交通事故の過失割合とは?過失割合決定の流れと保険会社に任せてはいけない理由

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佐藤 學(元裁判官、元公証人、元法科大学院教授)

過失割合とは

交通事故で被害者となり、相手に賠償金を支払ってもらうとき、自分に過失割合があったらその分賠償金額から減らされてしまいます。過失割合を減らすためには、まずは過失割合の適切な基準を知りましょう。そして、証拠を集めてしっかりと交渉することが必要です。

被害者が自分で対応すると不利になることが多いので、困ったときには弁護士に相談しましょう。

交通事故の過失割合とは

交通事故の過失割合とは、事故の当事者それぞれにおける、交通事故の結果に対する責任の割合のことです。交通事故が起こったとき、多くのケースではどちらかの一方的な責任にはなりません。

交通事故の被害者にも過失が認められることが多い

被害者と加害者がいるとしても、被害者にも何らかの過失が認められることが多いものです。そうなると、加害者と被害者の過失割合を決めなければなりません。そこで、加害者と被害者の過失割合を8:2や7:3などとするのです。

過失割合が重要な理由

それでは、この加害者と被害者の双方の過失割合は、交通事故においてどのような意味を持つのでしょうか?

過失割合には、交通事故の損害賠償金と密接な関係がある

交通事故被害に遭ったら、車が壊れたり衣類が破れたりする物損も発生しますし、怪我をしたら病院の治療費や入院雑費、看護費用や通院交通費なども発生します。会社を休んだら休業損害も発生しますし入通院慰謝料も発生します。後遺障害が残ったら後遺障害慰謝料や逸失利益も発生しますし、死亡したら死亡慰謝料や逸失利益が発生します。

被害者になったら、これらの損害について、相手に賠償請求しなければなりません。そのために、通常は相手の保険会社と示談交渉します。

被害者に過失があると、その過失割合の分は相手に請求できる金額から減額されてしまう

つまり、被害者の過失割合が高いと、その分相手に請求できる損害賠償金が減ってしまいます。同じだけの損害が発生しても、過失割合が大きくなったら相手に多額の賠償金を請求することはできなくなります。

過失割合と過失相殺

過失割合に関連して「過失相殺」という言葉があります。

過失相殺とは、自分の過失割合の分を、相手に請求できる賠償金額から減らす計算のこと

過失割合が8:2や7:3などの割合の問題であるのに対し、過失相殺とは、その割合を使って具体的に計算する方法だという違いがあります。つまり、交通事故で相手に賠償金の請求をするときには、自分の過失割合の分を過失相殺される、ということになります。

過失割合と過失相殺の例

お金

被害者の過失割合によって賠償金が変わる

ここで、分かりやすいように、過失割合と過失相殺の計算例を見てみましょう。例えば、交通事故でむち打ち症の被害に遭って、3か月通院した事例を考えてみましょう。損害賠償金は、治療費や休業損害、入通院慰謝料などの合計で120万円になったとします。

このとき、一方的な追突事故などで被害者の過失割合がゼロであれば、相手に対して120万円の全額を請求できます。
これに対し、被害者の過失割合が10%なら、相手に賠償請求できる金額は、

120万円×(100%-10%)=120万円×90%=108万円

となります。

被害者の過失割合が30%なら、相手に請求できる金額は、

120万円×(100%-30%)=120万円x70%=84万円
にまで減額されてしまいます。

賠償金の金額が大きいと、影響が大きくなる

このことは、賠償金の金額が大きいと、さらに影響が大きくなります。例えば、後遺障害1級の障害が残り、1億円の賠償金が発生した事例を見てみましょう。
このとき、被害者の過失割合がゼロなら相手に請求できるのは1億円です。しかし、被害者の過失割合が20%なら、相手に請求できる賠償金の金額は8000万円になってしまいますし、被害者の過失割合が30%なら、相手に請求できる賠償金の金額は7000万円にまで下がってしまいます。

被害者の過失割合が大きいと請求金額が減ってしまう

このように、被害者の過失割合が大きくなると、相手に対して請求できる金額が大きく減ってしまうのです。同じように損害を受けていても、相手から支払いを受けられる金額が全く変わってくるので、過失割合がいかに重要な問題であるかがわかります。

どんなに多くの慰謝料が計算される事例でも、大きく過失割合が割り当てられると、結局請求できる金額は小さくなってしまうので、注意が必要です。

過失割合がゼロの場合の問題点

過失割合がゼロだと、保険会社が示談交渉を代行してくれない

以上のように、交通事故の被害者になった場合、自分の過失割合が大きくなると、過失相殺によって相手に請求できる賠償金の金額が小さくなってしまうので、なるべくなら自分の過失割合を減らさないとなりません。自分の過失割合がゼロになったら、過失相殺が行われないので、相手に対して損害の全額を支払い請求できます。

自分の過失割合がゼロになると、問題が起こる

それは、その場合には自分の自動車保険が示談交渉を代行してくれないということです。

交通事故の自動車保険に入っていると、相手との示談交渉は、通常自分の任意保険会社が代行してくれます。自動車保険の対人賠償責任保険には、示談交渉サービスがついているからです。

被害者側に過失がある場合、その過失割合の分は相手に賠償金を支払わなければならないので、被害者が相手に支払うべきお金が発生します。そして、その金額は自分の自動車保険会社が支払います。

そこで、自動車保険の対人賠償責任保険に入っているとき、自分の任意保険会社は、被害者が相手に支払うべき賠償金の金額について、大きな利害関係を持ちます。このようなことから、被害者に過失があり、相手に対する支払いが発生するときには、自分の保険会社が相手と示談交渉をしてくれます。

このことを、通常は任意保険の示談交渉代行サービスといいます

交通事故に遭ったときに相手が任意保険に加入していたら、相手本人ではなく相手の保険会社と示談交渉をすることになるのは、この仕組みによります。

ただ、この示談交渉代行サービスは、被害者が相手に賠償金を支払うことが前提になっています。賠償金を支払うからこそ、任意保険会社はそのお金を支払わないとならないのであり、任意保険会社がその話し合いについて利害関係を持つと言えるからです。

被害者の過失割合がゼロの場合、被害者は相手にお金を支払う必要がありません

そうなると、被害者の任意保険会社は相手にお金を支払うことがなく、示談交渉の行方に対して何ら利害関係も持たないのです。このような場合には、任意保険会社が示談交渉代行をする根拠がないので、任意保険会社は被害者の代わりに示談交渉をしてくれません。要するに、被害者の過失割合がゼロの場合、保険会社は金銭的な利害関係がないため、示談代行を行うことは弁護士法72条の非弁活動の禁止に抵触することになるのです。

このような理由により、被害者の過失割合がゼロのときには、任意保険会社が示談交渉を代行してくれないのです。

被害者がひとりで示談交渉に臨むのは負担が大きい!

任意保険会社が示談交渉を代行してくれない場合には、被害者が本当に自分ひとりで相手と示談交渉をしなければなりません。相手と直接やり取りをしなければなりませんし、分からないことを相談できる自分の自動車保険の存在がないので、足りない知識はすべて自分で調べて補わなければならないのです。

過失割合がゼロにもかかわらず交渉段階で損をすることも

そうなると、被害者側の無知につけこまれて、相手の保険会社に不利な条件を押しつけられるおそれも高くなります。このように、被害者は、自分の過失割合がゼロだったら有利になるはずなのに、誰も味方になってくれないことで、かえって不利になってしまうおそれもあることに注意しなければなりません。

過失割合と弁護士特約

被害者側の過失割合がゼロの場合には、自分の保険会社が示談交渉を代行してくれないので、被害者が大きく不利になってしまうおそれがあります。

過失割合がゼロの時に役に立つのが弁護士費用特約

弁護士費用特約とは、交通事故に遭った際、損害賠償請求のために委任した弁護士の弁護士費用や法律相談料の支払いを、自分の保険会社が負担してくれる特約のことです。

例えば、弁護士に交通事故の相談をしたときにかかる法律相談料や、示談交渉や調停、訴訟などの手続きを依頼したときの着手金、報酬金、実費、日当などがすべて弁護士特約の補償対象になります。弁護士費用特約には限度額がありますが、法律相談料なら1事故1名につき10万円まで、着手金、報酬金や実費、日当などの事件依頼料なら1事故1名につき300万円まで弁護士費用を保険会社が負担するとされていることがほとんどです。

弁護士費用特約を利用すると、被害者の過失割合がゼロであっても弁護士に対応を依頼できるので安心です。

弁護士費用特約は、もともと過失のない被害者のための保険

自分が交通事故被害に遭って、過失割合がゼロになったために示談交渉代行サービスが受けられなくて困ることのないよう、自動車保険に加入するときには、是非とも弁護士費用特約をつけておきましょう。

過失があっても弁護士特約を利用できる?

弁護士費用特約は、もともと交通事故被害者のための保険です。そうなると、被害者に過失がある場合には、弁護士費用特約が利用できないのでしょうか?

確かに、弁護士費用特約には、いくつか利用できない場合が定められています。保険会社によって異なるものの、一般的には、相手に過失がない場合、被害者に故意や重過失がある場合、被害者が無免許運転や飲酒運転など悪質な法律違反をしていた場合、自然災害により損害が発生した場合などに弁護士費用特約が適用されないとされていることが多いのです。ということは、やはり被害者側に過失があったら利用できないということになりそうです。

弁護士費用特約が利用できないのは、被害者に故意や重過失があった場合

通常レベルの過失があっただけの場合であれば、弁護士費用特約を利用できます。例えば、被害者の過過失割合が20%や30%であっても、弁護士費用特約を利用することができます。

交通事故で被害者となり、相手と示談交渉をするときには、たとえ自分に過失割合が認められるケースであっても弁護士費用特約を使えることが多いので、まずは自分の自動車保険に弁護士特約がついていないか、確認することをおすすめします。

過失割合の基準は?

次に、過失割合というものは、一体誰がどのようにして決めているのかを見てみましょう。
過失割合には、一定の基準があります。それは、すべての事故について公平に解決するためです。

交通事故は、各ケースによって異なりますが、似たような事故というものはある

例えば、信号機のある交差点での直進車同士の事故であったり、右折車と直進車の事故であったり、信号機のない交差点での直進車同士の事故であったり、という事故のパターンのことです。

追い越しの際の事故もありますし、車とバイクの事故、車と自転車の事故などもあります。このように、同じような事故の場合には、同じ過失割合にならないと不公平です。その都度適当に決めているようでは、たまたま話を有利にもっていった人が得をすることになって不合理です。

そこで、過失割合は、事故態様ごとに、過去の裁判例を基準にして決定されます。この過去の裁判例の蓄積による過失割合認定のための基準は、過失割合認定基準と呼ばれます。

過失割合認定基準の調べ方

別冊判例タイムズ38号で調べる

過失割合認定基準は、一般の人でも見ることができます。おすすめの方法は、東京地裁民事交通訴訟研究会編「別冊判例タイムズ38号 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準〔全訂5版〕」という法律雑誌で調べる方法です。この雑誌の「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」という項目を見ると、各交通事故における態様別の過失割合が載っているので、自分の事故のケースに当てはめて適切な過失割合を調べることができます。

交通事故に関する文献の赤い本や青い本で調べる

次に、交通事故に関する文献の赤い本や青本によって調べることもできます。赤い本とは、日弁連交通事故相談センター東京支部編「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」という本です。色が赤く、表紙の右上部に「赤い本」と表記されているため、赤い本と呼ばれます。

また、青本とは、日弁連交通事故相談センター研究研修委員会編「交通事故損害額算定基準」という本です。これは、色が青いため青本と呼ばれます。これらの本は弁護士などの実務家向けの本ですが、赤い本には過失割合の認定基準表も掲載されているので、過失割合を調べたいときに利用できます。

別冊判例タイムズ38号も赤い本も青い本も一般人が購入することができるので、過失割合を調べたいときには書店や通信販売などで購入して、該当ページを見てみると良いでしょう。

ただ、過失割合の認定基準表は、事案ごとにかなり複雑に分類されており、専門用語も使われているので一般の人には読みにくいことも多いのです。

過失割合で分からないことは弁護士に相談

弁護士であれば通常はこれらの本を持っていて、過失割合の認定基準を知っているので、自分で調べるのが面倒だったり、調べ方が分からなかったり、表の味方が分からなかったりする場合には、弁護士に相談をして過失割合を聞いてみるのが最も手っ取り早くおすすめです。

過失割合の修正要素とは?

過失割合には、修正要素というものがあります。これは、事故の態様によって、基本の過失割合を修正するための事情のことです。例えば、信号のない交差点上における事故の場合、基本の過失割合は、左方の車が40%、右方の車が60%となります。

事案によっては、どちらかの車に著しい過失や重過失があるケースがある

このような場合には、そのような大きな過失がある側の過失割合を加算しないと不公平です。そこで、著しい過失があったら10%、重過失があったら20%の過失割合が加算されます。

著しい過失とは、事故態様ごとに通常想定されている程度を超えるような過失のことです。重過失とは、著しい過失よりも更に重い、故意に比肩する重大な過失のことです。著しい過失の例としては、例えば、酒気帯び運転、脇見運転などの著しい前方不注視、ハンドル・ブレーキの著しい不適切操作、おおむね時速15㎞以上30㎞未満の速度違反(高速道路を除く)、携帯電話等の無線通話装置を通話のため使用したり、画像を注視したりしながら運転することなどがあります。重過失とは、例えば、酒酔い運転、おおむね時速30㎞以上の速度違反(高速道路を除く)、無免許運転、居眠り運転、過労、病気及び薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある場合などがあります。 

他の修正要素としては、減速しなかった場合、大型車の場合、方向指示を出さなかった場合、夜間の事故のケース、住宅街での事故のケース、商店街での事故のケースなどがあります。
このように修正要素を適用することによって、事案に応じた柔軟な解決をしています。

車対車の事故の過失割合

それでは、具体的な過失割合がどのようになっているのか、例を挙げて見てみましょう。

車対車の事故の具体例

信号のある交差点における直進車同士の事故のケースです。この場合、信号の色によって大きく過失割合が異なります。

一方の信号が赤、もう一方の信号が青の場合には、赤信号の車:青信号の車=100:0となります。
一方の信号が黄、もう一方の信号が赤の場合には、黄信号の車:赤信号の車=20:80となります。
赤信号の車同士の事故の場合には、50:50となります。
一方の信号が交差点進入時には青だったけれども、信号の色が赤に変わるまでに交差点を通過できないで残り、もう一方の信号が青の場合には、信号残りの車:青信号の車=70:30となります。

修正要素の例

次に、修正要素について見てみましょう。例えば、どちらかの車に著しい過失があったら5%~10%程度過失割合が加算されます。重過失があったら10%~20%過失割合が加算されます。交差点内に明らかに先に進入していた場合には、過失割合が10%程度減算されることなどがあります。

車対バイクの過失割合

単車に有利になる単車修正

車対バイクの過失割合を見てみましょう。この場合、車対車のケースよりも車の過失割合が加算されます。車とバイクの事故の場合には、バイクの方が重大な怪我を負う危険性が高く車体も小さいので、車の方に高い注意義務が課されるからです。このことを、単車修正ということもあります。

車対バイクの事故の具体例

例えば、同じ交差点上の事故で、信号の色が赤と黄のケースでも、車対車なら基本の過失割合が、上記の通り80:20となりますが、車対バイクの場合には過失割合が異なってきます。

車が赤、バイクが黄の場合には、車:バイクが90:10となって、車同士の場合よりも10%車の過失割合が加算されます。反対に、車が黄、バイクが赤の場合には、車:バイクが30:70となって、車対車の場合と比べてバイクの過失割合が10%減算されます。

このようなことからすると、自動車を運転するときには、バイク相手に事故を起こさないよう十分注意すべきと言うことが分かります。

車対自転車の過失割合

自転車事故

基本は自転車に有利になる

次に、車と自転車の事故の過失割合を見てみましょう。自転車は、バイクよりもさらに弱い立場です。自転車が事故に遭うと死亡する事例も多く、大きなダメージを受けますし、自転車は車体も小さいので事故を避けにくいのです。そこで、この場合には、バイク相手の場合よりもさらに高い注意義務が車に課されます。車が自転車と事故になった場合には、車の過失割合はかなり高くなることを覚悟すべきです。

車対自転車の事故の具体例

例として、信号機のある交差点上の事故の場合で比べて見ましょう。この場合、車が青、自転車が赤でも車に過失割合が認められます。具体的には、車:自転車=10:90となります。自分が信号を守って車を運転し、相手が信号無視をしていても、自分に20%の過失割合が認定されてしまうと言うことです。

このようなことは、車同士の事故だけではなくバイク相手の事故でもあり得ないことで、自転車側に大きく有利に修正されています。また、車が赤、自転車が黄の場合、基本の過失割合は車:自転車=90:10となります。車が黄、自転車が赤の場合には、基本の過失割合は車:自転車=40:60となります。

このように、自転車が相手の場合には、自動車の過失割合が大きくなることが多いので、十分注意が必要です。

車対歩行者の過失割合

弱者である歩行者は保護される

過失割合は、歩行者が相手の場合、さらに注意が必要です。歩行者は、自転車と比べてもさらに立場が弱いです。そこで、歩行者相手に事故を起こすと、自動車の過失割合は非常に大きくなってしまいます。歩行者が相手の場合には、自動車が相手の場合とは異なる過失割合の修正要素もあります。

例えば、歩行者が幼児や児童、高齢者や身体障害者などのケースでは、車の過失割合が加算されますし、歩行者が集団で歩いていた場合や、事故現場が住宅街・商店街などである場合には、やはり自動車側の過失割合が加算されます。自動車を運転するとき、歩行者相手に事故を起こすと、たいてい車の過失割合が非常に大きくなってしまうので、注意が必要です。

車対歩行者の事故の具体例

例えば、横断歩道上の事故の場合、車が赤信号なら、歩行者が赤信号でも(赤信号同士)自動車:歩行者=80:20となります。車が青信号、歩行者が赤信号でも車:歩行者=30:70となります。車が信号を守っていて歩行者が信号無視して渡ってきたようなケースでも、自動車の過失割合が30%認められてしまうということです。
このような事故で、歩行者が死亡して1億円の賠償金が発生したら、車を運転していた人は「自分が青信号で相手が赤信号であっても」3000万円もの賠償金を支払わなければならなくなります。

このようなことを考えると、自動車を運転するときに歩行者相手の事故を起こしたらどれほど大変かがよく分かります。特に相手が幼児、児童や高齢者、身体障害者などのケースではより賠償金の金額が上がってしまいます。自動車を運転するときには、くれぐれも歩行者相手に事故を起こさないよう慎重にならなければなりません。

過失割合決定までの流れ

事故

保険会社が話し合って決めてしまう

それでは、交通事故が起こったとき、具体的にはどのような流れで過失割合を決めていくのでしょうか?誰が過失割合の認定をしてくれるのかが問題です。この場合、通常のケースでは保険会社同士の協議によって決定されます。交通事故が起こったら、被害者の保険会社と相手の保険会社が協議をして示談交渉を進めます。その中で、保険会社同士が話し合って過失割合を決定してしまいます。

被害者に知識がないと、不利になることも!

この場合、注意すべき点があります。保険会社は、必ずしも上記でご紹介した別冊判例タイムズ38号や赤い本の過失割合認定基準に従って過失割合を決めるわけではない、ということです。保険会社はなるべくなら自社の支払いを抑えたいと考えています。そこで、相手が妥協しやすい人の場合、その人に高い過失割合を割り当てることがあります。

特に、交通事故の被害者は通常素人であり、適切な過失割合についての認定基準を知らないことがほとんどです。そこで、ときには認定基準とは大幅に外れた、不当に大きい過失割合を割り当てられてしまうことが結構あります

ところが、被害者に知識がない場合、保険会社から「過失割合はこのくらい」と言われてしまったら「そういうものかな」と納得してしまうケースが非常に多いということです。それはちょっと大きすぎるのではないか?と思っても、保険会社から「いや、通常はそうなんです」とか「それではいつまでも示談が成立しませんよ」などと言われてしまったら、「仕方ないか」と思って妥協してしまうことがほとんどです。

結局、被害者に知識がないため、本来よりも大きな過失割合を割り当てられて、請求できる賠償金額が大きく減らされてしまうので、被害者には大きな不利益があります。

警察は助けてくれない!

このようなことを聞くと、「過失割合の認定に警察は協力してくれないのか?」と疑問に思われる人がいるかもしれません。警察というところは、交通事故が起こったら実況見分を行っているので、事故現場の状況について把握しているはずですし、事故で罪に問われる人を送検する権限もあるわけですから、過失割合の認定に関与してくると考えるのも通常の発想です。

しかし、実際には警察は示談交渉の過失割合の認定には関与しません。警察は民事不介入なので、純粋な損害賠償金額の話し合いである示談交渉には完全に無関係だからです。

結局、過失割合を決めるためには、警察などの行政の協力なしに、自分達で決めていかなければならない、ということになります。

交通事故の過失割合交渉を保険会社に任せると損をする?

このように、交通事故の過失割合は保険会社同士のやり取りによって決めますが、保険会社任せにしていたら、被害者が損をすることがあるのでしょうか?自分の保険会社も支払いを減らしたいはずなので、きちんと交渉をしてくれたら別に被害者が損をすることはないようにも思えます。

保険会社は100%被害者の味方というわけではない

確かに、保険会社は、できれば支払いを抑えようとしますし、また同時に早く事件を終わらせようともします。そのため、保険会社は、過失割合を厳密に認定することなく、適当なところで納めてしまうことがよくあります。

また、自分の保険会社と相手の保険会社が同じ保険会社の場合には、金銭的なやり取りをしても結局損益は変わらないので、事故の担当者にとっては過失割合がどうなろうと同じことだとも言えます。このようなことから、保険会社に任せているとき、必ずしも適切な過失割合が認定されるとは限りません。自分の保険会社と言えども、100%自分の味方、ということではないのです。

保険会社は法律のプロではないので、事案に応じた適切な対応をとることは難しい

そもそも、保険会社が出してくる過失割合は過去の裁判例の蓄積が根拠となっていますが、全く同じ交通事故は存在しませんし、裁判例にもばらつきがあります。法律家であればこのあたりの事情を酌んで事案ごとに適切な判断ができますが、保険会社はマニュアル的な対応しかできないので、ときには不当とも言える内容を押しつけてくることもあります。

以上のように、保険会社に過失割合の交渉を任せていると、ときには損をしてしまう可能性もあるので、注意が必要です。

過失割合に不満がある場合の対応方法

それでは、示談交渉で相手の保険会社が提示してきた過失割合に不満がある場合には、どのように対処したら良いのでしょうか?

まずは適切な過失割合を調べる

この場合には、まずは自分で適切な過失割合を調べることが大切です。保険会社との示談交渉では、保険会社がこちらの無知につけ込んで、不当に大きい過失割合を割り当ててくることが結構あります。このような問題に気づくためには、正しい知識を持つことが不可欠です。

そこで、上記で紹介した別冊判例タイムズ38号や赤い本、青本などで確認して、自分のケースで適切な過失割合の基準を調べましょう。これによって、保険会社の言っている過失割合が不当であることが判明したら、その旨保険会社に伝えて過失割合を修正してもらうように要請しましょう。

弁護士に相談する

このように、自分で保険会社に対して過失割合の修正を要求しても、保険会社が受け入れてくれないケースがあります。また、自分で調べることが難しかったり、本を買っても読み方が分からなかったりすることもあります。このような場合には、弁護士に対応を依頼することが最も効果的です。

弁護士は法律のプロなので、もちろん過失割合認定基準を知っていますし、それを事案ごとに適切に当てはめる能力も持っています。また、保険会社と交渉を行う能力も高いので、相手から不当に高い過失割合を押しつけられるおそれもありません。

弁護士なら保険会社と対等以上にわたりあって、被害者が有利になるようにすすめてくれます

このように、弁護士に依頼すると、被害者が過失割合認定の際に損をするおそれはありませんし、むしろ得になることが多いです。

例えば、1億円の損害が発生している事案では、被害者が自分で交渉をしていて過失割合が30%と言われたら、そのままでは相手に対し7000万円の賠償金しか請求できません。ここで、弁護士に対応を依頼することによって過失割合を10%に下げてもらったら、相手に対し9000万円の請求ができるようになるのです。

この場合、損害賠償の金額自体は1億円で変わりません。単に弁護士に対応を依頼したことによって、請求できる賠償金の金額が2000万円もアップしているのです。このようなことから、過失割合の認定の際には、弁護士に対応を依頼することがいかに重要かが分かります。

過失割合を争う方法

まずは示談交渉をする

次に、過失割合の認定について不服がある場合、過失割合を争う方法をご紹介します。
この場合、まずは相手やその保険会社と示談交渉をしますが、示談交渉ではお互いに意見が合わない場合、示談では過失割合は決められません。

調停をする

示談が決裂した場合、とりうる手段がいくつかあります。それは、調停ADR訴訟です。調停とは、簡易裁判所において、裁判官と民間から選出された2名の調停委員の3名で構成される調停委員会が、当事者双方の主張を交互に聞き、損害賠償金額や過失割合を含め、事案に即した解決を図るものです。

調停を行うときには、裁判所の調停委員が間に入って話を進めてくれるので、自分達だけで話し合いをすすめるよりも合意しやすいのです。また、専門家である調停委員会から解決方法の提案なども受けられるので、その内容でお互いに合意ができたら過失割合についての争いも解決します。

調停委員会は中立の立場なので、必ずしも被害者の味方になってくれるものではありません

そこで、調停でも弁護士に依頼することができます。弁護士に調停手続きを依頼したら、必要な手続きはすべて弁護士がしてくれますし、調停の条件を受け入れて良いかどうかなどのアドバイスもしてもらえるので、安心です。

ADRを利用する

ADRとは、裁判外の紛争解決処理機関のことです。交通事故紛争処理センター日弁連の交通事故相談センターのものが有名です。これらのADRを利用すると、弁護士基準に沿った和解案が示されることが多いこと、厳格な立証を要しないので、立証資料が多少薄い損害費目があっても場合によっては認定されることがあること、一般的には比較的早期の解決が期待できることが挙げられます。そして、相手と話し合いによって過失割合などの賠償金の決定をすることができますし、話し合いができない場合には、審査手続きにおける審査委員会(上記処理センターの場合)や審査会(上記相談センターの場合)に適切な過失割合を含め、事案の解決を図ってもらうこともできます。なお、両センターのあっせんに従わずに裁判をすることも可能です。

ADRでも弁護士の相談員や審査会(大学教授、元裁判官、弁護士など)が関与してくれますが、これらのセンターの弁護士などは調停委員と同様中立の立場なので、被害者の味方、というわけにはいきません。被害者が自分の味方をしてもらいたいのであれば、自分で弁護士を雇う必要があります。

訴訟をする

調停やADRでも解決できない場合には、訴訟によって過失割合を決めてもらうことができます。交通事故では、調停やADRを利用せず、示談交渉が決裂したらすぐに訴訟をすることも多いのです。訴訟を起こしたら、裁判所で被害者と相手の保険会社がお互いの主張と立証を展開します。また、裁判所から和解勧告があり、当事者がこれに応じれば、過失割合を含め、裁判上の和解が成立することもあります。

月に1回程度裁判所で期日が開かれて、争点を整理していきます

最終的に、被害者や関係者の尋問を行い、審理を終えて結審します。結審したら、その後1~2か月くらいして裁判所が判決をしてくれます。判決内で過失割合も決定されるので、このことによって過失割合が最終的に決まります。

裁判するなら、弁護士が必要!

なお、訴訟を起こすときには、弁護士に依頼することがほとんど必須です。訴訟では専門的な主張方法や立証方法があるため、適切に進めないと不利になります。また、訴訟になると、相手の保険会社もほとんど確実に弁護士を立ててくるので、こちらに弁護士がいないと極めて不利になります。訴訟をして負けてしまったら、示談の条件を受けて入れていた方がよかった、ということにもなりかねません。

交通事故では示談交渉の段階でも弁護士に依頼することが重要ですが、訴訟ではそれ以上に、ほとんど100%、弁護士に依頼することが必要です。

保険会社の提示する過失割合が不満なら弁護士に相談

弁護士

以上のように、交通事故では自分の過失割合がどのくらいになるかということが非常に重要です。過失割合が大きくなると、その分相手に請求できる金額が大きく減ってしまうので、いかに高い慰謝料を算定してもらっても意味がなくなってしまいます。

ところが、現実的には保険会社の提示してくる過失割合に納得できないことが非常に多いのです。そのような場合には、弁護士に相談することが重要です。何も考えずに、そのまま受け入れてしまうのは最悪の対処方法です。

弁護士に依頼すると、被害者が有利になるために過失割合を適切に認定してくれますし、そのために必要な実況見分調書などの取得手続きもしてくれます。ときには事故現場に行って、状況を確認してくれることなどもありますし、過去の裁判例を調べて、依頼者に有利な材料がないか探してくれることもあります。
このように、弁護士に依頼すると、被害者が自分ではできないいろいろな手続きや交渉をしてくれて、過失割合を有利に修正することができます。

過失割合の交渉を有利に進めるためのポイント

最後に、過失割合の交渉を有利にするためのポイントをお教えします。

事前準備が大切

まず大切なことは、事前に準備をしておくことです。過失割合を決めるときには、実際の事故状況が確認できないために問題になることも多いのです。そこで、ドライブレコーダーを搭載しておくと、過失割合の認定に役立つことがあります。ドライブレコーダーは、急激な速度変化など一定の条件を満たすと、その前後の記録が保存される仕組みとなっており、信号機の色や衝突の際の状況、方向やお互いの車のスピード、車間距離なども記録され、代替性のない客観的な資料であり、交通事故の重要な証拠となります。

正しい知識を持つこと

また、過失割合を適切に認定するには、正しい知識を持つことが重要です。知識があったら相手の保険会社から不当な条件を押しつけられることもありません。

弁護士に相談する

3つ目に、何より弁護士に相談をすることです。被害者はどうしても知識がないので、自分で対処しようとするといろいろと不備が起こります。弁護士に相談して正しいアドバイスをもらうことにより、最終的に有利な条件を勝ち取ることができるのです。

以上のように、交通事故では、損害賠償金の算定と同じくらい、過失割合の決定は重要な要素です。このことは慰謝料の金額などと比べて意外と軽視されがちなので、注意しておく必要があります。今、交通事故で相手と示談交渉をしていて、過失割合に疑問がある場合などには、是非とも一度、交通事故問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。

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