「過失割合」は、一般的には保険会社が決めることになっている。事故後に警察が作成する資料を元にし、具体的な数値は保険会社が過去の判例を元にして決めているのだ。被害者がこの決定に関与することはできないが、納得のいかないものを受け入れる必要はない
目次
交通事故の「過失割合」は誰が決めている?
保険会社が過去の判例を元に決めている!
「交通事故の『過失割合』を決めているのは誰か?」ということがよく問題になります。
交通事故直後に警察が現場に到着し、事故の状況を調べ、実況見分を行い、供述調書を作成し、交通事故証明書の内容を決定づけるのですから、警察が決めているのではないか、と考えがちです。しかし「過失割合」は通常、過去の判例を元に保険会社が決めているのです。
「過失割合」がどうやって決められるのか、見てみましょう。
交通事故の「過失割合」を決めているのは警察ではない!
交通事故が発生すると、通報によりまず警察が駆けつけて事故の状況を確認し、事故の原因を含めた詳しい資料を作成します。数分後に事故現場に到着した警察官は、事故当事者の立ち合いのもと、事故がどのような原因で発生し、どのようになったのかを記録する実況見分調書を書きます。
この際、当事者のどちらが事故原因を作ってしまったのか、また双方の言い分を聞き供述調書も作成することから、この場でどちらがどれくらい事故に責任があるのかを示す「過失割合」が決められるのではないかと思うのも仕方ありません。
しかし、警察が作成する資料には、損害賠償の金額を決める示談交渉に影響を与える「過失割合」の数値は記載されていません。
警察は、民事不介入であるという原則
保険会社が加入者である運転者の保険金を支払う際にも、警察が発行する交通事故証明書が必要です。
これは実況見分調書や供述調書を元に作成されるものですから、保険会社が提示してくる「過失割合」は警察が決めているのかと思われがちです。しかし、警察には民事不介入という原則があるので、「過失割合」は決めません。
確かに警察は交通事故の原因をハッキリさせる資料を作成しますが、警察はこの原則により、示談や損害賠償請求といった民事の手続きに影響を与える「過失割合」には一切介入できないのです。
例えば人身事故の刑事責任といえば、危険運転致死傷罪、過失運転致死傷罪、業務上過失致死傷罪などの適用にあたっては、刑事告発を経て警察が介入すると言えますが、加害者が被害者にいくら損害賠償金を支払うかというような民事については、不介入が原則です。
間接的に影響を与えることはある
但し、人身事故の示談や損害賠償といった民事の話、すなわち何対何の割合でどちらが悪いということには、警察は一切口をはさみませんが、この割合に間接的に影響を与えていることは確かです。
具体的に何%加害者が悪いけれども、何%は被害者にも責任があるといった数値化されたものではありませんが、実況見分調書や供述調書への記載を通して事故の原因を明らかにし、「過失割合」の決定に関与することは想像に難くありません。
後に述べるように、「過失割合」の決定に影響を与える調書の作成には、十分な注意を持ってあたるべきだと言えるでしょう。
「過失割合」を決めているのは保険会社
交通事故後の損害賠償を決める示談交渉において、事故の責任がどちらにあるかが問題になります。
もちろん一方の当事者に100%責任があるというケースもありますが、多くの場合は被害者にもなんらかの不注意や落ち度があったとみなされることが多いのが実情です。そのため交通事故の損害賠償は、100%加害者の責任とならない限り、何割かは賠償金の支払いが相殺されることになり、この点を巡って示談交渉が揉める原因にもなっています。
保険会社が過失割合を通知してくる
一般的な交通事故の示談交渉、加害者が加入している保険会社の担当員と行うことになります。その担当員が「今回の事故の『過失割合』は、加害者70%で被害者様は30%になります」 と70:30の比率を一方的に通知してくることも珍しくはないようです。
本来ならば、交通事故の当事者同士の話し合いで決めるべきものですが、当事者が加入する保険会社が「過失割合」の交渉を代わりに行うことが通例であるため、「過失割合」の知識がない被害者としては、いきなり自分にも責任があるから補償金が減額されると聞き、戸惑うことも多いでしょう。
「過失割合」は、保険会社の言いなりになる必要はない
交通事故に遭ってしまい、示談交渉を進めるうちに保険会社が「過失割合」を伝えてきます。
悪意のある保険会社はないと信じたいところですが、被害者の無知につけ込んで不利な割合になってしまったのではないかと疑念を抱くこともあるでしょう。
その疑念を解消し、正当な「過失割合」によって示談を行うためには、「過失割合」がどのように決められているのか知っておく必要があります。
しかし交通事故に遭う前にはまったく縁のない話ですから、事故後の忙しい時に自身で調べて、交渉のプロである保険会社の担当員と示談を進めるのは簡単ではありません。
伝えられた「過失割合」や損害賠償金額に不満や疑問点がある場合は、交通事故に強い弁護士などに相談するべきでしょう。
決して保険会社が通知してきた「過失割合」は最終決定ではありませんし、不当な場合は覆すことも不可能ではありません。
交通事故の過失割合とは?過失割合決定の流れと保険会社に任せてはいけない理由
「過失割合」は、どのようにして決められているのか?
ここまで説明した通り、損害賠償金額の算出で用いられる「過失割合」を決めているのは警察ではなく、警察が作成した資料を元に保険会社が決めています。では、保険会社が決める「過失割合」は、何を参考にして決められているのでしょう?
その根拠を知ることで、通知された割合が適正なものかどうかが判断できるようになります。
過去の交通事故判例を元に決定されている
「過失割合」は、交通事故の状況を記した交通事故証明書などを元に、過去の交通事故判例に照らし合わせて、その割合が決めています。
判例とは、過去の裁判の記録
実際に起きた交通事故で、裁判所が審判した責任の割合が、「過失割合」を決める元になっているのです。
判例は確認できるのか?
交通事故の「過失割合」を決めていると言われる書籍があります。判例タイムズ社が刊行している「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」という書籍があります。
2016年11月現在において、「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」別冊判例タイムズ38号、全訂5版(2014年7月4日刊)が最新版となっています。
本書には、自動車対自動車、自動車対歩行者といった事故において、どのような状況で事故が発生した時に「過失割合」が何対何になるといった情報が、細かく類型化された例として記載されています。この書籍は、なかなか書店で見かけることはありませんが、注文することは可能ですし、オンライン書店で入手することもできます。
自身で判例を確認したいという方は、購入を考えてみても良いでしょう。
同じ交通事故はない!
過去の判例を基準にするという意味では、「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」は公正な資料だと言えます。しかし交通事故は、時間や場所、当事者の車種や運転技術など、寸分違わない事例などあり得ません。
結局、「過失割合」は、よく似た事故判例を探して適用されることになるのです。
そして似たような事故であっても、判例で決められた責任の割合にはバラつきがある場合もあるということを知っておきましょう。
不当な「過失割合」を避けるためには?
不当な「過失割合」を避けるためには、まず基本となる交通事故直後の実況見分調書や供述調書の作成時に、事実と違うことがないか、綿密に確認を行うことです。
救急車で搬送された場合などでは、事故直後の実況見分に立ち会えない場合もありますが、後日警察が確認に来た際に納得できない部分があれば、同意のサインを決して行わないことが大切です。
不当な調書を作られないように、自身の自動車にドライブレコーダーなど証拠能力があるものを搭載しておくことも良いでしょう。
そしてもし、保険会社が通知してきた「過失割合」に不満がある時は、決して妥協せず、必要ならば弁護士などの専門家に相談するべきです。
保険会社の提示する過失割合に不満・・・
弁護士に相談することが納得いく解決の近道かもしれません。
過失割合の交渉で失敗すると、その後の損害賠償の金額に大きな影響があります。交渉に慣れた保険会社に言い負けて、納得がいかないままに過失割合が決まることも決して少なくはありません。
過失割合の交渉から弁護士に相談するメリット
過失割合の段階から弁護士に相談することで、その後の交渉をスムーズに進めることができ、損害賠償の増額や交渉のストレスからも解放されます。過失割合で気になるコトがあるならまずは相談することをおすすめします。
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