができないことも、「言語機能の著しい障害」とされます。
たとえば、口唇音「わ」、歯絶音「た」「し」、口蓋音「が」の3種の音を別々に発音できても、それらをつなげて「わたしが」と発音できない状態のことです。

言語機能の著しい障害が残ると、発音や意思疎通が難しくなることで他者とのコミュニケーションを取りずらくなり、孤立や引きこもりに陥るおそれがあります。

咀嚼と言語の両機能に著しい障害を残せば4級2号

咀嚼と言語の両機能に著しい障害を残せば、4級2号に当たります。

4級は6級より逸失利益や慰謝料が高額なことから、4級2号の認定を取る方が得策です。
それには、本人の咀嚼と言語の機能が正しく評価され、医師の診断書に反映されなくてはなりません。
咀嚼と言語の専門職である言語聴覚士のいる医療機関で診療を受けるのがよいでしょう。

言語聴覚士のいる医療機関については、日本言語聴覚士協会のWEBサイトで紹介されています。

参考リンク:一般社団法人日本言語聴覚士協会WEBサイト 「言語聴覚士に相談する」

3号)両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの

左右両方の耳が、耳元での大声でないと話を聴き取れないのが3号の症状です。

純音聴力検査(耳にヘッドホンを付けてオージオメータという器械から発せられる音を聴き取る、聴力検査で通常用いられる検査)による次のいずれかの数値に当たります。

  • 両耳のいずれもが80デシベル以上の音でないと聴き取れない(両耳の平均純音聴力レベルが80デシベル以上)
  • 両耳のいずれもが50~79デシベル以上の音でないと聴き取れず(両耳の平均純音聴力レベルが50デシベル以上80デシベル未満)、しかも、「ア」「オ」などいくつかの言葉のうち聴き取れる言葉の割合が30%以下(両耳の最高明瞭度(聞き分けることのできる音の種類の割合)が30%以下)

検査数値を「平均」純音聴力レベルと呼ぶのは、聴力検査は日を変えて3回行われ、2回目と3回目の数値の平均をもって最終数値とするからです。

3号の症状は、両耳の聴力がかなり低下した状態なので、音楽関係など、両耳で音を聞き分ける仕事への復職はかなり難しくなるでしょう。
話し相手にとっても、その都度大声で話さなければならず、会話を負担に感じ、関りを避けられることも想定されます。

早めに耳鼻科を受診し、専門医指導の下での補聴器その他コミュニケーション機器の活用が必要です。

片耳が耳元での大声しか聴き取れなければ10級6号

左右いずれかの耳が、耳元での大声でないと話を聴き取れない場合、10級6号に当たります。

他耳の聴力は患耳ほど悪くないので、6級3号の場合より生活への支障は少ないのが普通です。

ただ、10級は6級より逸失利益や慰謝料が大幅に安くなります。
本当は6級3号の状態なのに10級6号の状態と診断されないよう、聴力検査ではヘッドホンからの音がはっきり聴こえた時にスイッチを押すようにしましょう。

4号)一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40㎝以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの

4号の症状は、片耳の聴力を全く失い、他耳が40㎝以上離れた相手の普通の大きさの声を聴き取れないことです。

「片耳の聴力を全く失」うと日常の音はほとんど聞こえない

「聴力を全く失い」とは、90デシベル以上の音でないと聴き取れない状態(平均純音聴力レベルが90デシベル以上)をいいます。

90デシベルは、大声での独唱や騒々しい工場の音などに匹敵するかなりの音量です。
日常の音はほぼ聴き取れないのが「聴力を全く失い」の状態といえるでしょう。

「40㎝先の相手の普通の声が聴き取れない」とコミュニケーションが困難に

「40㎝以上離れた相手の普通の大きさの声を聴き取れない」とは、70デシベル以上の音でないと聴き取れない状態(平均純音聴力レベルが70デシベル以上)です。

70デシベルは、掃除機をかけた音に相当します。
かなりの難聴であることは間違いありません。

他者との会話は、他耳を通じてのものになりますが、大声で話してもらわなければなりません。
コミュニケーションの取りにくさから孤立してしまうことが予想できます。

3号同様、早めに耳鼻科を受診して、コミュニケーション機器の利用を専門医に相談しましょう。

聴力の状態によっては9級9号などに該当することも

聴力検査の様子によっては、6級4号の状態なのに、次の他等級と診断される可能性があります。

  • 片耳の聴力を全く失い、他耳の聴力に変わりがなければ9級9号
  • 片耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1m先の相手の普通の声を聴き取れなければ7級3号

7級や9級の逸失利益や慰謝料は、6級より低額です。

実際は6級4号の状態なのに、9級9号や7級3号と診断されないよう、聴力検査ではヘッドホンからの音がはっきり聴こえた時点でスイッチを押すようにしましょう。

5号)脊柱に著しい変形または運動障害を残すもの

5号は、脊柱(背骨)に著しい変形または運動障害を残すことを症状とします。

「脊柱に著しい変形を残す」の2要件

「脊柱に著しい変形を残す」の要件は、次の2つです。

  • X線写真・CT画像・MRI画像のいずれかにより、脊椎の圧迫骨折や脱臼を確認できる
  • 次のいずれかが生じている
    • 2個以上の椎体(脊椎を形作る椎骨の支柱となる部位)のお腹側の高さ(前方椎体高)が著しく減ったため、脊椎が背中側に曲がって突き出る(後彎(こうわん))
    • 1個以上の椎体の前方椎体高が減ったため後彎が生じ、しかもコブ法(脊柱のうち最も傾いている頭側と尾側の各椎骨の角度が交わる点の角度(側彎度)を測定する方法)により50度以上の側彎(脊柱が左右に曲がって突き出る)が確認できる

Scoliosis 側彎 Kyphosis 後彎

コブ法
コブ法
厚生労働省WEBサイト「せき柱及びその他の体幹骨、上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準」より転載

身体の柱ともいえる脊柱が後彎または側彎すると身体のバランスが崩れ、円滑な動作が妨げられます。

「脊柱に著しい運動障害を残す」とは頚部と胸腰部の強直

「脊柱に著しい運動障害を残す」とは、次のいずれかを原因として、頸椎・胸椎・腰椎の全てが強直すること(理学療法士による徒手的な改善が困難なほどの関節可動域制限)です。

  • 頸椎・胸椎・腰椎の全てに圧迫骨折や脱臼が生じていることがX線などの画像で確認できる
  • 頸椎・胸椎・腰椎の全てに脊椎固定術(頸椎から腰椎に至る脊椎全体をボルトと棒などを使って固定する術)が施されている
  • 項背腰部軟部組織(うなじ・背中・腰にある筋肉・血管・腱・靱帯などの軟らかな組織)に明らかな器質的変化(臓器や組織そのものが変化すること)が認められる

頚部から腰部までの脊椎が強直すると、身体を曲げたりひねったりができなくなり、日常動作が制約され、生活に大きな支障を来します。

脊柱の変形や運動障害の状態次第では11級7号などにも

脊柱の変形や運動障害については、検査時の様子により、次の他等級と診断される可能性があります。

  • 脊柱に「著しい」とまではいえない変形が残れば11級7号
  • 脊柱に「著しい」とまではいえない運動障害が残れば8級2号

11級や8級だと、逸失利益や慰謝料が6級より低額です。

脊柱の障害は、X線・CT・MRIといった画像診断が決め手となります。
脊柱の状態を正しく反映した診断をもらえるよう、できるだけ高度な画像診断装置の整った医療機関を受診しましょう。

6号)一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの

片上肢の三大関節(肩・肘・手首)のうち2つの関節の用を廃するのが6号の症状です。

「関節の用を廃する」とは、次のいずれかをいいます。

  • 関節が強直する
  • 関節の完全弛緩性麻痺(麻痺により関節を動かそうとしても全く動かすことができない)、または自分で動かせる関節可動域が健側の10%程度以下
  • 人工関節(関節全部を人工物に置き換えた関節)または人工骨頭関節(関節のうち骨頭部分だけを人工物に置き換えた関節)の可動域が健側の半分以下

片上肢の2関節がこうした状態になると、片上肢全体を働かすのが難しくなり、荷物を持つなどの面で、他上肢への負担が大きくなるので注意が必要です。

片上肢の三大関節の状態により5級6号に当たることも

上肢の三大関節の障害については、6級6号の他、次の他等級もあり、診療時の状態によって他等級の診断を受けることも考えられます。

  • 片上肢の三大関節全てが強直し、しかも全手指が用を廃すれば5級6号
  • 5級6号の症状が両上肢に生じれば1級4号
  • 片上肢の三大関節のうち1つの関節が用を廃すると8級6号

損害に適った賠償を手にするには、事故後の関節変化など交通事故による障害をしっかりと判断できる医師に診療してもらうことが大切です。

病院のWEBサイトなどを調べ、交通事故傷害を得意とする医療機関を受診するようにしましょう。

7号)一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの

7号の症状は、片下肢の三大関節(股・膝・足首)のうち2関節の用を廃することとされています。

「関節の用を廃する」の意味は上肢の場合と同じです。

片下肢の2関節がこの状態になると、立つ・歩く・座るなどの動作が難しくなり、生活に大きな支障が生じます。

片下肢の三大関節の状態次第では他の等級に該当する可能性も

片上肢の場合と同じく、片下肢の三大関節の用を廃する状態によっては、次のような他等級に該当する可能性も考えられます。

  • 片下肢の三大関節全ての用を廃せば5級7号
  • 片下肢の三大関節のうち1関節の用を廃せば8級7号

片上肢と同様、交通事故傷害を得意とする医療機関を受診するとともに、交通事故に詳しい弁護士に相談して、6級より上の等級をもらう、あるいは6級より下の等級にならない手立てを検討しましょう。

8号)一手の五の手指または親指を含み四の手指を失ったもの

8号は、片手について、5指全部または親指を含む4指を失うことを症状とします。

「手指を失う」とは、親指の第1関節(指節間関節)から先、その他の指の第2関節(近位指節間関節)から先をそれぞれ失うことです。

片手とはいえ、指がこうした状態になると、物を掴むことがとても難しくなり、生活に不便が生じます。

特に、自動車のハンドルをしっかり握れずに操作しずらくなることで、交通事故の再発につながるおそれがあるので注意が必要です。

手指を失う状態によっては3級5号などにも

手指を失う後遺障害については、状態によって、次のような他等級に該当する可能性もあります。

  • 両手指全てを失えば3級5号
  • 片手の親指を含む3指または親指以外の4指を失えば7級6号
  • 片手の親指を含む2指または親指以外の3指を失えば8級3号
  • 片手の親指または親指以外の2指を失えば9級12号
  • 片手の人差し指、中指、薬指のいずれか1指を失えば11級8号
  • 片手の小指を失えば12級9号
  • 片手の親指の指骨(基節骨(根元から第1関節)または末節骨(第1関節から先))の一部を失えば13級7号
  • 片手の親指以外の指の指骨の一部を失えば14級6号

片手指を失う後遺障害の種類は多く、等級も様々なため、できれば、上位の等級をもらって、損害賠償金を増やしたいものです。

交通事故に詳しい弁護士に相談して、現在の手指の状態からして最も上位が期待できる等級の申請を検討しましょう。

後遺障害6級の慰謝料の相場

後遺障害の慰謝料額の決め方については、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準(裁判基準)の3基準があります。

自賠責基準による後遺障害6級の慰謝料相場

自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)から支払われる後遺障害6級の慰謝料額は、512万円(2020年3月31日までの事故は498万円)です。

自賠責保険から支払われる慰謝料額は、国の基準により、後遺障害等級ごとに決められていて、後遺障害慰謝料の自賠責基準と呼ばれています。
自賠責基準を後遺障害慰謝料の最低額とするのが賠償実務の流れです。

参考リンク:国土交通省WEBサイト「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準 第3の2(1)②」※PDFファイル

任意保険基準による後遺障害6級の慰謝料相場

後遺障害慰謝料の基準として、任意保険を扱う保険会社が個別に定める任意保険基準があります。

任意保険基準による慰謝料は、自賠責基準より少し高く、後述の弁護士基準(裁判基準)よりはるかに低い金額です。
後遺障害の状態次第では、自賠責基準と同額を提示する保険会社もあるといわれています。

任意保険基準は保険会社の内部情報として公にされてきませんでしたが、最近では、これをWEB上で公開している保険会社もあり、たとえば損害保険ジャパン株式会社が定める任意保険基準は、次の表のとおりです。

後遺障害者等級 父母・配偶者・子のいずれかがいる場合 左記以外
第1級 1,850万円 1,650万円
第2級 1,500万円 1,250万円
第3級 1,300万円 1,000万円
第4級 900万円
第5級 700万円
第6級 600万円
第7級 500万円
第8級 400万円
第9級 300万円
第10級 200万円
第11級 150万円
第12級 100万円
第13級 70万円
第14級 40万円

損害保険ジャパン株式会社WEBサイト「WEB約款」より転載)

6級の慰謝料は600万円で、自賠責基準の512万円より少し高く、次に紹介する弁護士基準(裁判基準)よりずっと安くなっています。

弁護士基準(裁判基準)による後遺障害6級の慰謝料相場

弁護士に加害者側との慰謝料交渉を依頼すると、もらえる慰謝料は大幅に増えます。弁護士は弁護士基準(裁判基準)を基に慰謝料交渉を行うからです。

弁護士基準(裁判基準)とは、慰謝料額を判示した裁判例を基に算出された慰謝料額の目安のことで、弁護士が示談交渉や裁判での慰謝料基準とすることから、このように呼ばれています。

弁護士基準(裁判基準)は、日弁連交通事故相談センター東京支部が発行する「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称「赤い本」)に掲載されています。
この「赤い本」によれば、弁護士基準(裁判基準)による後遺障害6級の慰謝料は1,180万円です。

後遺障害6級の慰謝料相場を3つの基準で比較
自賠責基準 任意保険基準 弁護士基準(裁判基準)
512万円 600万円 1,180万円

弁護士基準(裁判基準)を用いると、自賠責・任意保険各基準の2倍前後の慰謝料となることが分かります。
交通事故による精神的損害の穴埋めはもちろん、弁護士費用も賄える金額です。

弁護士基準(裁判基準)による1,180万円という金額は、弁護士に依頼したときの相場(通常の目安)なので、特に交通事故に強い有能な弁護士であれば、この金額以上の慰謝料となる可能性もあるでしょう。

後遺障害6級の逸失利益の計算方法

6級の後遺障害が残ると働くことが難しくなり、収入が減ってしまいます。
こうした減収は、事故に遭わなければ得られたであろう収入、つまり「逸失利益」として、加害者側に請求することが可能です。

後遺障害による逸失利益は、国が定めた「支払基準」により、次の式で計算されます。

“収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数“

後遺障害6級の労働能力喪失率は、67%です。
事故前の3割強しか働けなくなることを意味します。

参考リンク:国土交通省WEBサイト「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準 第3の1」※PDFファイル

後遺障害6級の逸失利益の労働能力喪失期間

労働能力喪失期間とは、後遺障害が残ったことにより事故前と同じ仕事ができなくなるであろう将来の期間のことです。就労可能年数ともいわれます。

労働能力喪失期間は、支払基準により、後遺障害確定時(症状固定時)の年齢だけを基に決められていて、等級は問われていません。

たとえば、後遺障害確定時30歳の人であれば、後遺障害6級であっても14級であっても、労働能力喪失期間(就労可能年数)は37年です。

逸失利益額は、労働能力喪失期間より労働能力喪失率の影響を大きく受けるといえるでしょう。

参考リンク:国土交通省WEBサイト「就労可能年数とライプニッツ係数表」※PDFファイル

裁判例に見る後遺障害6級の示談金

後遺障害6級の示談金(逸失利益と慰謝料)について当事者間で争いとなり、裁判になった場合、裁判所はどのような判断をしているのでしょうか。

ここでは、事例ごとにマチマチになりやすい慰謝料でなく、いくつかの事例を通してある程度の傾向を掴みやすい逸失利益をめぐる裁判例を見ていきます。

裁判では支払基準によらない逸失利益算定を求めることも可能

判例によれば、裁判所は、支払基準に縛られることなく、労働能力の喪失率や喪失期間を認定できるとされています(最高裁判決平成18年3月30日)。

裁判の目的は、個々の争いにふさわしい具体的な解決をすることであり、逸失利益の算定についていえば、支払基準という一律の基準によるのでなく、各事例の実状に適った算定をすることが、争いの具体的解決になるからです。

被害者は、裁判において、支払基準を超える労働能力の喪失率や喪失期間を主張し、それを基に算定された逸失利益を加害者側に求めることができます。

実際に6級の逸失利益が争われた裁判例を見てみましょう。

判決年月日 年齢 性別 症状 労働能力喪失率 労働能力喪失期間 特徴
①さいたま地裁
平成25年10月31日
80歳 女 脊柱の著しい変形(6級5号) 67%(67%) 4年(5年) ほぼ支払基準どおりの認定。
②名古屋地裁
平成22年3月19日
35歳 男 高次脳機能障害
複視
(併合6級)
90%(67%) 32年(32年) 大学教授という職において高次脳機能障害に陥ることは致命的な障害になることから、90%という高い労働能力喪失率を認めた。
③名古屋地裁
平成22年11月15日
9歳 男 高次脳機能障害
眼球障害
外貌醜状
(併合6級)
67%(67%) 49年(49年) 支払基準どおりの認定。
④東京地裁
2008/5/12
37歳 女 高次脳機能障害
右膝関節の機能障害
外貌醜状
(併合6級)
67%(67%) 30年(30年) 支払基準どおりの認定。
⑤東京地裁
平成20年6月17日
64歳 男 高次脳機能障害
嗅覚脱失(完全喪失)
(併合6級)
67%(67%) 9年(11年) 再就職先が決まっていることから労働能力喪失期間を支払基準より短くしたものと思われる。
⑥東京地裁
平成22年5月13日
50歳 男 高次脳機能障害
視野障害
醜状障害
(併合6級)
67%(67%) 17年(17年) 支払基準どおりの認定。
⑦東京地裁
平成23年3月9日
45歳 女 左上肢麻痺
(6級相当)
67%(67%) 2年
(22年)
乳がんの転移により余命僅かと認め、労働能力喪失期間を支払基準より大幅に短い2年とした。
⑧大阪地裁
平成26年6月27日
38歳 男 外貌醜状
左手関節痛
(併合6級)
14%(67%) 29年(29年) 左手関節痛は短期間で治まることが予想できるため、労働能力喪失率を支払基準より低く認定。
⑨大阪地裁
平成25年5月30日
19歳 女 外貌醜状
右手神経症状
(併合6級)
25%(67%) 46年(48年) 事故後に転職を続けているものの就労していることから、労働能力喪失率を支払基準より短く認定。
労働能力喪失期間は就労開始の21歳を基に支払基準どおり認定。
⑩名古屋地裁
平成25年1月24日
17歳 女 外貌醜状
歯科補綴
(併合6級)
12%(67%) 46年(49年) 瘢痕や歯牙障害が仕事に与えた悪影響はそれほど多くないことから支払基準を下回る労働能力喪失率を認定。
就職した21歳を基に支払基準どおりに労働能力喪失期間を認定。

※( )内は支払基準での数値

後遺障害6級の裁判例は併合6級が多い

紹介した裁判例10件のうち、併合6級が8件です。

併合6級とは、7級の症状と9級以下の症状とが重なる場合、一番高い7級より1つ上の6級が最終的な等級になることをいいます。等級の併合という仕組みの一例です。

併合6級の裁判例が多いのは、6級の症状は身体の外形・眼耳の検査数値・脊柱の画像など形に表れるものが多いことから、当事者双方が支払基準どおりの賠償を受け入れやすく、6級の症状だけで裁判になる事例が少ないためではないでしょうか。

後遺障害6級で障害者手帳はもらえる?

身体障害者手帳には、医療費の助成、所得税や住民税の減額、鉄道やバスなど公共交通機関の運賃割引ほか、いくつかのメリットがあるため、後遺障害6級の認定を受けたら身体障害者手帳ももらいたいところです。

身障者手帳の取得には障害等級6級以上が必要

身障者手帳をもらうには、身体障害者障害程度等級表(障害等級)6級以上に該当することが必要とされています。

後遺障害6級と身障者障害等級の関係をまとめたものが、次の表です。

後遺障害6級 身障者障害等級
1号 視覚障害1級~5級
2号 音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害4級
3号 聴覚障害4級
4号 聴覚障害6級
5号 肢体不自由(体幹)1級~3級、5級
6号 肢体不自由(上肢)3級
7号 肢体不自由(下肢)4級
8号 肢体不自由(上肢)3級

参考リンク:厚生労働省WEBサイト「身体障害者障害程度等級表」※PDFファイル

後遺障害6級のいずれの症状も障害等級6級以上に当たりますので、身障者手帳をもらうことができます。

身障者手帳は、都道府県知事、指定都市市長または中核市市長によって交付されます。
申請先は最寄りの福祉事務所または市区町村役場となりますので、お住いの市区町村の窓口までお問い合わせください。
参考リンク:厚生労働省WEBサイト「障害者手帳」

労災の場合、後遺障害6級でもらえる金額は?

就業中または通勤途中の交通事故により後遺障害6級となった場合、労働災害として、労災保険の補償を受けられます。

後遺障害6級は労災障害6級に当たり、補償内容は次のとおりです。

名目 金額
障害補償年金(就業中)
障害年金(通勤途中)
1年間につき、給付基礎日額×156日分
障害特別年金 1年間につき、算定基礎日額×156日分
障害特別支給金 192万円

給付基礎日額とは、事故前3か月間の賃金総額を暦日数で割った1日当たりの賃金額をいいます。

算定基礎日額とは、事故前1年間に支払われたボーナスなど特別給与の総額を365日で割った額です。

障害特別支給金とは、事故後の社会復帰を促すために支給されるお金をいいます。

障害補償年金・障害年金・障害特別年金が1年分を2か月分ずつ偶数月に支払われるのに対し、障害特別支給金は全額を1回で支払う一時金払いです。

慰謝料は労災での支払いの対象外

労災補償は、労災による減収の穴埋めと社会復帰支援を目的とするため、交通事故による精神的ダメージへの賠償である慰謝料は労災保険から支払われません。

慰謝料は、精神的ダメージを与えた加害者側に請求することになります。

労災事故の場合は会社に対する損害賠償請求も視野に

交通労災の被害者は、労災補償を受ける他に、自分の勤務先会社に対して損害賠償を請求することができます。

会社への損害賠償請求は、安全配慮義務違反または使用者責任のいずれかを理由に行うことが可能です。

安全配慮義務違反とは、会社が従業員の生命や身体の安全を保つ義務を怠ることをいいます(民法415条)。
たとえば、会社が社用車の点検整備を怠ったため、その車を運転した従業員が事故を起こして後遺障害6級の傷害を負った場合、受傷は会社の安全配慮義務違反によるものとされるわけです。

使用者責任とは、従業員が業務中に他人に与えた損害を会社が賠償する責任をいいます(民法715条)。
たとえば、会社の同僚が運転する車に同乗中、運転者の不注意で事故が起き、同乗者が後遺障害6級の傷害を負った場合、会社は、運転者の使用者として、同乗従業員が負った傷害について損害賠償をしなければなりません。

損害賠償は労災補償の分だけ減額される

労災被害者が労災補償を受けた後に勤務先会社に損害賠償を請求した場合、損害賠償額は労災補償の分だけ減額されます(最高裁判決昭和52年10月25日)。

損害賠償も満額受け取れるとすると、すでに労災補償された分まで受け取ることになり、二重取りになってしまうからです。

後遺障害6級認定を獲得するための重要なポイント

交通事故に遭い、後遺障害6級の症状が残ったら、逸失利益や慰謝料を自賠責保険から確実にもらうため、ぜひ6級認定を取りたいものです。

後遺障害6級の認定を取るには、次の3点が重要となります。

  • 認定取得につながる診断書を医師に書いてもらう
  • 関節可動範囲は自賠責保険指定の方法で測る
  • 脊柱障害については理学療法士のいる整形外科を受診する

後遺障害診断書は、等級認定において非常に重要

後遺障害の等級認定審査において特に重要なのが、医師の作成する後遺障害診断書です。

後遺障害の知識と経験豊かな医師を主治医に

等級認定の審査に通り、6級をもらえるだけの診断書となるかどうかは、作成する医師の後遺障害についての知識と経験が決め手になります。

医師を選べるのであれば、後遺障害の知識と経験が豊かな医師に診てもらうようにしましょう。

効果的な診断書作成は医師との良好な関係から

6級審査に通るだけの診断書を書こうという気持ちを医師に持ってもらうことも重要です。

それにはまず、医師の指示どおり真面目に診療に通いましょう。
真面目に通ったにもかかわらず後遺障害が残ったとなれば、医師としても、審査に通る診断書を書こうという気持ちになるはずです。

後遺障害等級の認定率は、約5%という狭き門です。
その狭き門を突破する最大の武器は、真面目な診療態度を通じて培った医師との良好な関係といっても過言ではありません。

関節の可動範囲は自賠責保険の基準に則って測定を

後遺障害6級の6号と7号では、上下肢の関節の可動範囲が問題とされます。

自賠責保険が基準とする関節可動範囲の測定方法は、「関節可動域表示ならびに測定法」(1995年 日本整形外科学会・日本学会の共同作成)です。
この測定法によらない関節可動範囲の測定は、関節の実態にそぐわない認定につながり、6級をもらえなくなるおそれがあります。

後遺障害に慣れた医師であれば、いうまでもなくこの測定法を用いるでしょうが、中にはこの測定法を用いない医師がいるとの指摘がなされることも事実です。

この点からも、後遺障害の知識と経験豊かな医師を主治医にすることが大切になってきます。

脊柱の障害では理学療法士にいる整形外科を受診しよう

6級5号の脊柱障害については、理学療法士のいる整形外科を受診しましょう。

理学療法士とは、国家資格に基づくリハビリテーションの専門職です。事故・病気・加齢などで身体機能が低下した人に対し理学療法(運動、電気や温熱、マッサージなど)を行い、機能の回復を図ります。

医師が患者の脊柱に障害ありと診断すると、医師の治療と併せて、理学療法士によるリハビリテーションが行われるのが普通です。
医師が後遺障害診断書を書くとき、検査結果などはもちろん、理学療法士の意見も重要な資料となります。脊柱の変形や運動障害については、リハビリテーションに当たってきた理学療法士の評価が大きく影響するのです。

医師と理学療法士双方の知見が診断書に反映されることで、被害の実状にかなった等級認定につながるといえるでしょう。

整形外科受診前に整骨院などに通うのはNG

交通事故の後で脊柱に異常を感じたとき、まず整骨院などに通い、その後で整形外科を受診することは絶対に止めましょう。

整骨院などである程度の施術が施されてから整形外科を受診すると、患部が事故当時の状態でなくなってしまい、医師にとって、交通事故と脊柱障害との因果関係が分からなくなってしまうからです。

交通事故で脊柱に異常を感じたら、速やかに整形外科を受診してください。

まとめ

交通事故により後遺障害6級の症状が残った場合、まず必要なのは6級認定の申請です。

6級認定がもらえたら加害者側と逸失利益や慰謝料の交渉となりますが、示談に至らなければ調停や裁判による解決となります。

身体障害者手帳の申請はもちろん、仕事にまつわる事故なら労災補償の申請も必要です。

交通事故は一生のうち何度もあることではありませんので、こうした一連の手続に手慣れた人はほとんどいないといってよいでしょう。

これらの手続は事故後の被害回復と生活安定のために不可欠で、確実かつ迅速に行わなければなりません。
それにはプロの力を借りるのが一番であり、そのプロこそ弁護士に他なりません。

交通事故で治療が長引きそうな怪我をしたら、まず交通事故に強い弁護士に相談しましょう。
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あなたが相談した弁護士は、その法律知識と実務経験を駆使して、示談や裁判の面で、あなたに有利な方向へと導いてくれるはずです。

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