人身事故の罰則まとめ~罰金・点数と物損事故との違い

最終更新日:2019年04月04日

人身事故

人身事故と物損事故の違い

まずは人身事故と物損事故にどのような違いがあるのか、基本的なところから理解しておきましょう。

人身事故とは

人身事故とは、人が死傷した交通事故です。事故の相手や巻き込まれた第三者が怪我をしたり死亡したりすると人身事故になります。どれほど軽傷でかすり傷程度でも、交通事故によって被害者が受傷し通院して診断書を出せば人身事故です。

交通事故が発生すると、被害者の車が壊れることも多いですが、車が壊れても誰かが受傷していたら物損事故ではなく人身事故扱いとなります。

物損事故とは

物損事故とは、人が死傷せず物が壊れただけで済んだ交通事故です。つまり、被害者の車がへこんだり建物などの施設が壊れたりしただけで済み、誰も怪我をしたり死亡したりしなければ物損事故です。ペットなどの動物は法律上「物」扱いとなるので、ペットや動物園の動物が死傷した場合でも、物損事故になります。

人身事故は免許の点数が加算される

人身事故と物損事故には、法律的な取扱いにおいても、いろいろな違いがあります。まず人身事故の場合には、「免許の点数」が加算されます。免許の点数とは、運転免許の取扱いに関するペナルティの制度です。

運転免許を交付しても、危険な運転をする人には運転をさせるべきではありません。そこで交通違反や交通事故を起こした人には「点数」を加算して、免許の効力を停止したり取り消したりします。免許の点数は加算方式になっており、一定の点数になったら免許が停止されたり取り消されたりします。

人身事故を起こすと、加害者の過失の程度と被害者の受傷状況によって免許の点数が加算されます。重大事故を起こすと、一回の交通事故でも免許取消になってしまう可能性があります。

これに対し、物損事故の場合には基本的に免許の点数加算はありません。そこで、物損事故を起こしても、交通違反をしておらずきちんと警察に報告をすれば免許の点数は加算されず運転免許が停止されたり取り消されたりするペナルティは受けません。ただし当て逃げをした場合や建造物を損壊した場合には、点数が加算されます。

人身事故では刑事罰がある

人身事故と物損事故のもう1つの違いは、刑事罰です。刑事罰とは、いわゆる「犯罪行為に対する罰則」です。

人身事故を起こすと、「自動車運転処罰法」という法律によって処罰されます。処罰内容は交通事故の重大性と加害者の運転の悪質性によって異なりますが、重い刑罰が科されるケースでは20年以上の懲役刑となる可能性もあります。

一方、物損事故では刑事罰はありません。当て逃げをしない限り処罰されることはありません(当て逃げの場合には道路交通法違反となるので罰則があります)。

人身事故では賠償金が高額になる

人身事故と物損事故では、損害賠償金についても異なります。人身事故の場合、人が死傷するので非常に多くの種類の損害が発生しますし、金額的にも多額になります。たとえば人身事故の場合には、以下のような損害が発生し、加害者は被害者に賠償しなければなりません。

  • 治療関係費
  • 休業損害
  • 逸失利益
  • 慰謝料
  • 被害者が死亡すれば葬儀費用

被害者に重大な後遺障害が残った場合や死亡した場合、逸失利益や慰謝料は非常に高額となり、合計で1億円を超えることも珍しくありません。

一方物損事故では上記のような損害は発生しないので、せいぜい車の修理費用の10~数十万円程度です。

このように、加害者にかかる損害賠償の負担も、人身事故と物損事故とでは全く異なります。

人身事故と物損事故の違いまとめ

人身事故と物損事故の違いをまとめると、以下の通りです。

人身事故 物損事故
免許の点数 加算あり 基本的に加算なし(当て逃げのケースのみ例外)
刑事罰 あり 基本的になし(当て逃げのケースのみ例外)
民事損害賠償 損害の種類が多種類で高額 損害の種類は少なく低額
加害者にかかる負担 非常に重い 軽い

ひと言で「交通事故」と言っても人身事故と物損事故ではドライバーにかかる負担が全く異なってくるので、くれぐれも人身事故は起こさないよう注意しましょう。

人身事故で加算される免許の点数

次に人身事故を起こした場合、実際にどのくらいの点数が加算されるのか、みてみましょう。

基礎点数と付加点数

運転免許の点数には「基礎点数」と「付加点数」があります。基礎点数とは、道路交通法違反の点数、付加点数は交通事故を起こしたことによる点数です。人身事故を起こした場合の基礎点数は、通常「安全運転義務違反」であり2点です。ただし飲酒など他の交通違反をしていれば、より高い点数を加算されます。

交通事故を起こしたことによる付加点数は、加害者の過失の程度と発生した結果(被害者の受傷状況)によって異なります。具体的には、以下の表の通りです。

交通事故の付加点数の表

加害者の過失の程度 被害者の負傷状況 加算される点数
もっぱら 死亡事故 20点
被害者にも過失あり 13点
もっぱら 3か月以上の通院を要する事故
または後遺障害が残った事故
13点
被害者にも過失あり 9点
もっぱら 治療期間が30日以上3か月未満の事故 9点
被害者にも過失あり 6点
もっぱら 治療期間が15日以上30日未満の事故 6点
被害者にも過失あり 4点
もっぱら 治療期間が15日未満または建造物が損壊された事故 3点
被害者にも過失あり 2点

このように、加害者にもっぱら過失がある場合か被害者にも過失があったかにより、取扱いが異なります。もっぱら過失がある場合の方が、当然高い点数が加算されます。

次に被害者の受傷状況によって加算される点数が異なります。死亡事故の場合にはもっとも高い点数が加算され、被害者に過失があったとしても一回の交通事故で加害者の免許が取り消されます。被害者の受傷状況が軽くなってくると加算される免許の点数も小さくなります。

物損事故では基本的に免許の点数加算がありませんが、住居などの「建物」にぶつかって損壊させたケースでは例外的に3点または2点が加算されます。

ひき逃げ、飲酒運転の加算点数

人身事故を起こしたとき、ひき逃げや飲酒運転をするとさらに大きな点数を加算されるので注意が必要です。

ひき逃げの点数は35点、飲酒運転の場合、酩酊状態の酒酔い運転なら35点、呼気内のアルコール量が0.25mg以上なら25点、呼気内のアルコール量が0.15~0.25mgなら13点が加算されます。

点数と免許の関係

以下で、運転免許の点数と免許停止や免許取消される期間を示します。

免許停止の日数と免許の点数、前歴の関係
免許停止になる日数 30日 60日 90日 120日 150日
過去の免許停止などの前歴
0回 6~8点 9~11点 12~14点 それ以上になると免許取消
1回 4~5点 6~7点 8~9点 免許取消
2回 2点 3点 4点
3回 2点 3点
免許取消の欠格期間と免許の点数、前歴との関係
免許が取り消される欠格期間()内は前歴がある場合 1年(3年) 2年(4年) 3年(5年) 4年(5年) 5年
過去の免許停止や取消の前歴
なし 15点~24点 25点~34点 35点~39点 40点~44点 45点~
1回 10点~19点 20点~29点 30点~34点 35点~39点 40点~
2回 5点~14点 15点~24点 25点~29点 30点~34点 35点~
3回~ 4点~9点 10点~19点 20点~24点 25点~29点 30点~

これまでに免許停止や取消処分などを受けていると、低い点数でも簡単に免許を停止されたり取り消されたりします。

また飲酒運転などの重大な違反行為があると、点数がより大きく加算されて、欠格期間が10年になるケースもあります。

免許の点数がリセットされるまでの期間について

交通事故を起こして免許の点数が加算されても、その後3年が経過すると点数はリセットされます。免許の点数制度では、「過去3年間の点数を加算する」こととされているからです。

また、以下のケースでも以前の点数が加算されないことになっています。

  • 過去1年以上、無事故無違反で過ごしたとき
  • 免許取消や停止処分を受けて、無事故無違反のまま取消期間や停止期間を過ごしたとき
  • 3点以下の軽微な交通違反行為をしたが、過去2年間に違反行為をしておらず、軽微な違反行為後の3か月間にさらに違反行為をしていないとき
  • 1~3点の軽微な交通違反を繰り返して累積点数が6点となり(交通事故で一気に6点をになったケースを含む)違反者講習を受けたとき

運転免許の点数が加算されて「あと少しで免許停止」という状態であれば、無事故無違反で1年以上過ごすか3年待つか、違反者講習などを受けて点数をリセットすると、停止を避けられます。

免許停止や取消の手続きの流れ

点数が加算されて免許停止や取消になる場合、どのような手続きの流れになるのでしょうか?

免許停止90日以上になる場合には、公安委員会において「意見の聴取」が行われます。意見の聴取とは、処分をする前に処分を受ける本人から意見や事情を聞き、処分の参考にするための手続きです。道路交通法104条の規定にもとづいて実施されます。

出頭するかしないかは本人の自由ですが、なるべく出頭して、処分を軽くしてもらえるようにお願いしてみるのが良いでしょう。交通事故にやむを得ない事情があったケースや汲むべき事情がある場合などでは、予定されていたより処分を軽くしてもらえる可能性があります。

弁護士に同行を依頼することも可能なので、1人で不安な場合には相談してみましょう。

人身事故で刑事罰・罰金が発生するケース

次に人身事故で適用される「刑事罰」についてみていきましょう。

刑事罰と免許の点数の違い

よく混同されるのですが、免許停止で加算される「点数」と「刑事罰」は全く異なる制度です。点数は「免許の効力」のみに関連する規制であり、点数が加算されたからと言って「犯罪」ではありませんし本人に「前科」もつきません。これに対し、刑事罰が科されるのは「犯罪行為」に対してであり、刑事的な処罰を受ければ一生消えない「前科」がついてしまいます。

人身事故による罰金の目安

交通事故や交通違反を起こした場合、罰金刑で済むことも多く、正式な刑事裁判にもならないので法廷に出廷することもないケースが多々あります。

事故の度合い 刑事処分(目安)
死亡事故 懲役刑(7年以下)もしくは禁固刑または罰金刑:100万円以下
治療期間3月以上の重傷事故、又は特定の後遺障害が伴う事故 懲役刑・禁固刑及び
罰金刑:50万円
治療期間30日以上、3月未満の重傷事故 罰金刑:30万~50万円
治療期間15日以上、30日未満の軽傷事故 罰金刑:20万~50万円
治療期間15日以上、30日未満の軽傷事故 罰金刑20万~30万円
治療期間15日未満の軽傷事故又は建造物損壊に係る交通事故 罰金刑15万~20万円
治療期間15日未満の軽傷事故又は建造物損壊に係る交通事故 罰金刑12万~15万円

そのような場合、お金さえ支払えば済むので軽く考える人もいますが、実際には検察庁のデータベースで「前科」が残っているので注意が必要です。前科記録はその人が死亡して戸籍が抹消されるまで消してもらえませんし、何かあったらすぐに前科照会されてしまいます。

人身事故で課される可能性のある刑事罰

交通事故で成立することのある犯罪は以下の通りです。

過失運転致死傷罪

一般的な人身事故を起こした場合には「過失運転致死傷罪」が成立します。これは、通常一般の前方不注視やスピード違反などの不注意によって人身事故を起こしてしまった場合の成立する犯罪です(自動車運転処罰法5条)。過失運転致死傷罪の刑罰は、7年以下の懲役刑または100万円以下の罰金刑です。

危険運転致死傷罪

危険運転致死傷罪は、特に悪質で危険であり、故意や故意にも匹敵するような重大な過失にもとづいて引き起こされた人身事故のケースで成立する犯罪です。たとえばお酒を飲んで前後不覚となり、酩酊状態で運転していて交通事故を起こした場合、危険なスピードで人の集まる場所や交差点に突っ込んで人を死傷させた場合などに危険運転致死傷罪が成立します(自動車運転処罰法2条)。

危険運転致死傷罪の罰則は、被害者が死亡したのか怪我をしただけで済んだのかによって異なります。被害者が負傷したケース(危険運転致傷罪)の場合には15年以下の懲役刑、被害者が死亡した場合(危険運転致死罪)には1年以上の有期懲役刑となります。有期懲役刑の限度は20年なので、危険運転致死罪となった場合、最長20年間の懲役刑が適用される可能性があります。

危険運転の場合、結果が傷害でも死亡でも「罰金刑」がないので、必ず懲役刑となります。執行猶予がつかない限り、現実に刑務所に行って強制労働をしなければなりません。

また「飲酒運転」や「ひき逃げ」などをすると、刑罰がさらに課徴されるので、最長30年間の懲役刑が適用される可能性が出てきます。交通事故は起こさないのが一番ですが、もし起こしてしまってもひき逃げは絶対にしてはなりません。

アルコールや薬物を摂取した場合の交通事故

近年では飲酒運転に対する取締が強化されていることもあり、自動車運転処罰法にもアルコールを摂取した場合の罰則が規定されています。アルコールや薬物を摂取し、正常な運転ができない可能性があるのに運転して人身事故を起こした場合、被害者が怪我をしたら12年以下の懲役刑、被害者が死亡したら15年以下の懲役刑となります(自動車運転処罰法3条)。

過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪

アルコールを摂取したり薬物を服用したりして交通事故を起こすと、しばらく時間が経過するのを待ってそれらによる影響が消えてから出頭しようとする人がいます。そうした方が、刑罰を軽くしてもらえると考えるからです。

しかし、アルコール窃取の発覚を恐れていったん交通事故現場を立ち去るのはひき逃げであり、大変危険です。そこで、通常の過失運転致死傷罪でも、アルコールによる影響をごまかすためにいったん逃げたりさらにアルコールを摂取したりすると、刑罰が加重されて12年以下の懲役刑となります(自動車運転処罰法4条)。

通常の過失運転致死傷罪ならば7年以下の懲役か罰金で済むのにアルコールを誤魔化そうとしただけでかなり刑を重くされてしまいますし、アルコール発覚を防ぐために逃げたらひき逃げになってさらに重い刑罰が適用されます。

アルコールを摂取した状態で交通事故を起こしても、決して逃げてはなりません。

無免許運転による加重

無免許運転も飲酒運転に劣らず危険な行為ですから、自動車運転処罰法によって厳しく処罰されます。そのため自動車運転処罰法は、人身事故の加害者が無免許運転をしていた場合に刑罰を加重しています。

まず危険運転致傷罪を起こした人が無免許だった場合には、6か月以上の有期懲役刑となります。この場合の刑期は、最長20年です。また過失運転致死傷罪のケースでも刑罰が加重され、10年以下の懲役刑となり、罰金刑はなくなってしまいます。

アルコールや薬物の影響で正常に運転できない可能性があり、なおかつ無免許運転をした場合、被害者が怪我をしたら15年以下の懲役刑、被害者を死亡させたら6か月以上の有期懲役刑となります。

アルコールが発覚するのを恐れて逃げた加害者が(アルコール発覚不正免脱罪)実は無免許だった場合には、15年以下の有期懲役刑となります。

人身事故を起こしてしまったら弁護士に相談を!

以上のように、人身事故を起こしてしまったら、免許の問題だけでは済まず重い刑罰を適用されるリスクが高まります。なるべく罪を軽くするためには刑事弁護の専門家によるサポートが必要です。交通事故について困ったことがあれば、すぐに弁護士に相談に行きましょう。

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